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来ないであろう「その日」に向かって

もしあの時、あの一言がなければ・・・

そんな忘れられない言葉はないだろうか?

中学3年の時。九州では名の通ったある私立進学校の受験前夜のことだった。

僕の中学からの受験者40人ほどは全員ホテルに宿泊し、決戦前夜を迎えていた。

夜、僕らは大広間のようなところに集められ、決起会のようなミーティングがあった。うちの中学からその高校に進学したT先輩が、みんなの前で激励のスピーチをした。

「○○高校はとても素晴らしい学校です。来春、後輩の皆さんをお迎えするのがたのしみです。明日はどうかベストを尽くしてください」

たしかそんな定型文のようなスピーチだった。

1つ上のT先輩は委員会が僕と同じで、何かと僕のことを可愛がってくれた先輩だった。だから、

「ああ、T先輩がいる学校だから、たのしいだろうなー」

そんな感想をいだいた。
ミーティングも終わり、僕は先輩のところに駆け寄った。

「T先輩、お久しぶりです。あえて嬉しいです!」

15歳の僕は、先輩に挨拶した。

「おお、二重作!・・・ちょっとこっち来い」

広間から少し離れたところに連れて行かれ、先輩が小さな声で、周りに聞こえないように、こういった。

「二重作、うちはやめとけ」

え????

一瞬、耳を疑ったが、理由は聞かなかった。T先輩の言葉は、僕の心に残り続けた。僕は運良くその高校に合格したものの、県立の東筑高校を選んだ。

偏差値的にはその学校のほうが東筑高校よりも少し上だったから、もし先輩の助言が無ければ、その高校を合格した時点で、気が抜けたかもしれない。

T先輩の言葉があったから、僕は選択を間違わずにすんだのだった。ありがとう、T先輩。

またお会いできるかわからないけど、来るかもしれない「その日」に向かって、自分をもっと高めておこうと思う。そして、あの日、あの時の言葉のお礼を伝えたい。

つい最近、中学時代の同級生たちと再会した。

ある友人のひとりは、その学校に進学した。

当時の話をしたが、全寮制、男子校。それなりに歪んでいたらしい。

友人は「ある暴力的な生徒から暴行を受けた」と話していた。その暴力的な生徒は、うちの中学で、僕も同じクラスになったことがあるが、まあ凶暴だったな。僕が何もしていないのに、「ムカつくから殴らせろ」と、いきなりそいつに殴られたことがあった。気分で人を殴るようなヤツだった。

「いつかブッ倒してやる」

10代の僕は固く心に誓ったんだけど、その原体験が「強くなりたい」の医学的根拠を探求する一因になっているから、やっぱり人生って面白い。そして、やっぱり10代って大切だ。

もしそいつと街で出くわしたら、やっぱ負けたくないからね。
来ないであろう「その日」に向かって、しっかり鍛錬しておこうと思う。でも、僕は彼を殴ったりしない。蹴りの方が得意だから(←蹴るんか)

PS パフォーマンス医学、「たのしいブッ飛ばし方」は載ってません。










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