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ものづくりをしている陶芸家がYouTubeを始めた3つの理由。

こんにちは!
有田で陶芸家をやっています、辻拓眞と申します。
 最近、私が所属している聡窯でもYouTubeでの動画配信を始めました。

ものづくりを生業としている陶芸家が、なぜYouTubeを始めるのか。そこには何世代にも渡り、焼き物を売り続けた聡窯ならではの考えがあります。今回はその理由について説明します。

陶芸家がYouTubeを始める3つの理由
・対面販売の代替措置
・ECサイトへの集客、作品解説
・ものづくりの現場から作り手の理念を伝える


顧客との単純接触頻度の減少。それに伴う対面販売の代替措置の必要性

 さて、まずは皆様も実感された通り、このパンデミックにおける外出自粛の影響は陶芸家にとっても甚大で、特に古くからD2Cのスタイル(ものづくりから販売まで、中間業者を挟まないあり方)を貫いていた聡窯ではこれまでにない窮地に立たされました。

 特に例年の陶器市や、百貨店での個展は中止に見舞われ、お客様に接する機会は減少。
 そのために対面販売の代替措置が必要でした。

 パンデミック後の世界を待っているだけでは、作家が顔出しをする機会は永遠に得られません。次の項目とも重複しますが、販売の舞台はオンライン上へと移行しています。
 ところが器、磁器の良さは写真だと伝わりづらい。

 少しマニアックな話ですが、私は磁器の手触り、光沢、重さが大好きです。(これは是非手に取っていただきたい笑)

 それを動画で伝えたいというのが1つ目の理由ですね。特に、磁器の光沢!これは十分に伝わってると思うので是非一度、動画をご覧になってみてください!


ECサイトへの集客、作品解説によるECサイトの強化

 上でも述べましたが、聡窯は昨年度からECサイトに力を注いでいます。販売のステージがオンライン上に動いたことは誰が見ても明らかだと思います。が…

 とはいえ、すべての人がオンラインでの買い物を抵抗なくできるのかと言われると疑問の余地があります。
 
 なぜなら、聡窯のお客様の多くは高齢者です。実際に、ECサイトの仕様によっては勝手が分からず買い物がしづらいとのご意見も頂戴しました。うちの両親ですら、通販サイトを使うことは少ないように思います。
 (案外田舎では、人によっては使ったことがないなんてことがあるのではないでしょうか。)

 ここで高齢者のお客様を切り捨てるのは、やや乱暴な気がしますが、とはいえECサイトを分かりやすくコーディネートするのにも限界はあります。ECサイトで実績を上げるためにはネットを利用してる若いお客様にもうちの焼き物に興味を持ってもらう必要があります。

 (しかし、うちのECサイト!スタッフが精査を繰り返しながら、かなりこだわって作り込んでおります!是非ともご覧あれ!)


  では、どのようにすれば興味を持ってもらえるのか。正直な話を申しますと今の時代、世の中に安くていいもので溢れているのが頭を悩ますところです。

 ニトリや無印で売られている食器は劣等品なのか?幼い頃から焼き物を見てきた私ですらそう言い切れるものではありません。丈夫で使い勝手がいいことは間違いないでしょう。

 じゃあ、ブランドモノの器は何が違うのか。うーん…笑

 閑話休題。私たちが作品を売るために伝えたいことは3つ。作品を所有する満足感、作り手の人柄、ものづくりの理念です。なぜこれが購買意欲へとつながるのか。長くなるので、これはまた後に説明したいと思います。

 しかし、YouTubeで上記した3つのポイントが説明されていれば、ものを購入するときの指針となりますよね。ECサイトで、動画による商品説明があるのは、無印やユニクロなども行っている取り組みです。これから自社がYouTubeに取り組んでいるかは、自社サイトがあることのように、当然の流れとなっていきます。

 私なんかは何か情報を集めたいとき、YouTubeを検索エンジンのように使い情報を収集しています。皆様もそうではないでしょうか?


ものづくりの現場から作り手の理念を伝える

 皆様は焼き物がどうやって作られているか説明できますか?ほとんどの焼き物が1000℃近い高温で2回ずつ焼かれているのをご存知ですか?絵付けの絵の具は何から作られているのでしょうか?

 こちらは長年のロングセラーとなっている聡窯の「鉄仙シリーズ」です。著者の祖父、辻毅彦がデザインした鉄仙の花を、現代の食生活に合うワンプレートに落とし込みました。コバルトという金属を主成分とした独自調合の絵の具が、1300度という高温で鮮やかな藍の色彩を放っています。絵柄は筆を用いず彫り込むことで、表面の微細な凹凸が光を乱反射し、複雑な光沢を生み出します。器は軽すぎず適度な重みがあり、その色彩もさることながら宝石のような重厚感を与え、所有する満足感を満たすでしょう。

 いかがでしょうか?写真だけじゃわからなかったところ、この器に対して少し興味が出てきませんか?

 しかし、ここまでお読みいただいた方はどの程度いるでしょうか。最近の調査では若年層に限らず、人の文章を読む能力が低下しているとの発表もありました。つまり、写真と文章では全てを伝えきることが、かなわないということです。

 本来、その役割を例年行われる個展会場や陶器市で行っていました。作り手が何を見て、そこから何を抽出し、どう作品に落とし込んだのか。そして、作品をあらゆる角度から鑑賞し見聞することが消費者にとって最も大切なことでした。

 焼き物づくりの現場は皆様の予想以上に大変です。制作から販売の全ての工程をほぼ一人でこなし、新しい発想から新しい挑戦を続け、その度に多くの失敗を繰り返している。そうやって、お客様に届くのは成功の中のほんのひと握りだったりもします。その想いがどうか作品に内包するように、私たちの理念を伝える努力をしたいと思っています。


最後に先日アップした動画を…

 こちらは、2013年に父が制作したプロモーション映像です。なかなかにものづくりの大変さが伝わっている映像になっているかと思います。何より音楽がいい!(おかげで広告がつかない動画となっていますが…)是非一度ご覧ください。


辻 拓眞 略歴

1992年 佐賀県有田町に生まれる
2015年 佐賀大学 文化教育学部 美術・工芸課程 卒業、 有田国際陶磁展 初入選(以降4回入選)
2017年 佐賀大学 教育学研究科 教科教育専攻 美術教育 修了、佐賀県立有田窯業大学校/佐賀県窯業技術センター非常勤 就任
2019年 日本現代工芸美術展 初入選、現代工芸新人賞「築~KIZUKU~」

現在、父 聡彦のもとで作陶に励む
ー聡窯について

代々、日本磁器発祥の地である佐賀県有田町で作家として活躍している辻家。香蘭社の図案部で活躍していた先代・辻一堂が、1954年に前身である新興古伊万里研究所を設立し、12年後に「聡窯」と改名し、現在に至ります。

絵を得意とする聡窯では、日本や海外の風景・身近にある自然をモチーフを、先代から受け継ぐ線刻技法と呉須(青色の絵具)で描き、日々作陶に励んでおります。


【聡窯・辻 Sohyoh Tsuji】
〒844-0002
佐賀県西松浦郡有田町中樽1-5-14
営業時間:9:00~17:00(土日祝日/定休日)
Tel:0955-42-2653 Mail:artgallery@sohyoh.com


【オンラインショップ】
■Sohyoh Art Shop

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■Instagram:聡窯・辻󠄀/Sohyoh Tsuji(@sohyoh.kiln)



 

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