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【ストリートバー開業記②:収支計画】ビジネスモデルと売上・利益計画について

こんにちは。井澤卓です。

仲間とデザイン会社を経営しながら、会社のメンバーで飲食店"LOBBY"を経営しています。

このnoteは、僕達が新店舗を立ち上げるに当たり、構想段階から作り上げる過程を書き連ねるシリーズです。
第一章はこちらをご覧ください。

今回は、飲食店を始める上での収支計画について書いてみようと思います。

開業費用

まず、お店を始める上で一番最初に直面する投資が開業費用です。
物件の初期費用・店舗作り(設計・工事・備品)費用に大別し、それぞれの費用感をまとめます。

物件初期費用

<物件条件>
立地:代々木公園駅徒歩2分(裏通りの立地)
建物:戸建て
広さ:71.19㎡ / 21.53坪 (2階建て)
家賃:¥407,000
坪単価(事業面積あたり):¥18,903

<初期費用>
総額:¥3,725,900
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家賃:¥407,000(税込み)
敷金:¥2,220,000 家賃6か月分(うち2か月は償却)
礼金:¥407,000 (家賃1か月分)
保証料:¥407,000 (家賃1ヶ月分)
仲介手数料:¥284,900
フリーレント:3か月(12月−2月)

今回の物件は地価が高い代々木公園エリア。
駅徒歩2分ということで、裏通りといえども家賃は高く、40.7万円です。

敷地面積は39㎡と狭いですが、2階建て戸建てということで事業面積は71㎡取れます。この広さで40.7万円は、エリアの地価を考えると比較的安い部類。

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▲完全に家です。

1店舗目のLOBBYの家賃は53㎡/16.03坪で33万円なので、坪単価¥20,586
今回の坪単価は¥18,903になるため、悪くない条件です。

初期費用を合計すると¥3,725,900に。高い...。

飲食業での賃貸は、オフィス等の用途に比べると敷金(保証金)が多くなる傾向があります。
飲食業オーナーは、経営が立ちいかなくなった際に夜逃げしてしまったり、原状復帰金額が払えないケースが多いため、最初にまとまった金額を預かるそうです。

この物件も、当初はもっと家賃・初期費用共に高かったのですが、諸々交渉しこの水準まで落とすことができました。

それでもかなり痛い出費ですが、このあたりは仕方ないところ...。
泣く泣く支払い、契約しました。

店舗づくりの費用

続いて、店舗づくりの費用です。
ここには通常設計・デザイン費用も入りますが、僕達は自分達でデザインができるので、主に内装工事の費用になります。

こちらはまだ明確に見積もりができていませんが、今回は住居だった戸建ての内装を取り壊すところ(解体工事)から始めているので、かなり予算が必要になるはず。

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▲絶賛解体中の物件。

加えて、デザイン会社としてのショーケースにするため作り込むことを加味し、予定では1,500万円を予算に考えています。

1500万円は投資金額としてはかなり大きい部類に入ると思います。
内装にどのくらいお金をかけるかは各経営者の判断で大きく異なるところ。

ただでさえ利幅の小さい飲食業は、初期費用を低く抑えることは鉄則中の鉄則です。
その上で僕達の場合は、飲食業であると同時にデザイン会社として、この空間に介在する人々からデザインの仕事を受注するところまでを見込んで投資していく判断をしています。

ということで、初期費用としてざっくり1,900万円が必要になりました。

ではそのコストをどう回収し利益を出していくのか、考えているビジネスモデルについて書いていきます。

(初期費用の資金調達は、自己資金と銀行融資です。)

ビジネスモデル

基本的な業態はLOBBYと同じくストリートバー。
加えて今回はカフェ営業も検討しています。

ストリートバー

既存店LOBBYで僕が称している業態、ストリートバー。
ストリートバーの業態コンセプトについては、LOBBYのnoteに詳しく記載しているので、ここでは省きます。

