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モンゴル 男子サッカー代表 全選手、スタッフへのアシックスシューズ提供の裏側【後編】

こちらを読んでいただく前に是非、モンゴル 男子サッカー代表 全選手、スタッフへのアシックスシューズ提供の裏側【前編】をご覧になってください。

埼玉スタジアムに到着し、ライターの鈴木さんと共にワールドカップアジア2次予選 日本代表との試合を翌日に控えるモンゴル代表の前日練習を見学に行きました。

この見学には、モンゴル代表選手がどれくらいアシックスのシューズを着用してくれているのかを確認するという意味合いがありました。

前日練習でのモンゴル代表選手のアシックスシューズ着用率

埼玉スタジアムのピッチサイドは普段、観客席から見ている景色と全く違う雰囲気でした。

そして、モンゴル代表チームがグランドにやってきました。僕もピッチ脇まで移動し、選手の足元をチェックしました。

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前日練習の段階では、アシックスのシューズのみならず様々なメーカーのシューズを着用している選手の姿が目に入りました。

「これはまずい・・・。」

アシックスシューズの着用率は全体の約半数以下といったところでした。

翌日に初めてのワールドカップ2次予選を控え、そして日本代表と対戦するという素晴らしい機会を得た代表選手たちにとっても、使い慣れたシューズを着用したいという気持ちがあったのでしょう。

しかし、僕も同じ気持ちで、最も自分のパフォーマンスを発揮できるシューズを履いて試合に臨んでもらいたかった。なので、選手たちの気持ちも理解しなければならないと思いました。

その上で、何かできることはないか。スタジアムから滞在先へ帰るまでの間、色々と考えました。

精神的支柱であり守備の要のTurbatと話し合い

僕は帰りの車内で、まずシューズのフィーリングに関して再度、確認を取る作業をしました。着用してくれている選手はどうだろうか、また着用をしていなかった選手に関してはどんな問題があるのかどうか。

すると、Turbatからはこんな返事が来ました。

「シューズに関しては本当に素晴らしい。しかし、選手の中には着用してから試合までに十分な時間がなく、慣れ親しんだシューズを着用して試合に臨みたいと考えている選手もいるようだ。」

要は時間が足りなかったということ。

なるほど。選手の意見はもっともであり、僕は彼らに強制してシューズを履かせるということだけはしたくなかった。

最後の望み、提案

その上で僕はTurbatに今回の支援を決めてから実現に到るまでの経緯を話した。僕たちがどんな思いでこのプロジェクトを行なっているのか。

僕は、最後に一つ提案をさせてもらった。

「もし、可能であればウォーミングアップの時間だけでもいいから、もう一度アシックスのシューズを履いてみてくれないか?そこで感覚が良ければ試合で使ってもらいたいし、慣れ親しんだシューズを選ぶのであればそれはそれで大丈夫だ。自分たちの能力を発揮するために最高の選択をして欲しい。」

試合当日の朝

昨晩にメッセージを入れたTurbatから返信が来た。

「今日の試合前のホテルでの昼食時に、全選手に俺がこう伝える。」

「日本の方々が僕たちのためにここまでやってくれた。こんなに素晴らしい支援をしてくれた。それはみんな僕たちが最高の状態で試合に臨めるために、ただそれだけだ。だから、今日のウォーミングアップはみんなでアシックスのシューズを履いて、感謝の気持ちを表現しようじゃないか!」

彼はメッセージ通り、ホテルでの昼食時に全選手の前でこんなことを話してくれた。

僕は試合会場の埼玉スタジアムへ急いだ。

事前にモンゴル代表チームに関して、また今回の支援に関して取材を行ってくださったKing Gearの菊池さんと合流をした。

・現役モンゴルリーガー渡邉卓矢が語るモンゴル代表
http://king-gear.com/articles/1137 (取材/King Gear)
・日本代表戦でモンゴル代表が履いているスパイクはなんだ?
http://king--gear-com.m17n.in.th/articles/1142 (取材/King Gear)

