"整理整頓しない"ことの意外なメリット

今回は、整理整頓のお話です。「整理整頓は重要だ」とよく聞くと思いますが、なぜ重要なのでしょうか?

少し進化人類学の話になりますが、実は、現代人の遺伝子は狩猟採集民時代からほとんど変わっていません。
人類は当時、ひとつのことに集中してしまうと後ろから来る肉食獣に襲われてしまう危険があるため、周りに注意を払うことが生き残るために必要な能力となっていました。
現代人も遺伝子は同じなのでこの周りに注意を払う能力をそのまま継承していて、自分の周りに何かがあると、注意がそれてしまうようにできているのです。

机の上に今行っている作業と関係ない書類が見えると、脳は勝手に考え出します。
「あれ、これ何の書類だっけ?えーっと…昨日の打合せの書類か。これは明日までにやればいいからほっといて…」。
これだけで、数秒の時間損失があります。でも、問題はこの数秒の損失だけではありません。
実は、このときそれた注意が元に戻るまでには(つまり集中状態に戻るまでには)、25分以上かかるというデータがあるのです。
目の前の仕事に集中できていなければ、仕事の質も低下し、仕事を終わらせる時間も必然的に長くなってしまいます。
つまり、整理整頓が重要だというのは、"目の前の仕事に集中できる環境を作るため"に重要、ということなのです。

…と、ここまでは、よくある整頓整頓のメリットの話です。
今回は逆に整理整頓をしないことのメリットについてもお話します。

上に挙げたのは、仕事を早く・正確にこなすための、いわゆる"集中"状態。
この逆で、注意が散漫している"拡散"状態というものもあります。
注意散漫と聞くと聞こえが悪いかもしれませんが、この"拡散"状態というのは、アイデアを思いつく工程の一つとしてとても重要な状態で、クリエイティビティが高くなる状態なのです。
例えば、注意欠如・多動症、いわゆるADHDの人たちを対象にしたミシガン大学の研究があります。
ADHDと診断された男女26人に対して変わったクリエイティブなフルーツの絵を描いてくださいとお願いしたところ、普通の人が描いたフルーツの絵と比べ、明らかにクリエイティビティが高かった、という結果が出ています。
周りのいろいろなことに注意が向くことは、さまざまな事柄を掛け合わせて考えることができるため、クリエイティビティが高まるのです。

そしてこのクリエイティビティ(創造力)は、問題解決のためにも重要な能力なんです。
変化の早い現代では、予期せぬ事態はいくらでも起こりえます。
未知の出来事に出会ったときにこのクリエイティビティを働かせて物事を解決していくことは、現代人のわたしたちには必須のスキルになっているのです。
もし答えがない課題に取り組む必要があるときは、いつもとは逆に机の上にいろいろな書類を置いて考えてみることが…(あるいはいつものぐちゃぐちゃな机のままの方が…)問題解決につながる可能性が高まる、ということですね笑。

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