ストリートバー:「誰でも入りやすい空間で、いつもより楽しくて美味しいお酒に出会える場」

1杯800円〜、平均1,000円前後でお酒を提供するカジュアルなバーです。
間口を広げるためにチャージは設定せず、思い思いの使い方ができるお店を目指します。

ストリートバーでは、平均客単価¥2,400が目標です。

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カフェ

加えて今回はカフェ営業も検討しています。
コーヒーと焼き菓子を提供し、平均客単価¥600を目指します。

カフェ営業の大きな目的は、利益創出ではなく、空間利用者と認知の増加にあります。

多くの人が憧れるカフェ経営ですが、実際は飲食店の中でも最も難易度が高い業態の一つ。一杯400円のコーヒーで売上を上げるには、毎日かなりの杯数を売り切る必要があります。
お酒と違いコーヒーは何杯も飲むものではありません。
1人一杯と考えると、3万円を売り上げるために75杯=75人集客する必要がある。かなりハードルが高い。

その単価の低さから、カフェは人時生産性(従業員1人が1時間働く際の生産性)が圧倒的に低くなってしまうので、相当な理由が無ければ自分達は踏み入れるべきでない領域と考えていました。

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▲LOBBYでも週に二回カフェ営業を実施し、その難しさを体感中…!

今回それでも実施しようと決めたのは、「カフェの間口の広さ」に潜在性を感じたからです。

お酒メインのバー業態って、思いの外、間口が狭いんです。
当たり前ですが、基本的にはお酒が好きな人しか来ません。
また、家庭や子育てがあり夜の行動が制限されている人は、飲みに行きたくても行けなかったりする。

更に、最近はお酒を飲まない若い人も増えています。
(これは店に立っていても本当にそう感じます。)

元々僕達がお店を作っている動機は、デザインチームである自分達のショーケースにするため。
そのため、できるだけ多くの人に僕達の空間を知ってもらい、介在してもらいたい。

その主目的に立ち返ると、バー業態だけではなくて、より幅広い人々が利用できる業態を設けるべきと考え、カフェ営業も取り組むことにしました。

お店として、そして、デザインチームとしての認知拡大を担う役割ですね。

ここで大事なことは、カフェ営業での利益創出は限定的に捉え、夜のバー営業で利益を生む体制と考え方をチーム全体が共有すること。
それがないと、現場のスタッフにも軋轢を生む原因になりかねないので、PL、KPIを分けて考えるなど運営の工夫が必要とされそうです。

目標数値(売上・利益・人時生産性)

ショーケースのための店舗と言っても、店舗経営を疎かにしているわけではありません。
むしろ、絶対に流行るお店にしないと意味がないので、経営面については綿密に検討を繰り返しています。

目標数値を考える上で、もう一度前提条件を整理します。
投資金額の回収を3年間で目指す場合、以下の最低売上を立てる必要があります。

■前提条件
・投資金額:1,900万円
・回収目標期間:3年
・最低必要利益/月:¥527,778 
・最低必要売上/月:¥1,700,000


・営業日:週5日(月20.5日)
・営業時間:19時−1時(6時間)

※利益=営業利益

上記はミニマムラインなので、目標としてはもっと大きい利益創出を目指します。

売上目標

合計
・月間売上:¥2,665,000
・日平均売上:¥130,000


カフェ
・月間売上:¥615,000
・日平均売上:¥30,000 

バー
・月間売上:¥2,050,000
・日平均売上:¥100,000 

LOBBYでの実績を考えるとカフェもバーもかなり高い目標です。
初年度でこの目標達成を目指します。

利益(営業利益)目標

合計
・月間利益:¥799,000
・日平均利益:¥38,975


カフェ
・月間利益:¥184,500
・日平均利益:¥9,000

バー
・月間利益:¥615,000
・日平均利益:¥30,000 

月間利益を¥799,000作ることができれば、3年の回収計画の必要利益¥527,778を差し引いた約27万円を蓄える事ができます。

こう考えると、飲食経営で、「儲かる!」と言えるほど利益を作れるタイミングは、事業開始から数年後であるとわかりますね。
例えば5年後に2店舗で同じ実績が作れていれば、ようやく月160万ほど自由にできる利益を得られる計算です。

