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色を付けない運営から始まるエコシステムづくり

挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象は宮城県仙台市に拠点を構え、組織課題解決や秋田の関係人口創出を手掛けられている小松 由さん。スタートアップの裾野を広げ続ける想いについて伺いました。

── 小松さんの現在の取り組みについてお聞かせください。

主に、そしきのコーチ株式会社にて、中小企業経営者向けにエグゼクティブコーチングをしています。コーチングで見えてくる経営課題、組織課題に対して、当事者の皆様と伴走しながら解決に向けて支援することがお仕事です。


── 経営課題の解決支援、素敵ですね!主に、ということは他にも何か手掛けていらっしゃるのでしょうか?

実は一般社団法人チームババヘラという、秋田の関係人口を増やすことで地域の担い手不足を解消する団体の発起人として理事も務めています。こちらでは、その中でもスタートアップや起業・創業支援の責任者をしています。


── 関係人口創出の枠組みの中での創業支援、とは中々に珍しいですね。

確かに、ギャップを感じますよね(笑)世の中には関係人口を増やす手段はたくさんあるんです。例えば首都圏のアンテナショップで生産者の皆様が自社商品をスポットで出す、そこでファンになってもらって県内外で交流し、将来的に秋田に遊びに来てもらう、というのも一つのあり方ですよね。また逆のパターンで、秋田でのツアーやワーケーションを企画して、首都圏から現地に来てもらって、地域の皆さんと直接関わることもありますよね。

小松さんたちが企画された秋田ツアーの様子


── 正に自分はそのようなものをイメージしていました(笑)

その他にも事業創出の分野でも取り組みがいくつかあって、例えば秋田の生産者と、首都圏の方々が一緒にチームを組んでオンラインで商品開発を行う、といったものまであるんですね。この領域に近いのが、創業支援を通じた関係人口作りなんです。


── ビジネスを生み出す手助けをすることで、地域と都市部の関わりを生み出す。

仰る通りです。秋田の起業家の方が海外・国内マーケットに進出することを手助け出来ると、関係人口は海外にも拡がるし、日本全国にいる状態がつくれますよね。それも一つの関係人口の増やし方なんです。


── 事業成長が関係人口に直結する。

実は、「ビジネスを通じて関係人口が生まれるの?」といった懐疑的なコメントを貰うことも何度かあったんですが、着実に芽が育ってきているんです。秋田銀行さんが良い取り組みをされていて、「あきぎん STARTUP Lab.コミュニティ」というオンラインのコミュニティが話題です。


── そちらはどのような場でしょうか?

秋田に軸足を置きつつ、起業やスタートアップに興味関心を持つ人が県内外を問わず、また秋田にゆかりがあるない関係なく、立場や職種関係を越えて日々情報交換しているんです。「○○のプロジェクトを立ち上げるに当たって、××な人を募集中!」というように、お互いの呼び掛けを通じて混じり合い、相互に挑戦したいことを応援し合える関係が強化されていっているんです。


── ただ、仲良くなろう、ではなくて、思い描いた未来の実現に向けて動く中で関係性が育まれているからこそ、そのコミュニティはとてもとても熱そうですね。

ご存じの方も多いかと思いますが、私の地元である秋田って、高齢化率が日本一、生産年齢人口としての地域の担い手もどんどん減っているんです。その大きな人口動態の流れを止めることは早々には出来ないけれど、少しでもその流れに抗う手段として、「創業支援を通じた関係人口の育成」があると自分は感じています。


── その流れを秋田から起こそうと小松さんは取り組んでいらっしゃるんですね。同じ東北地方である仙台でも活動をされていると伺っていましたが、それも同様の取り組みでしょうか?

創業支援の文脈で挑戦する人の後押しをしたい、というコンセプトは似ているんですが、仙台でやっている活動は少し違って、「仙台コーヒーハウス」という取り組みをしています。実はこれも創業を通じたコミュニティ作りの一つ。

小松さんがリーダーを務める仙台での創業を通じたコミュニティ作り


── 具体的にお聞かせ願えますか?

少し歴史の話になっちゃって恐縮なんですが、イギリスの産業革命時期に、貴族・政治家・商人・庶民といった立場が異なる人たちがごちゃまぜになって、コーヒーを飲みながら語り合う、という社交場があったんです。そんなごちゃまぜの場を仙台から再興できないかなと思っていて。


── 歴史の教科書で習った記憶が蘇りました(笑)

もちろん、おいしいコーヒーを出すカフェを開業したい訳ではなく、ある種のメタファーですが(笑)高校生も大学生もベテラン社会人も、さまざまな背景を持つ人々が集まるコミュニティこそイノベーションが起きる土壌になるんじゃないかと感じているんです。

イギリスのコーヒーハウスでも、こういう風したら生活しやすくなるよね。こんな制度があったらどうかな。あんな仕組みも面白いよね。なんて風に率直に意見を交わし合うことで、新しいものが生まれる対話の場でした。そういう場を創りたいと考え、代表理事の雅さん、顧問の常川さんとも一緒に動いています。


── 未来が生まれそうなイメージでわくわくします。そのコンセプトをどのようなアクションに落とし込まれる予定でしょうか?

