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苦手だと思っていた事にも可能性はある

『パフォーマンス医学』 先読みレビュー9 隈本裕美さん

私は「運動が苦手」です。

職業はスーツアクターというヒーローの中の人、とかを30年以上していますが…。運動が苦手です。本当に。

器械体操の国体選手だった友達から 「あなたには(運動の)何の才能もセンスも無い」「体の使い方が全くわかってない」 と言われ続けています。 プロのスタントの現場でも私は落ちこぼれていました。 周りのみんなみたいに上手くスタントが出来ない。 泣きながら必死に練習しても、出来ない。

 私は14歳でアクションチームに入りましたが、それまではスポーツ、運動とはほぼ無縁。 ボールは投げれない、泳げない、ジャンプ力も無い…という状態の、漫画家を目指すインドアヲタクでした。

 そんな体で何故アクションチームに入ったのか?それは「かっこいいから」です。ヒーローに憧れて。

 私の入ったアクションチームは無料で指導をしてくれて、すぐに現場に出るという感じでした。 バク転のやり方を聞くと「後ろに飛べば良いんだよ」と言われ、周りの人たちはそれで出来てしまうのに私は何度も頭を打ちました。 無料で指導している人たちは単に親切で教えているだけなので怪我に対しての責任感はありませんし、自分たちもちゃんと指導されて来た訳ではない場合も多かったのではと思います。

 小さい頃からちゃんとスポーツや運動、外遊びをほとんどして来なかった私は、基本的なスポーツや運動での体の使い方が頭の中に無く、体でも学んでいなかったので「後ろに飛べば良い」という指導だけではバク転を出来るようにはならなかったです。 多分、無意識にでも体の使い方を理解出来ている人たちは「後ろに飛べ」という指導だけでなるほど、となったのだと思いますし、指導していた方たちも、もともとそのタイプだったのだと思います。 そういう感覚を持つ人たちが、体を動かす仕事に向いている人たちだなと思いました。

 体を地面につけたままで出来る事に関しては、何とか沢山練習する事で少しずつやれるようになって行くものもありましたが、空中に飛ぶ技等は練習で怪我もするので、全く上達しませんでした。

 私は自分に向いていない仕事を30年以上「だが、やりたい!」という根性で続けて来ました(笑) …しかし、根性だけでどうにかなる事には限界がある事を痛感しています。

 20代の時、ジャージで出来るバイトをしたい!という欲で無謀にも幼児体育指導の仕事を始めました。 指導するにあたり「1週間後に逆上がりのテストをします」と言われ、それまで一度も逆上がりが出来た事の無い人生だったので、めちゃめちゃ基礎から指導してもらい、公園の鉄棒に通い、なんと無事に逆上がりは出来るようになりました。

それまでは、がむしゃらに足を上げようとしているだけだったのですが、「鉄棒との距離」、「足の幅、手の力をどの方向にどう入れるか」、「足を上げるのではなく腹と太腿で鉄棒を挟む」「視界はどこを見るか」…等の言われた事を言われた通りにひとつずつやったら出来るようになったんです!

ちゃんと「頭でもわかっている」人からの指導では、不器用な私でも仕組みを理解して実行する事が出来ました。 逆上がりの仕組みを理解出来た今、いつでも出来るし苦手な人にもちゃんと説明出来るようになりました。

 私は絵も描きますが、絵も誰からも教わらなくてもめちゃめちゃ上手い人もいますが、人体の骨格や筋肉のつき方等の知識があり、基礎的な事をしっかり理解している方のほうが基本的には上手くなると思うんですよね。

 高性能のスマホも使い方がわからなくても電話やLINEくらいは出来ますが、全ての機能を自在に使ってより活用する…となると知識が無いと扱い切れずに、「勿体無い感じ」になるのだと思います。

 私は私の身体の仕組みを全くわかっていなくて、全然使い切れていなかったなと思います。 最近ようやく少しずつその事に気付き始めて(遅)、アクション等の色々な動きの修正を気長な気持ちでやっていたのですが …

 めちゃめちゃ前置きが長くなりましたが… そんな私の心にこの本『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』はめちゃめちゃ刺さりました。

え!私信?私信なの?!と勘違いしたくなるくらい(笑)

 この本は「頭でもちゃんとわかっている人」からの説明だと思います(著者の二重作さんがドクターで、格闘技実践者!)

 私みたいな「土台の知識や経験をすっ飛ばしてしまった、動く事に不器用な人にこそ届いて欲しいな」と個人的には感じました。

 身体の作りやどのような仕組みで動くのかなどの基礎を知りイメージして、実際に動かしながら理解して行くという頭にも体にも入って来る本です。

 「ただ歩く」だけでも無意識でやっていた事を意識的に知識を持ってやると、結果がとても変わって来るという

「はーーー!なるほどーーー!!」

と大きめな独り言をつい連発してしまう程の納得の内容でした。

 過去に飛べるならこの本を持って「良いから何回もしっかり読め、理解しろ」と幼い私に言いに行きたい。マジで。 義務教育でこの内容を指導して欲しいくらいです。

 が、 みんながみんな運動が上手くなると、それはそれで世の中がつまらなくなるかもしれないので、巡り会えた人だけのラッキーでも良いのかもしれません。 いや、でもやっぱりもっと早くに出会いたかった(45歳、独身)

 体と思考は深く関係している。 どんな知識を得るかで意識が変わり、体の動かし方を変えて行ける。 動かし方が変わればパフォーマンスも変わる。 様々な人と出会う事で気付ける事が沢山あって、気付けた事により、それが成長へと繋がって行く。

 二重作さんのご本に出会えて 良い影響を沢山受けて、「きっと私はもっと成長出来るに違いない!今からでも!」という希望を抱きながらまた最初のページから読み返そうと思います。

 この本を読んで今まで知らなかった、気付いていなかった事に気付き、無意識に動いて出来なかった事が意識して動く事により、出来るようになって行ったら毎日はきっと今までよりも、もっと楽しくなるんじゃないかなーと思います。

 ずっと苦手だと思っていた事にも可能性はある、今までは知らなかったから出来なかっただけかもしれない。 という希望を持てる本だと思います。 みなさんも読んで是非、自分の可能性にアクセスして下さいッ!!!

PS. 身体を酷使して観ている人たちを喜ばせる。すばらしいご活動に乾杯。



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