人時生産性目標

人時生産性とは、従業員1人が1時間働く際の生産性を表す数値です。
今回は、理想とする人時生産性を以下に設定しました。

人時生産性=粗利益高÷総労働時間

■目標
カフェ:¥2,000(1-2名体制:12時間勤務)
バー:¥4,000(2-3名体制:17.5時間勤務)

※飲食業界の平均は¥2,000〜¥3,000と言われている。
サイゼリヤの人時生産性は¥6,000になる店舗もあるらしい。すごすぎる。

目標とする人時間生産性を掲げれば、自ずと現場を回すスタッフの人数が算出されます。
カフェは客単価が低く、売上を作りづらいモデルのために1-2名体制のキャッシュオンスタイル。
一方バーの場合はテーブルサービスを想定し、バーテンダーとサービスが必要になるため2〜3名体制です。

店舗の全てのオペレーションは、この人数を前提に仕組みづくりを検討する必要があります。

会計の手間やレジ締めにかかる時間を削減するため完全キャッシュレスにする。

氷カットは自らやらず、カット済みの氷を発注する。

ワイングラスやうすはりグラスは、価格が高くても食洗機に入れられる商品を使う。

フード類の仕込みは自社で行わず、近隣のお店とコラボレーションする。

などなど、工数を削減するために工夫できることは沢山有ります。
いかにサボるかを考えるということですね。

(余談ですが、オーストラリアはこの効率化がめちゃくちゃ上手い。飲食店も皆クレジットカードのスワイプ決済だし、ほぼ現金は使いません。ライフスタイルを大切にする国民性が、いかに早く仕事を切り上げるかを考える習性を身に付けさせるみたい。その結果かどうかはわかりませんが、飲食業の給与も2倍位高いです。)

適切なクオリティを担保しつつ、いかに効率化を図るか。
捨てるべきことの判断。ここが経営者の腕の見せどころ。

課題になるのはスタッフの習熟度です。
1〜3名で現場を回すためには、全員が全ての業務をこなせる必要があります。

特に、カクテルやコーヒーは、作り手により味が変わってはいけない。
全スタッフで味を標準化できるよう、技術の教育体制構築と共に、作業工程を可能な限りマニュアル化する必要があります。

この様なマニュアル構築・作業の標準化の取り組みは、上場している巨大飲食チェーンでは当たり前に実施していることですが、僕達個人店こそ真剣に考えないといけないことだと思います。

経営効率の改善に徹底的に向き合うことで、従業員の待遇を改善できたり、新たな設備投資に舵を切れる。

結果的に来店するお客様に良いサービスができるようになるため、今年最も重要視するテーマです。

第三章は内装設計・デザインについて

第二章はビジネスモデルと数字面についての計画を書いてきました。
以下がまとめです。

<物件条件>
立地:代々木公園駅徒歩2分(裏通りの立地)
建物:戸建て
広さ:71.19㎡ / 21.53坪 (2階建て)
家賃:¥407,000
坪単価(事業面積あたり):¥18,903

<業態>
カフェ(コーヒーと焼き菓子):10時〜17時
バー:19時〜1時

<目標数値>
・月間売上:¥2,665,000
・月間利益:¥799,000

次回は、この計画を実行に移すための第一ステップ、内装デザインについて書いていきます。

デザインは、コスト面やオペレーションといった経済合理性の確保を前提に行うもの。
同時に、あえて経済合理性を無視した意思決定に作り手の想いが表面化し、唯一無二な空間の特徴を形作るという、なんとも難しい局面です。

ロマンとそろばんに向き合いながら理想の空間を作っていく過程は、頭を悩ませつつも一番ワクワクする期間。

次回のnoteで、設計内容と共に臨場感を持ってお伝えするので、ぜひまた読んでくださると嬉しいです。


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