かつてのコーヒーハウスも「場」を大事にしていたことから、やっぱり「リアル」を肝にして活動を続けていきたいなと思うんです。そしてその場には特に高校生や大学生といった若手が大人の派手に失敗する姿を見られたり、挑戦してる人が多くて「なんかはたらくって楽しそうだなぁ」と感じられるきっかけになればなと考えています。


── 教育機関の外で若手を集めるのは中々に至難そうですね。

実は、仙台コーヒーハウスの代表理事が、県内の学校で説明をさせていただく機会をもう作り始めていて、先生たちに価値を伝え始めているんです。そして趣旨に賛同してくださった先生から生徒たちへ情報を共有してもらい、そうすることで学生も集まりやすくなりつつありますし、学生部会も近々立ち上げ予定です。


── 新しいものを生み出すための対話の場所、というコンセプトは何から始めていけばいいか分からないモヤモヤしている学生たちに響きそうですし、先生たちの協力を得られれば安心ですね。

はい、先生たちの声を聞いていると、「アイデアをカタチにしたい。新しいことにチャレンジをしたい」という尖った学生たちは一定数いるけど、その想いを叶えられる場所が仙台には中々ないとのことなんです。その想いを叶える意味でも仙台コーヒーハウスは価値を出せるんじゃないかと思います。

想いを叶える一歩として開催した多世代タニモクワークショップの様子


── その場に無事に若手が集まった暁には、どんな対話を中心に進められる予定でしょうか?

まずは新しいものを生み出すための「失敗」と「成功」について語り合う場にしたいと思っています。大人たちも記録の遺せないような失敗を笑い話に変えて率直に喋れるような(笑)そんな自由な対話を通じて、学生たちも自分が挑戦したいことの「はじめの一歩」を踏み出す勇気を育んで貰えればなと。


── なるほど。仙台コーヒーハウスが手掛けられるものは創業支援の一歩手前、いうなればスタートアップエコシステムの入り口の取り組みなんですね。

そうなんです。例えば仙台コーヒーハウスで学生たちがビジネスに興味関心を持ち、そして大人たちと一緒にStartupWeekend(以下SW)を通じてアクションを重ね、次はSocial Imapct Accelerator(以下SIA)やTohoku Growth Accelerator(以下TGA)といった仙台市のアクセラレータープログラムへと繋がっていくと、挑戦する人たちの裾野が拡がって面白い流れが生まれると感じています。

アイデアがアイデアで終わらないように、未来に向かって繋がりが生まれるようにしたいですね。今年はSW仙台に参加された方がSIAに2名も採択されていたので、この流れが益々発展することが待ち遠しいです。


──ちなみに小松さんがエコシステム構築に心血を注いでいらっしゃるのは、どういった想いがあるのでしょうか?

やっぱり、娘の存在が大きいんです。娘が将来を生きる時に、希望が持てる世界になっていたらなって思うと、気付いたらこの取り組みを始めていました。もちろん娘が事業を興すとは限らないですが、何かに挑戦したいとか、仲間が欲しいとか、何か熱い想いを持った時に、その想いが消えない社会であって欲しいんです。

家族が大きくなった時に、想いが消えない社会に向けて


── 夢や目標が応援されて、挑戦することが当たり前の環境を東北に整えたいと考えられていらっしゃるんですね。そんな未来を小松さんが志されているということは、今の社会は不十分、と感じていらっしゃるのでしょうか?

これは私の直観的な感覚なんですが、今の社会は何かしら生き辛さを生み出す制約があると感じているんです。例えば秋田だと人口が少ないという制約があり、地域の担い手が減って屋根の雪下ろしさえままならない。


── 自分たちの当たり前の生活さえ成り立たなくなるような制約ですね。

はい、地域の担い手が半減してしまったらインフラさえも成り立ちづらくなってしまいますよね。もし仮に、誰かがこの困難を打破しようと立ち上がった時に、共感してくれる仲間が県内外から集まれば、諦めることなく困難を乗り越えられるイノベーションが起こせる可能性があると信じています。


── エコシステムを育てるとは、一人ぼっちで簡単に諦めてしまうことをなくす環境作り、ということですね。どうすればエコシステムは育っていくでしょうか?

私も模索中ではあるのですが、既に世の中にあるコミュニティ同士で共に手を取り合い、連携していくことが重要ではないでしょうか。例えば先程お伝えしたような、仙台コーヒーハウス→SW→SIAといった風に、何か新しい挑戦を志す人が階段を一歩ずつ上っていけるように、各コミュニティがお互いの動きを擦り合わせていく、そんなイメージです。けれどもこれは「言うは易し、行うは難し」で、コミュニティは内々で閉じる傾向にあるので、中々に難しいですが(笑)


── コミュニティはそもそも同質性を起点に人が集っている場所であるが故に、オープンにはなり辛いですよね(笑)

私が取り組んでいる組織開発の分野でも、やっぱり同じことが起きるんです。組織って集団内の力学がはたらき、外との関わりより、内部で完結させようとする力学がありがちですよね(笑)


── そんな人と人とが集まる場において必然ともいえる「中に閉じる」特性がある中で、どうやって連携は生み出せるでしょうか?

続きは下記よりお読みください。


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