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商品・サービス設計で最も大切な「顧客ベネフィット」を考えるコツ

どんな商品・サービスでも顧客の「ベネフィット」を設計することは基本である。「ベネフィット」とは「顧客がその商品・サービスを選ぶ理由となるような、顧客にとって嬉しいこと」ある。例えば、STARBUCKSであれば、「自分だけの時間を快適に過ごせる」や「他人からおしゃれに見られる」などがベネフィットである。

ベネフィットを設計するのは、ビジネスの基本であり、シンプルなので一見簡単そうなのだが、自分でやってみると案外難しい。この記事では、顧客の「ベネフィット」を考える際に、筆者が意識しているコツ・心構えのようなものを3つほど紹介する。

①ベネフィットの表現が「商品・サービスの記述」ではなく「顧客が感じること」になっているかを確かめる

「この商品の顧客ベネフィットは●●の特許技術があることです」と表現してしまうことは実によくある。しかし、その技術そのものがベネフィットなのではなく、その特許技術があることで「顧客が実現できること」「顧客が嬉しいこと」がベネフィットなのである。それは「他のどの商品よりも効果実感がある」かもしれないし、「とにかく安心して使用できる」なのかもしれないし、「特別感・ステータスを感じれる」かもしれない。ベネフィットを言葉にする際の必須条件は「顧客が感じたこと」が表現されているかどうかである。もし仮に思い付いたベネフィットが技術や特徴など、商品やサービスが主語になっているものだとしたら、それはベネフィットではない。「その技術があることが、どう顧客にとって嬉しいのか」を考えるのが大切である。

②「人が感じること」を100%言葉にしきることが難しいからこそ、言葉には徹底的にこだわる

これはイメージの話になるが、顧客が商品・サービスを通じて実際に感じたベネフィットの総量が100だとすると、このうち「言葉に落とせること」は頑張って60くらいではないかと思っている。例えば、自分はサッカー観戦が大好きで、3万円くらいの大金を出して、世界最高峰のヨーロッパリーグの試合を観戦したことがある。それは、一生忘れることない感動体験になったのだが、実際にここで感じた「ベネフィット」を言葉にしようとすると、これはなかなか難しい。もちろん、部分的には可能である。例えば、「ファンキーなサポーターの熱量に触れて興奮した」「ベテラン選手の気合い溢れるプレーをみて元気づけられた」「ビールとポテトが最高に美味しかった」等、その要素は表現することはできる。しかし、これらは、私がサッカー観戦で感じたベネフィットの総量を100のうち10もいかないのである。仮にもっとたくさんベネフィットを洗い出したとしても、せいぜい60くらいがマックスなのではないかと思っている(ちなみに、これを80や90まで表現できるのが小説家だと思っている)。つまり、顧客が感じてるベネフィットのうち、言葉にできるのはごく一部にすぎずないのである。このように、言葉の限界があるからこそ、言葉にはこだわるべきなのである。感じたことを言葉にするのは「頑張ってもマックス60」という前提があるのとないのでは、ベネフィットを表現する言葉に向き合う姿勢が大きく変わって来るはずである。

③顔の見える一人の生活や気持ちがどう変わるかを大袈裟ではなく現実的にイメージする

製品・サービスを使う前と後で、誰の何がどう変わるか、具体的にイメージすることができていないと、ベネフィットをうまく言葉にできない。例えば、化粧品やアパレル商品のベネフィットを検討していて「自分らしくいられる」というベネフィットを思い付いたとする。しかし、「自分らしくいられる」とは、具体的にはどういうことなのか。これをもう少し具体化できると良い。たとえば、美容液であれば「肌の色が前よりトーンアップしたことを友達に気づいてもらえて、自分の肌に自信を持てるようになった」というくらいまで、「商品によって何が変わったのか」をビジュアルで具体的な人間をイメージしながらイメージできるくらいまで考えておきたい。このイメージができないと、ふわっとした「社会を笑顔で溢れさせる」のような、「そんなことある?w」というベネフィットになってしまう。つまり、作り手側の「想い」と「理想」に溢れた自己満足的な表現にどうしても偏ってしまうのである。商品やサービスのビジョンやパーパスなど、社内の方向性を共有する目的であればもちろん問題ないが、そのベネフィットを基点に具体的な商品設計や顧客体験をつくるのであれば、現実的に顧客が嬉しいことを顧客の言葉で記述したい。その際に有効なのは「あの人だったらこんなベネフィット感じてくれるかな」の具体的な一人の顔をイメージすることである。「社会」など壮大な主語をもとに考えたふわっとしたベネフィットは、その主語をある一人の人にしてあげて、表現しなおすとうまくいくことが多い


以上である。ベネフィット設計は簡単にできそうなのだが、やってみると案外難しいため、考える上で意識しているポイントやコツをお伝えした。顧客のベネフィットを考える時の参考にしていただければ幸いである。

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