教員1年目,オンライン授業をざっくり振り返る

2020年3月まで,中学・大学での非常勤講師,そして塾でのバイトをしていましたが,今年4月,ついに初めての正規採用先での英語教師としての仕事が始まりました。

メインの担当は中2。それから高2と高3も少し。

着任から4ヶ月,この激動の2020年,ここまでどのようにオンラインで授業をしてきたか記録として残しておこうと思います。

数年後懐かしい気持ちで微笑ましく読み返せれば良いんですが。

使用したデバイス・アプリ・webサイトまとめ

授業: Zoom・YouTube・VLLO・OBS・LECTA
学校側が全て整えてくださっていたので,何も迷うことなくZoomでリアルタイムオンライン授業。
また授業アーカイブのためにYouTubeの個人チャンネルで限定公開の動画をアップしました。
その授業動画の編集に使ったのがVLLOです。スマホ・タブレット専用の動画編集アプリですが,かなり有能です。
またOBSはゲーム配信などでよく使われるアプリですが,これを使って英文法の講義動画も撮影しています。
またLECTAは授業動画の撮影用のアプリですが,動画を軽くする機能がついており,その機能にはかなりお世話になりました。

課題配信・提出: ロイロノート,Google Classroom
個人的にはGoogle Classroomを積極的に使いたかったものの,生徒達的にはロイロノートの方が良いらしい。
ロイロノートは学期が始まるタイミングで既に全ての授業のプラットホームが整っていたこともあって,わざわざGoogle Classroomでいくつも新しく授業名・生徒一覧を作成するのも確かに手間か。

その他やりとり: ロイロノート・ednity・Classi・Google Classroom
ロイロノートは元々個別のチャット等は想定した作りではないものの,生徒と1対1で文字のやり取りができる。対してednityやClassiは仕様や学校・学年の方針で生徒との1対1の連絡には使わない。Google Classroomは投稿の宛先を選ぶことで個人に連絡もできるが,そもそも生徒達はあまり見てくれない。
クラス・学年・部活・委員会など一定数の生徒のコミュニティへの連絡はednityやClassiを使用。ednityは昨年以前より使っていたらしいですが,サービス停止が噂されClassiに徐々に移行が進みました。

自主学習サポート: Classi・ロイロノート
上に挙げたClassiは連絡ツールであるだけでなく,授業動画やwebテスト等の学習補助機能が付いています。それを(せっかく学校として取り入れた以上)積極的に使って生徒の自律的な学習をどんどん進めていこうということになり,7月中旬から中2の希望する生徒に対して,授業動画・webテストの提示⇄個別面談のサイクルを回し始めました。これは現状学年としての動きですが,今後学校全体に広がっていくことを目指しています。
早い生徒は中1の復習から入り既に現在完了や分詞の後置修飾まで進んでおり,夏休み以降授業内でのmini teacherとしての働きに期待しています。
まだまだ改善してもらいたいところは多いですが,有効に使えてきている実感はあります。

完全オンラインでの初授業

新任教員の挨拶は録画,初めての授業はZoomによる完全オンラインでした。

スライドはkeynoteで黒一色背景に白文字,強調したい文字は黄色というのをベースにしました。2回目あたりの授業で,真っ黒の背景だと案外白が見づらいという生徒の意見をもらって「グラデーション」というネイビーっぽい背景に変えました。

最初はやはり自己紹介。
(1)生徒の英語力を概観する
(2)オンラインでの課題提出操作に慣れさせる
(3)オンラインでの課題返信操作に自分が慣れる
の3つの目的で自己紹介コンテンツをオンラインで提出してもらいました。

授業内では自分の自己紹介ポスターを紹介し,それを参考資料としてオンラインで共有しました。また授業自体をZoomでレコーディングしておき,自分の自己紹介部分に字幕をつけてこれも参考資料として共有です。

・知らない先生との初めての授業があまり双方向性の高くないオンライン授業
・いきなり自己紹介のコンテンツを作れという課題
・慣れないオンラインでの資料ダウンロードや提出

といったあらゆるハードルの高さを多くの生徒が乗り越えてくれました。

英語教育系YouTuber化

高校3年生の授業で求められているのは基本的に受験対策。ただそれ以上のことは何も言われず,こちらは選択科目でありながら,そもそも必修の方でどんなことをやっているのかすらよく分からない状態でのスタートでした。

あれやこれやの試行錯誤はここではほぼ省きますが,簡単に言うと自分自身のクソ授業と,高校3年生の生徒達とのオンラインでの関係性作りの難しさ,そしてやはり自分自身のクソ授業,それらに対して自分の精神は結構限界に近い状態でした。解説のスライドを見るためには生徒は真っ直ぐiPadを見なければいけないはずなのに,彼らと一生目が合わない。途中で解説を,なんならこの授業自体を,もっと言えばこの仕事を辞めてしまいたいと何度も思いました。

それでも一生懸命に予習してきている一部の生徒のためには辞めるわけにはいきませんし,自分自身無職になるわけにもいきません。しかし本来教師としての力の無い自分自身にぶつけるべき怒りを生徒達にぶつけてしまいそうな精神状態では,リアルタイムの解説はこれ以上無理だと判断し,僕は1人,無人の教室で長文問題の解説をすることに決めました。

