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112名の社員に手書きでメッセージを渡したインナーブランディングの話


はじめに

スリーシェイクの吉田です。
今回は、メッセージカードを使ったインナーブランディングの取り組みについて話します。

企画のきっかけ

スリーシェイクはSREやセキュリティ、データ連携、HRエージェントなどテックドリブンな事業を運営している企業ですが、実はブランディングチームが存在します。
テックカンパニーだからといって、技術以外のクリエイティブやカルチャーや認知形成もおざなりにしない!ということで22年冬に立ち上がりました。
(またこの話は別の機会に)

そんな中、ブランディングチームでは、私と新旧メンバーとの距離感の違いが課題になっていました。

つまり100人を超えた段階で、物理的に創業者とメンバー間でコミュニケーションの量がぐっと減りました。その結果、創業者自身が考えている会社の方向性(ミッション・ビジョン・バリュー)や価値観(クレド)、メンバーへの想いが伝わりきらず、腹落ちしない状態、形骸化してしまうのではないか?という懸念がありました。パーパス経営と言えば格好良いワードですが、いくら言語化してコミュニティに投下しても、コミュニティとの関係性が一定レベルないと、そもそも意味ないと思っていたので、関係性向上施策がブランディングチームの課題でした。

とはいえ、じゃあ100人超えるメンバーと日々1 on 1 やっていくか…でいうと、非現実的です。(過去、50人時代にやって物理的限界を感じました…)
さあ困った…

そして、23年11月にブランディングチームと私で様々な議論をしている中で、「吉田さんが一人一人に手書きのメッセージを忘年会で渡せばいいんじゃない?」というフラッシュアイデアが飛んできました。

「まさか100人に手書きって冗談でしょう…」と一瞬怯みましたが、メンバー全員に自分の言葉で手書きメッセージを渡すというのは、デジタルの世界にどっぷり浸かった我々にとってはとても新鮮で、インパクトもあるしいいんじゃないかなと思ったので、企画化しました。

ちなみに… 数日後に、「よくよく考えたら100人に手書きとか尋常じゃないし、忘年会まで1ヶ月しかないし、どうしよう…」ということで、企画自体はトップダウンで決めず、マネージャー会議での最終判断に委ねました。

個人的にはここで、「1人でやるのは無理だから分担しましょう」とか「そもそも実現性はあるのか」というような指摘で、企画倒れになるのではないかという淡い期待が20%ぐらいありました(笑)
しかし議題にあげて5秒で「やりましょう」「吉田さんやってください、以上」で満場一致拍手で決議されました。

こうして年末に向けた大プロジェクトがスタートしました。

準備の舞台裏

テンプレート化できない112人分のメッセージ

本格的にプロジェクトをスタートして、まず決めたのは「どういう形で渡すか」という点です。「渡したときだけではなく、困ったときやふとしたときに見返せるようなポータブルな形にしたい」というブランディングチームの提案から、財布に収まるカードサイズにすることになりました。

当初は20文字程度、「XXXさん、いつも頑張っててありがとう。これからもよろしくね」ぐらいの粒度で考えていましたが、実はカードサイズでも約120文字入ることが判明し、この時点でテンプレート化して楽することを諦めました。残り時間は実質2週間しかありません。

メンバーの顔が見えてきた下書き

休日を使って、スプレッドシートで下書きを書き始めました。
せっかく全員分個別のメッセージを書くなら、改めてみんなのことを知った上でメッセージを考えたいなと思ったので、まずは全員の目標や評価、NotionやSlack、GitHubのPull&Requestの中身やコメントなどを見返して、普段の仕事ぶりやアウトプットを調査しました。ここが最も時間がかかったところで、丸1日必要でした。
(もちろん上長や同僚から情報を引き出す選択肢もありましたが、今回は忘年会のトップシークレット企画だったので、誰にも知られないようにこの形になりました)

結構大変でしたが、調査自体はかなり楽しかったですね。
普段、マネージャーの報告からメンバーのイメージ像が出来上がっていました。しかし自分の目でメンバーのリアルなアウトプットを見ると多面的な像が浮かんできます。

調査が終わると、メンバーの顔と役割、おそらく今抱えているだろう課題感と今後活躍してほしいイメージ像が一致し、ここから個別のメッセージを作成するのは意外にも勢いよく進められました。(1人、15分ぐらいのペースで1.5日必要でした)

