takumanのなんでも感想文part4

こんにちは、takumanです。
前回に引き続き、part4では最近読んで面白かったライトノベルについての感想を書いていこうと思います。

タイトルは、「顔さえよければいい教室-1.詩歌デクレッシェンド-」です。GA文庫の「友達の妹が俺にだけウザい」や電撃文庫の「義妹生活」でおなじみの三河ごーすと先生による新作ライトノベルで、つい先日第2巻が発売されました。私がこの作品を知ったのは、本当に偶然でしたが、読んでよかったと思った逸作なので是非皆さんにも読んでもらいたいと思い、紹介することにしました。

「顔さえよければいい教室-1.詩歌デクレッシェンド」とは

この作品を簡単に説明すると、動画投稿サービス「WAYTUBE」を使った、実践的な授業を行って将来のスターを排出するための芸術学校「私立繚蘭高校」を舞台に、兄妹である池袋詩歌と楽斗が天才たちと青春と闘争を繰り広げる物語です。大仰にまとめましたが、この作品では一介の生徒でも実際にその道の世界で成功している人間もいたります。そんな天才たちと共に学校生活を送ることで、根暗兄妹の生活が一変していきます。
妹の詩歌は、WAYTUBEではアングラながらも知名度の高い、歌ってみたシンガー「シーカー」として活動していて、兄妹2人の自堕落な生活は詩歌の収入で賄っています。対する兄の楽斗ですが、妹の生活のケアや自分たちの穏やかな生活を守る際には本気ですが、その他面倒ごとは全て他人任せにしているダメな人間です。兄妹の性格は基本的に積極的でない部分や、人が苦手なところなど似ている点がありつつも、「天才」と「凡人」であり、能力的にはかけ離れています。作品としては良いバランスで描かれていますと思います。
そんな二人はある日、天王洲ケイと名乗る男にスカウトされ、成績に応じた生活費や授業料の免除と引き換えに繚蘭高校に入学をすることになります。
詩歌には、彼女を天才たらしめる「声の色が見える」才能があり、その影響で中学時代に苦い経験をしたことから引きこもり生活を送っていたわけですが、この学校に入学してはじめはいやな絡まれ方をされたりとうんざりしていましたが、本物の天才の色を見て今後の生活が楽しみになっていきます。

「顔」の価値観

作品のタイトルにもなっている「顔」ですが、これは外見だけを差しているのではなく、それぞれの人物のいろんな角度から見える「顔」を描いています。「芸能の世界での結果に外見は伴わない。だからこそ詩歌たちが挑戦する世界として設定した」とは作者のコメントですが、詩歌たちも決して外見が悪いわけではなく、作品の中での見え方の問題だと思います。今まで誰にも明かしてこなかったバーチャルシンガーとしての顔が、表の舞台に立ったときにどこまで通用するのか。確かに、皆さんの周りにも、歌が上手な人やダンスがうまい人、スポーツに秀でた人など、いろんな特技を持つ人がいると思いますが、そういった才能というのは、表に出てはじめて注目されます。裏を返すと、どれだけ高みを目指そうと自分の世界の中では誰からも評価されないということです。表現者は、それだけハードルが高く常に周囲の期待に応えていかなければならない難しさがありますが、その先にあるものは、そこに至った人にしか分からないと思います。だからこそ挑戦する価値がある。この作品を読んで、皆さんも挑戦し続けてほしいと思いました。

裏方の大切さ

一方、兄の楽斗は、面倒臭がりで自堕落な生活をしてはいますが、それだけではありません。普段は歌ってみたとして他の人の曲を歌うことが多い詩歌ですが、作曲する際には心の奥の善悪の感情や記憶と向き合うことで、情緒不安定になるほど身を削らねばならなくなります。こうした状況を彼は常々サポートしています。また、詩歌にとって害悪になると判断した相手には、時にはゲーム仲間の知り合いに犯罪まがいのハッキングを依頼したり、時には独学で身に着けた対集団用格闘術「システマ」によって脅威を排除していたりと、結構きわどいことをしています。が、これもセンシティブな妹を守るため。さすがに行き過ぎているとは思いましたが、これも一種の才能であるならば、独学で格闘技を取得してしまう辺り、楽斗も天才の一人なのではないでしょうか。
何はともあれ、人間は一人で生きられるはずもなく、何かをするには、誰かの助けが必要ですから、表舞台で輝いている人だけが人生の成功者とは言えないと私は思います。誰の目からでも見えるその成功は、誰の目にも見えない努力と支えによって成り立っていることを改めて感じることができました。

作品の感想

主人公の兄妹が暗い性格な分、対照的にその周りは明るめな性格の登場人物が多く、要素に対しての「対比」がとてもうまく表現されていると思いました。内容もまさに現代の若者に近い感覚で描かれているような気がしていて、将来的にこういった形態の学校ができてもおかしくありません。もしかしたら既に存在しているのかもしれませんが。YouTubeなどの配信サービスは、主にその収益は広告元やサービス元から支払われますが、直接収入を得るのではないにしろ、学生であれば芸能分野での功績で学費免除してくれる学校はとても魅力的だと思います。
あくまで私個人の意見ですが、クリエイターとして成長するには周囲の環境というのが大きく左右すると思っています。近くに競い合える相手がいればその人に影響されていきますが、逆に自分がしっかりしていても、周囲のやる気がなければ、せっかくの成長のチャンスを失ってしまいますよね。そうした未来の天才を作ってくためにも、やはりその活動を評価する人がいるというのはとても大切なことです。世の中にはいろんな人がいますから、気になったことがいれば、どんどんその人に対して発信していくのが大切だと思いました。

おわりに

今回はここまでとなります。
紹介パートでは、物語の紹介は少なめに、あえて登場人物の背景について書いていきました。こうして登場人物について知った上で、彼らがどういう経験をしていくのかを自分の目で確かめてもらうのがとても良い楽しみ方だと思ったからです。気になった方は、この機会に是非読んでみてください。

次回も乞うご期待ください。それでは。


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