🧸恩師(鬼軍曹)からの１０年越しの愛情

こんにちは田熊です。

私は中学生時代バスケ部に所属していました。

【登場人物】

・キャプテンO君：彼はミニバス時代からキャプテンをやっていたイケメン

・運動神経皆無のＩ君：退部の意思を伝えられず存続

・足を怪我しているM君：彼はマネージャー

・私

【小学生ミニバス時代】

私が小学５年生の時にミニバスケットボールチーム、略してミニバスが出来た。

発足から２年の間にミニバスの大会にも出場したが、ミニバス時代の勝利数は１回…本当に勝てなかったんですよ当時は。

他のチームは歴史が深く、大所帯な小学校になると、ＡチームＢチームなどに分かれていた。一度Ｂチーム(２軍)にボロ負けしたのを今でも忘れない。

発足したての素人で勝てないのは当然なのだが、それは運によるものもあったのだ。

ミニバスチームの大きな大会はほとんどなく、基本は近隣校区内の交流戦がメインである。

実は後にミニバス全国優勝するチーム、県大会２位のチームと同地域にいたのだ。

後は察して頂けるであろう、交流戦は基本的にその３チームで行われ、毎回私たちはダブルどころかトリプルスコアで負ける。小学生には酷な話だと思いませんか？笑

そして私は卒業して中学生へ、それが悪夢の始まり。

【中学生】

中学生になった私は、すぐさまバスケ部の練習を見学へ、私が小学５年生の時のミニバスの先輩方もいらっしゃったので迷わず入部、当時は優しく温厚な顧問が担当していた。

私が２年に上がる前に告知があった。

現顧問が転勤になり、新しく赴任してくる保健の先生が顧問になるというとの事だ。

その時伝えられた新顧問の情報は、少ないながらにも当時の自分にショックを与えるには十分であった。

・女性

・保健の先生

・以前の中学で全国大会へ導いた指導者

以上

………

(全国て…)私は心の中で練習がきつくならないことだけを祈った。

その後、前顧問は転勤し、新顧問と練習開始。

ひとまず朝練、昼休みのシューティングが追加された。

同級生の部員が１０人減った。

同級生は残り４人。

２年の夏頃から練習は過激さを増した。

遠征につぐ遠征、顧問の在籍していた前中学から、ウィンターカップ(全国大会)常連校へ入学者も多数の為、その関係で名門高校の練習へ参加し、スタメンとの練習試合。

その頃から部員の中からついていけないとの言葉をよく耳にするようになった。

そして事件は起きた。

【それでバスケが上手くなるのか】

実力は中堅レベルの中学バスケ部との交流戦、良い結果を残せなかった。

１人は試合中にも関わらずコート端に呼びつけられて往復ビンタ、また１人はこいつにはもうボール回すなと蹴り、４人で試合を回せと。

暴言、暴力日常茶飯事ではあった、なのでそれにも慣れ切ってしまっていた。

しかし帰りのバスで顧問が放った一言に皆唖然とした。

来週までに全員坊主にしてこい。

…

本気で言ってるのかこの人は、これが正直な感想だ。下級生含め全部員の指揮は下がりに下がり、誰も口を開くものはいなかった。

次の週の練習日、誰も坊主にはしてこなかった。

当然だろう思春期の中学生の集まりだ、皆髪型にもこだわりはある、いくら恐ろしい顧問の指示とはいえ坊主なんてしてこない、そう彼を除いては。

運動神経皆無のＩ君だ。

しかもきらびやかなスキンヘッド。

なぜ坊主にしてきたかのかと問うと「顧問が坊主にしてこないと練習はなしって言ってなかった？」

バスケ愛がすぎる。

バスケットボールを誰よりもプレイしたかったのだろう。だが彼は運動神経皆無の為、試合に一切出ることはなかった。

情熱だけではどうにもならない事があると知った初めての経験であった。

【風の如く退部】

それと同日、キャプテンO君が退部をしたと顧問より連絡を受けた。

O君は校舎の２階から中庭にいる顧問に向けて「先生～僕もう部活やめま～
す」と手を振ったらしい、清々しすぎて引きとめる事はなかったと顧問は言う。

さて、同級生は残り３人。

ん？

キャプテンどうするの？

誰もそのことに触れないまま公式大会へ。

バスケットボール公式大会は、まずキャプテン同士の握手から始まる。

相手側のキャプテンが一歩前へ、静寂に包まれる我がチーム。

そう、私に視線が、繰り上げ当選である。だが役職はキャプテンではなく代表という謎のポジション。

もれなく敗北した。

そして時は過ぎ、３年生夏の公式大会が終わった。ここで我ら３年生には２つの選択肢が残されていた。

ほとんどの人間が、夏の公式戦終わりに部活を引退し受験勉強に励む。

あの２人はどうするのであろうか。

まずマネージャーのM君は元々成績優秀、学年トップクラスのエリート。もちろん夏で引退し受験勉強へ励む。

気になるのはＩだ。

坊主にしてまでバスケ部にこだわり続けた男の答えは引退であった。

理由を問いただしてみたら「ずっと辞めたいと思っていたから」

嘘だろ…辞めるタイミング何十回とありましたけど？笑

人は３年間弱一緒に汗を流し、時には同じ釜の飯を食っても理解できないことはあるのだと知った、人生の良い勉強だ。

そして私、顧問からお前はもちろん残るよな？との圧。

私は当時膝を痛めており、練習試合や大会に出場出来ない事もしばしばあり、他の部員よりは部活動の大会を経験していなかった。

今思えばこの言葉は顧問なりの愛情だったのだろうかと思う。

色んな重圧の中、公式引退の道を閉ざされていく感覚は今でも忘れない。心はNoだが、口はYesの形にしか動かなった。

まるで社会の縮図をそこに見た気がした。

【恐怖がもたらした悪夢】

事件が勃発した。

その日も私は下級生と練習に励んでいた。いつものごとく試合形式のゲームを始めたのも束の間、顧問のストップが入る、いつもの事だ。

その日は長かった、説教が３０分程度に差し掛かったところで、静かな体育館に響くスーっという聞きなれない音。

皆が周りを見渡す。

１人青ざめた下級生が居た、そして彼の足元には体育館には不相応な水たまりが。

皆は察した。

【中学最後の試合】

月日は流れ、非公式ではあるが３年最後の試合。

私たちは今まで２回戦までしか勝ちあがれなかった秋季大会を、ベスト８を争うところまで勝ち上がっていたのである。

ウォーミングアップを終え、全員でいつもの声だし。

そしていつも通り顧問からの作戦指示。

顧問の指示終わりはいつも、ありがとうございましたとお辞儀。

お辞儀が終わるの見計らって顧問が一言。

君たちは決して弱くない、行ってこい。

…

…泣いた。

歴史ある強豪チームではないが、たくさん努力してきたのを知っている、そんな意味が込められている事をひしひしと感じた。

今だから感じる、顧問からの愛を。

社会に出て今思う、競い合うという事への精神力、養われたのは間違いなく中学生時代であるということ。

スポーツが私にくれたもの、それは目に見えない恩師からの10年越しの愛情である。

ありがとうございました。