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人間VSネコ

愛くるしくて可愛いペットの代表格、ネコ。彼らは運動能力の権化です。そのジャンプ力は凄まじく、身長の約5倍ほどの高さまで跳べます。170センチの人間なら、8.5メートルの高さまで跳躍できる計算になります。高いところから飛び降りる能力も素晴らしく、マンションの3階から4階の高さから飛び降りても怪我もなく、安全に着地できるのです。

人類最速ウサイン・ボルト選手の100メートル走のタイムは9秒58ですが、これは時速換算で約37.6キロメートル。猫の短距離ダッシュのスピードは時速約48キロメートルとの報告もあり、短距離走ではネコに軍配が上がります。

「猫パンチ」もハンパありません。ネコはとても起用で、動く小動物を簡単に一撃で仕留める達人(達猫)です。普段、じゃれ合っている時は爪を引っ込めていますが、本気モードでは爪を出し、時にはニワトリを一撃で沈めてしまうこともあるほどの圧倒的な打撃力もっています。ボクサーのパンチスピードは秒速11メートル、時速にして40キロメートルですが、ネコパンチのスピードはなんと秒速22メートル、時速80キロメートル、ほぼ倍のスピードを誇ります。ネコパンチのほうが断然速いのです。

2010年のネブラスカ大学による研究によれば、世界中で33種の野鳥が野良ネコによって絶滅に追い込まれたとされており、ハワイ大学でも同州の絶滅に瀕している野鳥の数が減少している要因のひとつが「ネコ」であることが確認されています。あの愛くるしい表情に騙されてはいけません。ネコは超一流のハンター(殺し屋)であり、ネコはみんなネコを被っています。

というわけで人間VSネコですが、道具を使わない、着衣もなし、となると、圧倒的な体格差があるとはいえ、人間が勝利するのはかなり難しいです。仮に彼らを抑え込んだとしても、身体中にひっかき傷を負い、食いちぎられて流血してしまうでしょう。


しかもネコの攻撃は目に見えるものばかりではありません。ネコがほぼ100%保有している口腔内常在菌のひとつ、パスツレラ菌に感染すると、筋膜(筋肉を包む組織)が壊死したり、敗血症や髄膜炎などの重症感染症を引き起こしたりすることがあります。また「猫ひっかき病」と呼ばれるバルトネラ・ヘンセレ(細菌の一種)の感染症では、かわいい病名とは裏腹に、発熱や頭痛、リンパ節腫脹、重症化した場合は脳炎などを起こすことがあり、高齢者や基礎疾患があり免疫が弱まった人たちでは重症化のリスクがある感染症です。日本人の抗体陽性率は6・4パーセントであり、ワクチンの予防接種も存在しません。

ネコの静かなる反撃は続きます。2016年夏、連れ帰ろうとした野良猫に噛まれた女性が「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症、10日後に亡くなるということがありました。


原因である「SFTSウイルス」は、2011年に発見された比較的新しいウイルスで、SFTSウイルスに感染した「マダニ」に咬まれると、意識障害や下血などの出血症状などを起こす危険な病気です。国立感染症研究所によると、2013年~19年11月までに国内で感染した492人のうち、約14パーセントにあたる69人が死亡した致死率の高い感染症で、「マダニに対する注意」が喚起されています。


先の女性がマダニに直接咬まれた痕跡はなく、厚生労働省は「マダニに咬まれていた野良猫から間接的にウイルス感染した」可能性を指摘しています。少なくとも抗生剤投与や点滴、投薬といった「現代医療が受けられる前提」でなければ(であっても)、かなりハイリスクな戦いを強いられることになりそうです。

このように人間のフィジカルな強さから考えると、(個体差はあるとはいえ)ネコとの1対1の真剣勝負は人間の圧倒的不利が予想されます。

(拙書『強さの磨き方』より)
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この文章は拙書『強さの磨き方』からのものです。強さって何?弱さって何?ホントに強くなきゃいけないの?いろんな「強さ/弱さ」に対して、あらゆる角度から考察を試みた書籍です。



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