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禁断の地への招待。

森で果実を採って食べたことは、あるだろうか。

恥ずかしながら、僕はなかった。
四半世紀以上も生きてきて一度もなかった。
そしてそれを盛大に後悔した。

うますぎるのだ。生きた果実というのは。

宝石のような輝きを放つブラックベリーを採って食べる。

口の中に運び入れた瞬間、新鮮に弾ける酸味。続いて訪れる甘み。
コンビニのどんなお菓子でもかなわない。時代はセブンイレブンよりブラックベリーである。
一つ、また一つ。手が止まらない。貪り食べてしまう。なんでこんなに美味しいのか。

見よ、この不敵な笑みを。不敬罪にでも問われそうな自慢げな表情を。


生きているのだ。味が。
"ハッピーターン200%"どころではない。"イキテイル2億%"である。
なにせ採った瞬間に食べているのだから。
"生きている味"。僕は人生で初めてそれを知った。
溢れ出す豊かさ。思わず目を閉じてしまう美味しさ。

森の果実をいただくということ。
それが実現できる場所が、森のような庭、
”フォレストガーデン”である。

この記事は、読者を"フォレストガーデン"という魔の環境に招く、
悪質なラブレターである。あなたはもう逃げられない。
ページを閉じても無駄だ。すでにあなたのCookieは把握した。



静岡は浜松。中堅どころの地方都市である。
よくある戸建ての住宅地を抜けていくと、突如、”そこ”は現れる。

「なんだここは。」
ではない。それはこっちのセリフだ。なんなんだここは。

庭なのか?畑なのか?森なのか?
自然な場所なのか?人為的な場所なのか?もはや何もわからない。

社会の掟が通用していない。”常識から無重力な空間”とも言うべき場所。
一体ここで、何が起きているのだ。

この怪しげな秘密基地を日夜開発しているのが、この二人である。

落ち着け、気をつけろ。
優しそうな笑顔に騙されてはいけない。
彼らは生粋の”変態”である。

ひとたびこの地に足を踏み入れれば、
気づけば心を鷲掴みにされる悪魔の解説が始まる。

「僕たちはここで、
人と生き物がともに生きられる暮らし
をデザインしているんだ。」

ふっ。
何を言っている。さっぱりわからない。
なんか素敵そうだが、もう少し説明してくださいよ。

「例えばこれは”アカメガシワ”っていう木でね。
町中のどこにでも育って、雑草みたいに丈夫なやつなんだけど、
実は、葉っぱを煎じてお茶にしたら胃腸を整えてくれるし、
葉っぱは布みたいに柔らかくて、ウェス(布巾)としても使えるんだ。」

町中のありふれた木で、お茶が作れる、だと…?

見よ、このわが子を愛でるような優しい眼差しを。終始こうなのである。

「そういった、人の暮らしの役に立つ植物たちを、
それぞれの個性を活かせるように多様に組み合わせて植えているんだ。
そのおかげで年がら年中、色んな収穫を得ながら暮らせる。

例えばこれはワインボトルを使った水やり装置。古代エジプトの知恵で、
素焼きの器と連結してて、時間をかけて土に水を浸透してくれる。
水やりできないことも多いからね。こういう仕掛けを色々してる。」

食い入るように見つめる参加者たち。残念だが、彼らはもう帰ってこれないだろう。

次から次へと、魔術が飛び出してくる。

人も本当は生き物で、自然のリズムとつながって、
他の生き物たちと一緒に暮らせるはず。

”自然を壊して搾取する生き方”じゃなくて、
自然と人とが共に豊かになる生き方”を、ここで実践してるんだ

そしてそんな暮らしを、自然豊かな”田舎”で実現するんじゃなくて、
多くの人が住んでる”都市”や”郊外”でも実現できると示すこと。
そのために住宅地の浜松で実践してるんだ。
都市でも実践できる暮らし方が分かれば、みんなもできそうでしょ?」


だめだ。

やられた。

素敵すぎる。

そうだ。そうなんだ。

僕の送りたい暮らしはそれなんだ。

自分自身が普段暮らしている、ビルや家が並び立つ住宅地でも、
自然とつながった暮らしを送りたい。

それがやりたいんだ。



こうして僕は悪魔の契約を交わした。自らの人生を差し出した。
300の書類にサインし、紹介された500万円の鉢植えを買った。
あらゆる植物が10倍の速さで育ち、その収穫で5年でもとが取れるらしい。

大丈夫だ。それは嘘である。笑

この場所で受け取れるのは、怪しげなぼったくり鉢植えではない。
人と自然がともに生きるための暮らしの知恵であり、
そのためのデザイン体系、様々な自然の生態を理解して活かす知恵である。

このような、人と自然が豊かに暮らす知恵や生活文化は、
”パーマカルチャー(Permaculture)”
という概念で体系化されている。

1970年代にオーストラリアで始まり、今や世界中で広まっている。

オーストラリアでの、地域の若者を中心としたコミュニティガーデン


この暮らしはあまりにも豊かで、懐かしい未来である。

そうして僕は、”あっち側”の人間となってしまった…

去年の1年間、2ヶ月に一回ほど浜松に通ってパーマカルチャーを学び、
オンラインで他の参加者と交流しながら自分の住まいで実践するコースに、
参加した。

たくさんのことを学んだ。
火の呪文、召喚呪文、錬金術…

まぁそれは嘘だが(笑)、
植物の選び方、庭のデザインの仕方、草木染めや木の剪定の実践、
微生物たちの循環の仕組みなど、人と自然が生き合うための知恵や心のあり方を、本当にたくさん教えていただいた。

最高だった。
学んでいるという大変さもないほど、とにかく楽しくて、豊かである。

果樹の”摘果”。果樹はほどほどに枝を切ることでより甘く実る。


藍染めの実践。実際に藍を使って布を染めて干してみる。


釜戸での調理。筆者の顔が完全にイッてしまっている。

コースの詳細については、もはや紙幅がなくなったため、
同じく魔界に入った友人の記事を参考にしてほしい。

暮らしへの見方がすっかり変わってしまうコース、
無事に魔法省の取り締まりをかいくぐり、今年も実施されることになった。


1年間をかけて、じっくり学ぶコースである。
「自然とつながった暮らしを、少しずつ実践したい。」
そう願っている人には、きっとぴったりである。

何より楽しい。そして仲間とのつながりが、本当に豊かである。


申込みの締切は3/15。
大丈夫。ここまで読んだ人は自動的に申し込まれています。
嘘です、ちゃんと申し込んでください。笑

ちょうど今日、3/2の夜にはオンラインの説明会も開かれますので、
良ければぜひ参加してみると良いと思います。


長い長いラブレターに付き合っていただき、感謝である。
それでは、魔の地にて、あなたを待っている。


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