ウォーミングアップ

早速、席に着くとウォーミングアップを行う選手たちの足元を確認した。

すると23名中の20名がアシックスシューズを着用してくれていた。そしてスタッフ陣は全員アシックスのシューズを着用。

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そして、アシックス以外のシューズを着用していた選手たちも、色を統一して白もしくは赤いシューズを着用してくれていて、スタンドからは全員が2色に統一したシューズを履いているように見えた。

この光景に僕は本当に目頭が熱くなりました。前日の練習では半数以下だったのにも関わらず、彼らは僕たちの気持ちに感謝を伝えるかのように足元を揃えてくれた。

選手入場〜試合開始

いよいよ、運命の時が来た。選手が入場し、普段聞き慣れているモンゴル国歌がこの素晴らしいスタジアムに響き渡る。

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僕自身、このピッチに立つことを夢見てサッカーを続けて来た。それは叶うことはなかったけれど、チームメイトや友人たちが日本代表と戦う。そして国歌が流れる。鳥肌がたった。震えた。そして、足元はウォーミングアップの時と変わらず白と赤で統一されている。

この時のスタメンの各メーカー着用比率は

アシックス・エクスフライ4(固定式)・・・4名
アシックス・エクスフライ4(取り替え式)・・・4名
ナイキ・マーキュリアルヴェイパー13 ・・・1名
ナイキ・ファントムビジョン ・・・1名
アディダス・エックス18.1 ・・・1名

となり、アシックスの着用はスタメン11名中8名が着用するという結果になった。

同時に提供をさせてもらったジオカグリップスに関しては、秘話がある。

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実はモンゴルではこうしたソックスが流行し、選手が元々のサッカーソックスを切断して、お気に入りのソックスとかぶせて使用することが問題となっていた。そのため、別のソックスと併用する場合はデザインなどが見えないように全てテーピングなどで隠すことを強調されていた。そのため、当日2名以外に関してはジオカグリップスのデザインの特徴である縦の黒いラインが確認できなかった。

試合には敗れたが、モンゴル代表が試合後にとった行動に

試合は6-0で日本が力の差を見せつける結果となった。前半のモンゴル代表は本来のフィジカルを前面に押し出したサッカーが披露できず、少し日本代表をリスペクトし過ぎてしまったかなという印象もありました。

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試合が終わると、モンゴル代表はロッカールームに引き下がるのではなくスタジアムをゆっくりと手を振りながら1周しました。

この行動の真意として、日本の皆さんの声援や今回のアシックスシューズ、ソックスに関するサポートに対しての感謝を示すとともに、モンゴルと日本がこれからも友好的により良い絆を築いていけるようにという思いが込められていた。

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改めまして、シューズ提供に協力をしてくださったモリヤマスポーツさん、そしてアシックスさん、ソックスを提供してくださったジオカグリップスさんには感謝を伝えたいと思います。

本当にありがとうございました!!

また、今回はサッカー仲間でありライターの鈴木さんに取材していただき、Web Sportivaさんにて素晴らしい記事を掲載していただきました。こちらの記事をぜひ読んでいただきたいと思います。

モンゴル代表の足下を支えた関西スポーツ店とモンゴルリーガーの奮闘
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2019/10/15/___split_95/index_3.php

また、試合から数日が経ち、友人からとある連絡をもらいました。

「元気?ラジオ聞いたよ!!すごいね!!」

なんのことかさっぱりわかりませんでした。

なんと、モンゴル代表への支援に関する記事を偶然見つけてくださった宮沢ミシェルさん、加藤未央さんがラジオ内のコーナーで紹介をしてくださっていたのです。

本当にありがとうございました!

こちらからラジオの音声を聞くこともできますので、ぜひご視聴いただけたらと思います。

終わりに

サッカーはどこの国に行っても愛されています。ボール一つで言葉がわからなくともコミュニケーションをとることさえできます。一緒にひとつのボールを蹴ることで、たくさんの笑顔が生まれます。

しかしながら、その環境に関してはまだまだ問題や格差が大きいのが事実です。今自分たちがサッカーを楽しめる環境というのは、当たり前のことではない。

それを頭の片隅にでも残していただいて、より一層サッカーを楽しんでもらえたらなと願っています。

今はコロナ禍のため、外で思いっきりボールを蹴ることは難しいですが再び、サッカーが世界を熱狂する日々が戻ってくることを願って。

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