癌治療と新型コロナウイルス感染症COVID-19時代、ACE2-lowering antineoplasticsの処方の重要性

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最近公表された臨床研究では、ACE2の発現を低下させる可能性のある抗腫瘍薬を投与された患者は、他の抗腫瘍薬治療を受けた患者でのSARS-CoV-2陽性率12.9%と比較して、統計的に有意に低下したSARS-CoV-2陽性率7.0%を示したことが示されている。つまり、他の抗腫瘍薬と比較して、ACE2の発現を低下させる可能性のある抗腫瘍薬を投与された患者は、SARS-CoV-2陽性率が低いことが明らかとされた。

mTOR / PI3K阻害剤や代謝拮抗剤など、ACE2を低下させる可能性のある抗腫瘍薬は、臨床的な抗SARS-CoV-2感染率を低下させる可能性があります。

癌の治療は、各癌種に対する診療ガイドラインに従って、ファーストライン治療法、セカンドライン治療法、サードラインの治療法によって行われる。したがって、各癌種の進行状況や患者さん既往歴によって、適切な抗腫瘍剤が処方される。これまで実臨床において、ACE2-lowering antineoplasticsが考慮されながら、各癌種に対する抗腫瘍剤は、選択されることはなかった。

現在、世界中で、癌治療で、癌ゲノム検査による個別化医療が行われている。日本においても、2019年6月1日に、癌ゲノムパネル検査(NCC oncopanel, FoundationOne CDx)が保険収載された。そのため、日本において、2019年末から、癌ゲノム検査による個別化医療が行われている。

日本の国立大学病院において、2020年1月から2021年7月まで、癌患者約850症例に対する癌ゲノム検査による個別化医療が行われている。ACE2-lowering antineoplastics including mTOR/PI3K inhibitors and antimetabolites (i.e., everolimus, temsirolimus, alpelisib, decitabine, gemcitabine, cabazitaxel, dasatinib, crizotinib)が、癌患者65人へ推奨または提案された。

これまでの臨床試験の結果から、健常者と比較して、癌患者においてCOVID-19mRNAワクチンの2回接種によって誘導される抗SARS-CoV-2抗体価が低いことが報告されている。今後、実臨床で、癌患者に対して複数の抗腫瘍剤の処方の選択が可能な場合、抗SARS-CoV-2を考慮して、ACE2-lowering antineoplasticsが優先的に処方されることが重要かもしれない。

がん医療専門ドクター/癌ゲノム医療/新興感染症  JAMA Oncology Published on May 10, 2021. by 京都@takuma H


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