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誰かに聴いてもらいたいと思った

久しぶりにニュースを解禁。

CDが3月17日流通版としてリリースされる。「無料で配っていたものが花開く!」ということもあるらしい。

収録内容はリテイク、新曲、ふざけなど。

商品をアウトプットして、店舗に並べていくという行為はいつぶりだろう。
調べたら三年と六ヶ月ぶりだった。

オフィシャルに下記のコメントを載せた。

僕はQOOLANDというバンドを八年ほどやっていました。ツキがあったせいで大きなフェスやメジャーの舞台も踏ませて頂きましたが、その大海には本物の天才、怪物の類いがゴロゴロいました。
井の中の蛙であった僕は、井戸から顔を出した瞬間に秒殺され、バッチリ解散しました。ドロドロの心労からスムーズに病気になり、再起不能と諦めていたのですが、周囲の肩を借りて、有難いことにjuJoeという名でやらせて頂けることになりました。

できた曲を誰かに聴いてほしくて、CDを無料配布してみました。一万枚ほど配った時、発売のお話をパワハラ気味に頂きました。ハラスメントとは言え、こんなに嬉しいことはありません。

しかし「音楽を続ける」というのは、中々に重たい荷物です。昔の自分を聴いていた人にとって、新しい自分の歌が、時に邪魔になることもあるからです。好きな漫画家の新作が駄作だと、「こんなもん書くならアレの『2』書いてくれよ!」という気になりませんか。僕はなります。

「新しいものを作る」という行為は、「過去の自分」が好きだった人への裏切りの要素を含んでいます。でもそれは一度好きになってもらったからこそ起こりうるのです。

だから「中学の時好きでした」とか「この曲だけ知ってる」とか「最近知った」など『褒め』にはすべて頭を垂れたいのです。「新しい俺を・・・・・・最新の俺だけを見てくれよ・・・・・・!」などとは一切思いません。

それなりに長く続けてきたからこそ、時系列のどこか一瞬だけ知っていてくれていた方も少なからずいます。

「対バンで見かけた」「ラジオで10秒だけ聴いた」「彼女が聴いてたのが聴こえた」そんなものでいいのです。そのとき、「悪くないじゃん」が貰えていたなら最高です。

浦沢先生の『二十世紀少年』に書いていました。ロックスターは三十路手前で、お迎えが来るそうです。僕はロックスターじゃなかったようです。

「27歳で死ぬつもりだったのになぁ」と現実のむごさにため息も出ます。そんなダサさに週一で死にたくもなります。
それでも「まだ新しい歌で喜んでもらえるかも」という淡い期待が、自室の大気に流れている。これもまた事実です。その空気を吸って吐いて、週六の「ようし」という日々が、アルコール依存の外来に通いながら続いています。

クリエイターはガッカリされる勇気もなく、モノを作ってはいけないと思っています。新しい歌を聴いてもらいたいです。でもそれは昔の歌だって同じです。
本作『誰かに聴いてもらいたいと思った』は現在にも過去にもかかっている言葉です。どこかに「悪くないじゃん」の切れ端があれば、作家としてこれに勝る喜びはありません。

僕はQOOLANDというバンドをやっていた、juJoeというバンドをやっている平井拓郎という人間です。

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↑このジャケットの男がリリースの犯人である。
グイグイやられているうちに面白くなってしまった。それにしても爆発的な進め方だった。

ちなみにボツになったジャケ案がこれだ↓

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ボーカルにしか思えないので辞めた。アークティックモンキーズの1stみたいにしたかっただけだった。

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もう三十路を超えているのに、十五年以上パクリとモチーフとインスパイアの狭間でもがいている。

購入特典がある。

この機会にQOOLANDを知ってもらえるひと、思い出してもらえるひと、もう一度聴き直してくれるひとがいればと思って、僕の会社に権利がある楽曲をまとめた。

権利が思っているより返ってきていた。そもそも盤になっていない曲、未発表テイクもブチ込んだ。
いつ死ぬか分からないので、吐き出したかった。

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juJoeを楽しくやっているのは間違いないが、編集しているうちに、聴いているうちに「いいバンドだな」「またいつか四人で演奏できたらな」と思ったりした。そんなこと言っているうちに、誰か一人ポックリ死んでしまったりするのが人生だけど。

「失ったものばかり見るより手に入れたものを見ろ」とは言うけれど、僕は大切なものを失くしたことをいつまでも引きずっていきたいし、その話をしていきたい。そういう感情と無縁の人生もあるだろうけど、少し味気なくないだろうか。

『誰かに聴いてもらいたいと思った』というタイトルを名付けたが、それは今も昔もこれからのことも全部引っくるめてだ。

僕は自分が生んだ誇らしいものを、誰かに聴いてほしかっただけなのかもしれない。十四歳の頃からずーっと。

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