伝えたかったのは前向きなメッセージ

私はポジティブなメッセージでフィードバックをする性分です、裏を返すと叱咤激励が非常に苦手です。(日々の行動もそうです)

今回もその流儀は崩さず、あくまで見返したときにちょっと勇気が湧いて前向きな気持になるようなニュアンスで統一した点と、私自身が本音で伝えたい中身にする点(伝えたいことが頭に沸くまで、その方のことを調べる)、この2点を意識しました。

文字を書く時間は、その人のために没入する時間

今回は、直接カードにペンを入れるのではなく、別紙に書いたものをスキャンしてプラスティック材に印刷する形式にしました。こうすることで、擦れても文字が消えない(文字移りしない)という意図がありました。

0.5mm厚の透明PET板を採用

A4の用紙を200枚分、プロジェクトメンバーから渡され、「吉田さん、112人分だけど200枚あるから頑張ってね」と言われたときはこんなに失敗するのかなという不安でいっぱいでした。
(紙の束が100万円札のようになっていました)

清書の束

いざ書き始めると、まず漢字が書けなかった。
デジタルな世界にずっと身をおいてて、文字を書くことはこんなに難しいのかと感じるとともに、書き終えると一種の爽快感を感じました。

実際にペンをとり、頭で内容を浮かべながらしたためていく時間は、その人のことだけのことを考えている、向き合っている瞬間でした。

そして50人分ぐらい一気に書いたところで、流石に精神的に山がきました。手も若干痛いです。

ここで気分転換に京王デパートに散歩にでかけ、文具売り場に立ち寄ると、LAMYのコーナーがありました。「昔、LAMY使ったけど、結構かすれちゃうんだよなあ」と見てたときに、ローラーボール型を発見しました(いわゆる、ジェル型のボールペン)。試し書きすると驚くほど滑らかな書き心地だったので、即購入して家に戻ります。

その後は順調に進み、最終的に休日4日分で作業完了しました。
112名分ですが、意外と短期間です。

実物完成から配布当日のこと


実際のメッセージカード


実物を初めて見て、期待以上のクオリティでちょっとびっくりしました。
配布時は、ミニ封筒に入れて忘年会の受付時に、「今年もお疲れ様でした」と声をかけながら一人一人手渡ししました。

その場での反響を期待していましたが、そもそも今回の企画がシークレットだったので、みなさん封筒の中身がなんだかわからなく、キョトンとしていたのが印象的です。忘年会が進行しても開封してない方も多く、「ちょっとエモすぎて暑苦しかったかな」と焦りました。

しかし帰り際に何人かに「これ本当に吉田さんが書いたんですか?ChatGPTが書いてませんよね?」と声をかけられて「全部ちゃんと書いたよ!」と談笑でき、不安は杞憂に終わりました。(実際にChatGPTは一切使ってません)

後日起こった社内の変化

忘年会では反応が薄めでしたが、変化が起こったのは数日後からでした。

打ち合わせや、オフィスで顔を合わせたメンバーからさり気なく、丁寧にお礼を頂くことが増えました。こういったアナログ施策は瞬間風速的な反響を期待するのではなく、時間をかけて見ていく必要性を実感しました。

また企画を通じて、全く話をしないメンバーと会話のきっかけになりました。同じ仲間としての繋がり、関係値が少し深まったのかなと思います。

メッセージカードは1度は試してもらいたい企画

会社が成長すると、経営理念や方針を明文化して浸透させるのは難易度が高まります。特に経営サイドとメンバー間との関係値の深さが私は大事だと思います。そこがない状態で言語化された理念や方針を浸透させても、形骸化するケースのほうが多いのではないでしょうか。

そういう意味で、メッセージカード企画はインナーブランディング施策として効果的と感じましたので、ぜひ皆さんご検討頂ければです。

*もちろん100名程度がやりきる限度の規模感だと思います

会社へのメッセージ

ブランディングチームでもnoteを書きましたので、よければこちらもご参考にしてくださいませ!

終わりに


今後もスリーシェイクは組織課題に真正面から一つ一つ取り組んでいきます。会社のカルチャーや事業に共感してくださる方がいましたら、私やスリーシェイクのメンバーにお気軽にお声がけください!

そして最後に、いつもので恐縮ですが。仲間も大募集です!