放課後,空いている教室に1人赴き(生徒は学校にいないのでほぼ全教室空いているんですが),iPadを三脚にセットし,長文の解説をします。疲れたら休んで,説明が分かりづらいと思ったらそこだけもう一度話し直します。最後まで撮り終えたらiPadでパパッと編集しちゃいます。

編集が完了したらYouTubeに限定公開でアップし,リンクを取得。授業時あるいは授業前にリンクをシェアします。Google Classroomのタイムライン最上部に完成した動画のリンクとタイトル一覧を常に載せておき,授業の際にも各生徒のニーズに合わせてZoomのチャット欄に動画リンクを貼りつけました。また解説を見終わった生徒にはGoogleフォームで作っておいた確認テストのリンクを個人チャットで送り,文法等の確認問題を解いてもらいます。

このスタイルには,
(1)各生徒が自分なりのペースでいつでも何度でも解説を受けられる
(2)解説は納得のいくまで撮影できる
(3)足りないと思う部分は後から字幕等を付け足して補うことができる
(4)視聴回数・視聴時間等のメタデータを把握できる
(5)分からないことがある生徒はコメント欄で質問することで疑問が共有される

(6)授業冒頭でリンクを案内してしまえば自分は次の解説動画の準備を授業中に進められる
といった(今の自分にとってはポジティブな)特徴があります。

正直に言って,少し精神的にリアルタイム授業が厳しかった自分にとって,生徒との直接的な接触が減ったこのスタイルは非常に心地よいものでした。

もちろん,授業の成果という点については何も改善されていないという可能性も大いにあります。

ただ,とにかく自分のメンタルヘルスのためには必要なことでした。
授業動画の撮影・アーカイブは,教員の心的疲労の軽減に寄与し得るということをここに一応記しておこうと思います。

オンラインのグループワーク

オンライン授業におけるグループワークと言えばやはり皆さん思い浮かべるのはZoomの「ブレイクアウトルーム」でしょうか。

確かに非常に便利です。読書会でも何度も利用した機能です。

ただ,中学2年生にはグループの部屋だけ与えて「自由に話していいよ」と言ったところで,メンバーによっては全く何の会話も生まれません。
自分の勤務校の英語は5教科のテストの点数で分けられた習熟度別クラスになっており,一番下のクラスの生徒達がオンライングループワークで何かを達成するというのは相当ハードルが高いです。

実際そのクラスで初めてブレイクアウトをした時は,事前に話す内容も伝えておいたにも関わらず,4グループ中3グループが誰もミュートを外さないという状況でした。

オンラインではなくリアルだったら出来るという単純な話でもないのですが,それでもリアルの方がまだ行ける気がしました。この感覚は多くの先生方に共感してもらえるのではないでしょうか。

だとすれば,リアルにはあってオンラインのグループワークに無いものは何か。

(1) 教師が常に見えるところにいる。
(2) 教師を呼べばいつでもすぐに来る。
(3) 他の班のざわざわも聞こえる。

この3つが自分の中で浮かびました。

そこで僕は誰も来ていない教室をこんな感じに整えました。

画像1

(この絵描くのに30分かかった…)

こうしてみると,色々なブレイクアウトルームに出入りする必要はなく,各部屋に自分も入れちゃえるので,後は「机間巡視」すれば結構色んなグループに助け船を出したり,全体に一気に指示出したりできちゃいます。
ハウリングには注意ですが,それも適切な距離を取れば案外大丈夫でした。

分散登校が一番しんどい

1学期途中から徐々に希望する一部生徒が実際に登校して来ました。そうなってくると教室にいる生徒とオンラインの生徒に同時に授業をすることになります。

それまでYouTubeライブやインスタライブみたいなテンションで(時には自宅から)楽しんでいた授業が,入場者制限付きの有観客ライブをオンラインでも配信するみたいな感じになりました。

多くの先生は,「生徒が目の前にいるとオンラインの生徒の存在忘れちゃうね」と言っていましたが,この学校に来てからオンライン授業しかしてなかった自分は「オンラインの生徒がいると目の前の生徒の存在忘れちゃう」状態でした。

慣れてくると教室にいる生徒には色々と面白い活動をやらせてあげたいなと思う一方,オンラインの生徒に同じ質のものを提供できないとなると,「低い方に合わせる」ではないですが,オンライン生が疎外感を感じてしまわないように気を遣ってしまいました。

結局この問題は夏期講習の最後まで解決し切れず,リアルでないと難しい活動をやる時には,その間オンラインの生徒には別の課題をやってもらうといった妥協策が良いところ。

全国的に感染者は増える一方で,まだまだオンライン受講の生徒は0にはならないと思うので,後期は「オンライン vs オフライン」をテーマに何かしらで対決させてみたり,「オンライン × オフライン」でコラボさせてみたり,成功可能性をある程度度外視した挑戦もして行こうかなとか思っています。



夏休みに入り,久々に文章を書くということでリハビリとしてダラダラと書かせていただきました。
あまり面白くはなかったと思いますが,ここまで読んでいただいた方,ありがとうございます。

しんどいですが,頑張りましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?