一日平均 五十六名!

我が国では、一日平均五十六名が自殺している。

「感染者増えたね!」というニュースが相次ぐが、ウイルスに感染した死亡者より自殺者の方が圧倒的に多い。

さて、僕も令和二年七月五日現在。
相変わらず上がったり下がったりの毎日を繰り返している。

「ライブができないせいじゃない?」と言われたことがある。自分では分からないが可能性はある。日高屋で狂ったときもライブができていなかった。

そうは言ってもライブはできるようにならない。

『これからの時代は配信ライブ!』と言われても頭が悪いのか同質には考えられない。三密あってのロックバンドなのだと、環境を失って痛感している。

「Withコロナ時代に適応できない企業、業態、人間は淘汰されていく!だがこれもまた時代の流れ!古きものは淘汰されるべきだ!」という賢者たちの物言いがあるが、これで言うと僕は完全に淘汰されるサイドの昭和生まれバンドマンなのだろう。

仲間たち、ライブハウスたちも次々淘汰されている。種の摂理なのか増えすぎた個はちゃんと削られて減るのだ。

幸か不幸かまだ生きているが、「削られるべき個」としては肩身が狭い。
体調がおかしくなったのは、無意識にでも未来を担う個たちへの遠慮からだろうか。もしそうなら、溜飲を下げてくれたらと願うばかりである。

それにしてもこの気分の上がり下がりだが、ほとほと困っている。

高速を運転中、カーブに突っ込もうかという冗談が脳裏に浮かぶ日と、「生きるって最高!」という日が交互、ランダムにやってくる。南アフリカランドの為替相場か!というぐらいには上下するから不気味だ。

以前よりマシにはなっているのだが、絶好調の翌日に動きが悪くなっていると少々落ち込む。

下落時は悲しくてたまらないし、モノを食べても砂を噛んでいるようで、味を感じない。
高騰すると睡眠不要なぐらい覚醒して、「早く関わるひと全員を幸せにしないと!」と本気で思ったりする。

少々骨が折れるがこれを治す。とにかく気合と根性、あとは医学の力だ。

ラモトリギン、クエチアピン、ジアゼパムの三種の神器たる安定剤を毎日服用する。そこに眠剤。

脳神経をガッツリ漬け込んでいることでとりあえずの安心感はある。医学は偉大だ。

自殺念慮とは違う話だが、むかしから酒に酔って高いとこに登ると、やはり冗談で飛び降りたくなってしまう。

「死の平等性に触れたくなる」というような高尚性は無い。「ええい!貧富の差がなんぼのもんじゃい!死んだらみんな一緒やんけ!」というギャグだ。

酔っていると笑いの融点である『笑点』が下がる。関西ではこれを「ゲラ化」と言う。

「死亡!」という現象に独りでゲラゲラ笑ってしまうのだ。ギャグの方向性はサイバイマンに殺られたヤムチャのパロディに近い。

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だが「酔いの果て、夜空めがけて、飛んでいく」は馬鹿のやる行為だし、辞世の句としてもイマイチだ。

「自殺者の四割は飲酒状態だった」というデータがある。

「思いつめて死んじゃう・・・」という方もいるだろうが、ほとんどの自殺者は酒の勢いで死んでいるのだ。

かつての武士や侍の中には、酔った際のイキリで切腹していたのもいるそうだ。
古今東西、「男は馬鹿」と分かる良質な逸話だ。

僕もバンドマンなのでカートコバーンの「徐々に色褪せるなら、燃え尽きたい」に憧れてしまうのだが、ショットガンも無いし、気を取り直して武士や侍の馬鹿話を思い出すようにしている。

武士を想えば死ぬよりも「スベる恐怖」に全身が総毛立つ。

頭が冷えると、「飛ぶと道路の掃除をするひとに面倒かけるな」とマトモな考えに不時着する。

死ぬのはひとの勝手だが、勝手なことをする以上、せめて迷惑を最小限にしておきたいものだ。

「切腹」を想像してもみるが、やはり酔っ払いに目の前で腹を切られたら迷惑千万だ。
和民や鳥貴族だったらウケるスベる以前に営業妨害、業務停止、清掃、お払い、立ち退きが気になって仕方ない。

こうなると「誰にも悪影響を与えない自殺」が無いと気付く。

「迷惑をかけない自殺」や「他人の日々に暗い影を落とさない自殺」というものはこの世に存在しない。

「ま、そんじゃやめとこっか」となるのが、とりあえず一番平和である。

「どうせいつかは死ぬし、誰しも生まれたときよりは死に近付いている。ならば自分から死に近付く必要もない」と考えるのが健常的だ。

もちろんこんな風に行動できない。やはり逝っちまうやつは逝っちまうものだ。

すべてが「そんじゃやめとこっか」となるならば、今日も五十六人も自殺していないのだ。平均値で言えばあしたも五十六人が死ぬ。

自殺者は月曜と八月末に増加するので、土日で五十六人という数字は出ないだろう。

ただ絶対に0人ではない。

「今日は誰も自殺しなかったね!」なんて日は一日たりともない。その逝ったひともつい十日前まではゲラゲラ笑っていたりするものだ。

「明日は我が身」という心構えで油断しないことだ。

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