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2. キリマンジャロ先輩

遡ること約今から5年前。今では人目を憚らず、自然があればどこでも青姦をするヤリサーと化した我がサークルにも、全盛の時代があった。

全盛の時代とは?
とにかくサークル全体のメンバーが、山登りへ行くことに対し高いモチベーションがあり、たとえ夜中に電話をかけようが、山に行くと言えば3秒で山登りへ行く支度をできますというような輩が何人もいたという時代だ。ヤリサーという言葉が微塵も見当たらない。

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そんな時代を支えていたのは3人の先輩方。1人は完全な自由人タイプだが、好きなことには熱中するようなTHE天才型タイプの人間「N」。もう1人は華はないが、誰よりも真面目で誰よりも働き者のである、二宮金次郎タイプの人間「F」。そして最後の1人は、とにかく癖が強く面倒くさいが、後輩に対し深い愛情を注いでくれるようなダウンタウン浜田のようなタイプの人間「L」である。

「N」「F」「L」この3人は、サークルの中でもとにかく山に登ることが大好きで、常に全国を転々としては山に登り、色んな話を聞かせてくれたものであった。

そんな3人を僕らは心から尊敬していた。そして、僕含めその当時サークルに在籍していたメンバーは、とにかくこの3人のようになり、次入ってくる後輩たちにも山の素晴らしさを教えてあげたい。そんな思いを持ちながら、山登りに励んでいたた。

しかし悲しきかな、大学生活には別れがつきもの。僕らがこれからもっと山について話を聞いていきたいと思っていた矢先、先輩「N」「F」が卒業し、サークルに残された先輩は「L」だけとなってしまった。

しかも、「L」も自分の生活費+就職活動費を賄う必要があるという理由からサークルに来る時間や日が限られるようになり、我々これからサークルを牽引していくであろう後輩との距離が徐々に離れていくようになった。

3人の先輩方がサークル離れてから早1年が経とうとしていた。
先輩方が抜けた穴をなんとかしようと、当時部長であった僕と副部長の相棒大橋と共に、お互いアイディアを出し合いながらサークルを細々と続けていた。

その甲斐あってか、先輩が抜けたあと盛り下がっていたサークルに新入部員が数名入り、全盛期ほどではないが、月に数回山登りに行ってはメンバー全員で山を満喫し、酒を飲んでは山について話し合う。僕らが昔憧れていた先輩後輩関係を構築させることが多少たりともできるようになってきていた。

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そんなある日のことである。僕がつまらない授業を携帯をいじりながらダラダラと聴いていたとき、相棒大橋から1件のラインが届いた。またどうせくだらない内容のラインだろうと確認してみると、

「TKR、Lさんキリマンジャロ登ったらしいぞ?!」

キリマンジャロだと、、、?!
その当時、僕はキリマンジャロがどんな山なのか詳しく知ってはいなかった。ただ世界的に有名な山であるということだけは知っていたためすぐさまそれについて調べてみると、標高5895mであり、独立峰としては世界最高峰の山であるという驚愕の内容がそこには書かれていた。

あまりに驚いた僕は居ても立っても居られず、授業を抜け出した。そして深呼吸をし空を見上げると、いつも登っている「由布岳」が僕の目に入ってきた。そのとき、キリマンジャロの情報を目にしたあとだったからか、なんだかいつも由布岳に登っては満足していた自分に恥ずかしくなり、顔が赤く火照っていくのを感じた。

「キッ、キリマンジャロかー、、」

次回 「約束」に続く



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