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風待ち港に寄せて。

旧友が、稲取に立ち寄ってくれました。
水平線から赤くのぼってゆく月を見ながら、夜更けまで語っていました。
よくしゃべるやつでした。

話しているときに、「個として未完 ゆえに 全として完全である」という、かつて友人がくれた言葉を思い出していました。
個として不完全だけど、世界と呼応して完全となっていく。そんな気持ちで、少しずつ文章にしていくようにしようと思います。

稲取の風待ち港への自分なりの想いを、書き始めていきたくて。



まず、最初に。
風待ち港としての稲取の、世界へのまなざし。世界観。
それは、「人はみな、人生の旅人である。」ということ。

生涯をかけて、人はみなすべて、それぞれの旅をしている。
何かを探したり、見つけたり。その目的地や理由は人それぞれだし、
それが決まってないまま旅をしていることもある。でも、人はみな、旅をしているんです。

旅するというのは、その人自身が心震える何かを、見つけたくて、感じたくて、探し訪ねているということ。神の指示ではなく、世間的な義務でもなく、ただ自分自身の心が、魂が、本当に得たいものを得られるように、探して歩くこと。それが生きるということでもあります。

人生とは、真の自分を見つける旅路である。それに失敗したなら、ほかに何を見つけても意味はない。

ジェームズ・ミッチェナー(アメリカの小説家。従軍体験の作品でピュリッツァー賞を受賞)

自分の心と対話しつつ、自らの命に適うように生きる。それを真に深いレベルでできたとき、全生命が響き合いながら美しい景色が生まれるはずだという願いがあります。


そして稲取は、そんな世界観のもとで「すべての人生の旅人を支え、応援する港でありたい」と思っています。いろんな形で、旅人に寄り添うことができると思っています。



まず、旅を支えるということ。
旅というのは、時に困難なものです。人生の旅をしていると、時に様々な困難に直面します。挫折したり、道に迷ったり。大事な物を見つけることを、諦めそうになったりします。そんなときに、「旅に困難はつきものだ」と、「旅をしているのは、私一人じゃないんだ」と、思い出してもらうこと。そうして旅人たちの歩みを支えること。

虹を見たければ、ちょっとやそっとの雨は我慢しなくちゃ。
If you want the rainbow, you gotta put up with the rain.

ドリー・パートン(カントリーミュージックの女王。戦後からの女性の社会進出を支えました) 

人はみな旅をしている。"Alone Together (一人だけど、ともにいる)"ということ。


続いて、旅を思い出すということ。
日々の忙しさ、大変さに直面していると、人生の旅路を忘れてしまうことがあります。誰かに指示された日常の中に埋没していく。私はこんな人生で良かったのか。ふと頭をよぎります。そんなときに、「そうだ私は旅をしていたんだ。こんなところで終わっちゃいけない」と、思い出してもらうこと。

危険を冒して前へ進もうとしない人、未知の世界を旅しようとしない人に、人生は、ごくわずかな景色しか見せてくれないんだよ。

シドニー・ポワチエ(黒人俳優として初めて米アカデミー賞の主演男優賞を受賞しました)

岸辺を離れてこそ、次の景色が見えるんだと。


そして、旅路を示すということ。
人生の旅を続けていると、時に、次に向かう道がわからなくなります。
「私はこれから、どうしたらいいんだろう。」 キャリアを悩み、やりたいことを探すけど、なかなか見つからない、そういうときがあります。
そんな時、自分の力で道を探すことを一旦やめて、風に身を任せてみること。世界を信頼し、風を待ってみる。
そうして初めて、感じられる風の兆しがあったりします。あぁ、風は吹いていたんだと。それに乗ってみる。

風波はつねに優秀な航行者に味方する

エドワード・ギボン

そして最後に、旅を味わうということ。
なぜ旅をしているかといえば、旅をしたいから、でしかないのでしょう。
そこに喜びがきっとあるから、旅をしている。
でも、慌ただしく日々を走り抜けていると、長い長い旅の途上を生きている喜びを置き去りにしてしまいます。どこに行くべきか、と未来ばかりを気にしてします。

でも。

旅の途上を生きることが報酬なんだ。目的地が大事なんじゃない。
The journey is the reward. Not the destination. 

スティーブ・ジョブズ

「最近は、どんな旅だった?」 友と語り合う。旅を通じて得てきたかけがえのないものを、大切に抱きしめる。


そんなふうに、色んな形で、人生を旅するすべての者たちを、物理的に、精神的に支える港でありたい。それが自分のこの街への思いだなと。

ここから改めて、出発していこうと思います。
良ければ、ご一緒に。





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