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7. 1日目、2日目

「ハイ、ミナサントウチャクシましたよ!ココがキョウのシュクハクバショです」

かれこれ登山道入り口を出てから5時間は経過しただろうか。僕らは標高2800m地点にある、一日目の宿泊場所に到着した。到着するともうすでにたくさんの色鮮やかなテントが敷かれており、その隣では、多くの登山者が様々なスタイルで各自休憩をとっていた。銀色に輝いたステンレスマグに注がれた熱々の紅茶を飲む者もいれば、微量ながら焚き火をする者、そしてわずかに見えるキリマンジャロを背景に、愛を語る若者など。

このときほど、「長期登山」をしているいう実感が湧いたことはないだろう。それほどまでに、僕たちは今登山をしている!まさにそう思わせる光景であった。そんな中、愛もロマンスの欠片もない僕とオオハシは、ただひたすらにドスケベ変態である我らが隊長リチャードの猥談を聞いては苦笑いし、悲しみにくれるのであった。

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「ハーイ、ゴハンデスヨ!ミナサーン、カモンカモン

単調な道のりではあったが、慣れない気候や道のりに加え、リチャードの猥談を聞かされた僕らは疲れていたのだろう。彼の地震警報よりも悍ましい声がなかったら、一生床についてたのではないかといういうくらい熟睡していた。
もう少し眠らせて欲しいと心では思うのだが、身体は心と違って素直である。テントの中いっぱいに、2人のお腹から鳴る「グー」という音が充満した時点で、僕ら2人は外に出ることを決めた。

さて、登山中の食事についてだが、みなさんは僕らが何を食べながらこの5泊6日の登山を乗り切ったか想像できるだろうか?アルファ米のような乾燥させた主食を水に戻して、それを少しばかり調理したものであったり、ビスケットのような携帯用食事を食べていたのではないかと大方の人が思うはずである。

僕も登山前はそう思っていたし、なによりアフリカの主食である「ウガリ」という食べ物があるのだが、それが毎日出されるのではないかと恐怖に怯えていた。なぜ怯えていたかは、皆さん一度ウガリをご賞味あれば分かるはず。アフリカ人の皆さん、こんな僕のことを許してくださいな。父と子と精霊の皆によって、アーメン。

しかしありがたい事に、僕の予想は大方に外れてくれた。なんと僕らのパーティーの中にコックさんが常駐してくれ、毎日朝と夜には山の中ながら熱々の食事が用意されたのである。しかも揚げ物まで出してくれるのだから、疲れ切った僕らの身体にはたまらない。

ただ、メニューレパートリーが少ないという点だけは、ほんの少しだけガッカリさせられる。別府市民に愛されてやまない餃子屋さん、「湖月」も目を丸くするはずだ。

そうは言っても一度食べ始めたら止まらないのが、卑しい僕達なのである。オオハシに関して言えば、我が隊長リチャードの分の食事を勝手に食べると、挙句の果てには、副隊長レーガンの食事まで平げるという離れ業をしてみせてくれた。当然食事がない事に2人は不思議がり、僕らに詰め寄ってきたのだが、高山病で具合が悪いというありもしない嘘を平気でつくことによって、僕ら2人は重々しい空気から逃れることに成功したのであった。皆さん、嘘はくれぐれもつかないようにしてくださいね。百害あって一利なしですよ。

こんな感じで2日目も過ごすことになった我々は、特段問題を抱えることなく順調に3日目、4日目に突入することとなった。

次回「3日目、4日目」

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