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日常をベトナムに移してみる vol.3 ハノイ

ドミトリー宿で迎えた2日目の朝。朝食はバイキング形式だった。

「おいしいな。まるでアパホテル。」とか考えながら食べていると、「楽しんでいるかい?」と声をかけられた。振り向くと白髪の男性だった。

「楽しんでるよ。昨日日本から来た。」
「そうか、いいね。」
「どこから来たの?」
「カナダから。ここが大好きで長期滞在しているよ。何度もハノイに来たことがあるんだ。」
男性は仕事をリタイアして、一人旅をしているらしい。とても朗らかな雰囲気の方だった。

日本では年配の方が長期間ドミトリーで過ごすというのはあまり無いかと思う。昨日一緒に飲んだ欧米の方々も、みんなひとりで数ヶ月の長期滞在をしているようだった。
日本の一般的な旅のスタイル、数泊の間で「るるぶ」や「まっぷる」を見ながら観光地を巡るというのも一つの形だし、彼らのように長期で暮らすように旅をするという形もある。こういう旅行者が雑多に集まる場に来ると、自分が考えている以上に、もっと旅は自由なのだと思える。

Hanoi Buffalo Hostel、とても良かった。
できたらもっと泊まりたい。けど明日からの仕事はweb打ち合わせが何個か入っているので静かな空間が欲しい。なので個室の宿に移ることにしていた。

Booking.comで周辺の宿を探す。近くに一泊3,700円ほどの宿が見つかったので、そこに3泊予約を入れた。
10時頃、宿を後にし、午前中でも多くのバイクが行き交うハノイの道を歩いて次の宿に向かった。

歩いて5分ほどで到着。思っていたより近かった。

「ハーイ、タクヤ!僕はトム!よろしく!12時から部屋に入れるから少し待っててね。」
フロントの方が出迎えてくれた。とても明るい、同年代くらいの男性だった。
荷物だけ預かってもらい、しばらく街に出ることにした。

今日は、午前中はどこかで仕事をして、あとは街をぶらぶらしながらゆっくりするつもりだ。

ひとまずPC作業ができるコワーキングスペースに行ってみることにした。Grab(東南アジア版のUber)でバイクタクシーを予約して、宿の前で拾ってもらった。

バイクの後ろに乗るのは1,2回経験があるが、いまいちどこを掴んでいればいいのか分からない。運転手の肩もなんか違うし、かと言ってどこも持たないのも危ないし。
ひとまずシートとバイク本体の隙間にわずかな溝に指を突っ込んでみることにした。しっくりこないながらもバイクは混み合ったハノイの道路をびゅんびゅん飛ばす。5分ほどで目的地に到着した頃には指先が溝の形で凹んでいた。結構力を入れていたんだろう。

目的地のビルが見つかった。階段を登ると、建物内がどんより暗い。入り口になにやら掲示されている。

「ホリデー期間中」

おぉ、日本のゴールデンウィークとベトナムもホリデーは重なっているのか。調べると4/30は南部解放記念日ということで祝日扱いになっているらしい。
近くにあった別のワーキングスペースに向かってみても、やはり休館中だった。

閉まってる。。

仕方がないので、マックに入り、2時間ほど作業。仕事の目処がついたので、ホアンキエム湖の周りを散策することに。

休日だからなのか、湖周辺の道路のほとんどが歩行者天国になっていた。
道には子供が乗って遊べるゴーカートサイズの車が用意されていた。子供たちはそれに乗って道路を自由に走り回っている。
無料で乗れるのかな。なんか道路が住民に開かれていている感じだな。たくさんの人々が休日を街中でまったり過ごしている。

奥にあるのが子供用の車
ホアンキエム湖周辺

東南アジアってこんなにも蒸し暑いのに、外で過ごす文化があるよなぁ。食事をとるときもやたらと椅子とテーブルが外にあったり、テラス席があったり。日本だったら夏にわざわざテラス席で過ごそうと思わないよな。

滝汗をかきながらブラブラしていると、時折目についたのが、プロパガンダ的なポスターや掲示物だ。おそらく現在では軍事的な意味はないものだと思われるが、イラストやデザインに社会主義的なものを感じた。

気がつくと13時をまわっていた。暑さの限界を感じ、一旦ホテルに戻ることに。そろそろ部屋に入れるはず。

たまたま近くにいたバイタクの方に声をかけられた。ホテル近くのバインミー屋まで乗せてもらうことにしよう。
「このバインミー屋まで、いくらですか?」googleマップを見せながら聞くと
「100,000ドン。乗って」と言う。
暑さから逃れたく、何も考えずに乗せてもらい5分ほどで目的地に到着。お金を支払った。

まだあまりベトナムのお金のことが理解できていなかったが、後から考えると日本円にして600円ほどだ。今朝乗ったバイタクは170円ほどだったので、ぼったくり価格だったと思う。
もう支払ったので仕方がない。バイタクの相場感が掴めた気がするので次からは大丈夫だろう。

バインミー25という有名店でテイクアウトしてホテルの部屋で食べた。パンはカリカリ、牛肉と野菜のうまみにパクチーも効いててうまい。バインミー考えた人すごいわ。

よく歩いたし、少し休憩だな。

昼寝をしてたら夕方になっていた。また街に出でみよう。

ハノイに来たら是非やってみたかったことがある。それは「路上のプラスチック椅子に座ってビアホイを飲む」だ。
ビアホイとは、主にハノイでよく提供される度数3~4%の軽めのビールだ。世界一安いビールとか言われている。

少しばかり暑さの和らいだ夕暮れの街を10分ほど歩き、ビアホイを提供しているお店に到着。席に座り、メニューを見るとビアホイは1杯10,000ドン、60円ほどだ。なるほど安い。
さっそくビアホイと空芯菜を注文したら、空芯菜はたっぷり出てきた。

初ビアホイが喉を抜ける。うまい。軽めなので暑い屋外でゴクゴク飲むのにぴったりだ。
絶えず聞こえるクラクションの音、信号のない十字路をすんなりすり抜けるバイクや歩行者、そしてビアホイ。ハノイがぎゅっと詰まった空間にいるような気がして、なんともよい。

暗くなると客が増え始めた。
客層は圧倒的に年配の男性が多い。なんとなく仲間内で集まって、ビアホイを飲みながら、ただ時が経つのを過ごしているように見えた。私の想像なので、実は真面目な議論とかしていたらすみませんとしか言えないが、そのように思えたのだった。

夜になったし、そろそろ帰ろう。明日から仕事で朝が早い。

時差があるから、日本時間より2時間前に起きないといけないのか、もっとダラダラしてたいなぁとか考えながら、ホテル近くの食堂でシメのフォーを掻き込み、眠りについた。


↓つづき

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