綾部卓悦

第二回仙台短編文学賞大賞受賞。プロになるまでの過程を残しておきたい。Twitter:h…

綾部卓悦

第二回仙台短編文学賞大賞受賞。プロになるまでの過程を残しておきたい。Twitter:https://twitter.com/Takuetsu_Ayabe

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最近の記事

ラーメンと遠慮体質

近所に行きつけのラーメン屋がある。いつも料理を担当してくれる妻が数日不在にしているため夕食を自力で用意しなければならないのだが、自分は自分のために料理できないタイプだ。その日も冷凍食品で済ませようと思ったが、洗い物をサボっており、冷食を温める皿が足りなくて、どうしても洗い物をしたくなくて、そのラーメン屋に逃げた。こうやって文字にすると自堕落すぎて泣きそうになる。いやたまたまこの日がそんな感じだっただけで常日頃そういうわけではないんだよ、と自己弁護を書き添えておく。哀れな男のた

    • 長濱ねるさんのエッセイに触発されて書いたエッセイらしき何か

      2024/03/10 エッセイを書いてみる。日記とエッセイの違いもよくわかっていないけれど、書いてみる。長らく自分の好きなように文章を書く行為から離れてしまっていたので、そのリハビリが主目的だ。もっと抽象的な目的もあるにはあるが、それはひとまず置いておく。 この数ヶ月、まともに本も読めていなかった。結婚してから「忙しいでしょ」と言われることが増え、相手によってイエス/ノーの返事を使い分けていたが、実はそこまで忙しくない。家事としての作業量は増えたかもしれないが、一人暮らしと比

      • 「何をしてもうっすら退屈な状態」を抜け出すには。

        <はじめに>  以下に続く一連の文章は、国分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』および千葉雅也さんの『現代思想入門』に多大な影響を受けています。明確に引用している箇所はないものの、上記2冊を読まなければ到底書けなかった文章だという点は、最初に強調しておきます。  また、哲学や思想の説明・解釈の誤りにまつわる責任はすべて私にあることも、同じく強調しておきます。 <インターネット漬けの日常>  まずは当たり前の話をしましょう。人類はインターネットに浸かりすぎましたね。暇を潰すならま

        • 逸木裕『五つの季節に探偵は』感想

          探偵・榊原みどりの探偵半生を追うようなかたちで構成された短編集。みどりが探偵を志したきっかけの事件から始まり、調査会社サカキ・エージェンシーの課長として活躍するに至るまでの時間軸で各話が展開される。 著者である逸木裕さんのインタビュー記事で「今回はミステリとしての色味を強くした」といった旨が語られていたけれど、たしかに全話共通してミステリとしての仕掛けに力が入っていたように思う。ただ、そのコンセプトを維持する一方で、人の弱さに寄り添う(良い意味での)目線の低さや社会のいびつさ

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          ミステリは卒業できないけど

          最近、ミステリを書くにしても読むにしても、ホワイダニットに関心が絞られてきた感覚がある。 もちろんハウダニットやフーダニットが主軸の作品も読むし、読めば実際面白い。でも心には残らない。1年後にはどんな話か思い出せなくなっている気がして、積極的に手に取ろうとは思わなくなってきているのが本音だ。 本格ミステリが嫌いになったとかそういう話ではない。ないのだけど、変に読み慣れてしまったせいか、新しい仕掛けを見せられても昔ほど驚かなくなっていて、最近流行りの特殊設定ミステリを読んでも、

          ミステリは卒業できないけど

          第十八回ミステリーズ!新人賞の反省

          第十八回ミステリーズ!新人賞に応募しました。 反省点が山ほど出てきたので整理します。 1.書き始める前にもっと考えよう ・そもそも設計段階でメッセージ(この作品を通して何が言いたいのか)を考えていなかった。最大の敗因。仕掛けやトリックばかりに気を取られていた。もちろんそういうもののないミステリも多いが、自分には合ってない。それがわかったのは進歩。 ・書き進めたはいいものの、「この物語を必要としてる人は?」という問いに答えられなかった。メッセージに近いことだけどこれも早めに固

          第十八回ミステリーズ!新人賞の反省

          第四十二回小説推理新人賞に落選しました。

          先日、第四十二回小説推理新人賞の中間発表がありました。 僕の作品は一次審査落選でした。 シンプルに悔しいですし、普通に凹んでます。 ただ、あれこれ理由をつけてその気持ちに抗うのではなく、いったん素直に受け入れることにしました。悔しいとかつらいとか、そういう感情が自分のなかにきちんと存在するのをよく憶えておきます。 それはそれとして、自分なりに考えた敗因を以下に洗い出しておこうと思います。でないとまた同じやらかしをしそうなので。 <敗因> 【1】そもそもミステリとして仕掛

          第四十二回小説推理新人賞に落選しました。

          グロさは寂しさなんだよ、という感覚について。

          たとえば水の入ったコップがあるとする。 水が生命で、コップそのものが肉体。 水を飲み干したとする。 生命が失われたので、これは死んだことになる。 コップが割れたとする。 生命が失われるので、これも死んだことになる。 飲み干したときと結果は変わらない。 ただ、空のコップと割れたコップを見比べたとき、「どうしようもなさ」は割れたコップのほうがより強く感じられる気がする。 この「どうしようもなさ」や「取り返しのつかない感覚」こそが寂しさであり、グロさの意味はここで担保できる気

          グロさは寂しさなんだよ、という感覚について。

          新年の抱負をTwitterに書くのは悪手だと思った。

          なぜなら数日で流れていってしまうから。 というわけで比較的流れの遅いnoteに抱負を残しておくことにする。 もう明けてだいぶ経つけど、去年の内に考えてしまうとそれは去年のものなので鮮度が落ちる。したがって新年の抱負は年が明けてから考えるのが妥当。そしてその精査にもそれなりの時間を要するのだから、今が適度な頃合いと言えないこともないかもしれない。本当はただサボっただけです。 本題。抱負としては3つ。 1つでは少ないし2つだと半端。4つ以上は覚えてられない。ゆえに3つ。 ①設

          新年の抱負をTwitterに書くのは悪手だと思った。

          第二十三回伊豆文学賞の反省の反省

          上記記事内で、こんな反省をしていました。 >反省としてはシンプル。 >ひとまず最後まで書ききる。それから直していく。 これって間違いだよね、という話。 当時はひとまず最後まで書き上げてから修正していくのが自分に合ったやり方だ!と思っていました。根っこは間違っていないんですが、心構えとして正確じゃないな、と最近気付きました。 イラストやシステムなどなんでもそうですが、ものづくりはまず要件を決め、設計をして、それを詳細化して、それから手を動かすのが基本です。 で、僕が勘

          第二十三回伊豆文学賞の反省の反省

          第四十二回小説推理新人賞の反省

          ※この記事は2019/12/1にはてなブログに投稿したものを最低限の手入れだけして移植したものです。 第42回小説推理新人賞に応募しました。 (https://www.futabasha.co.jp/news/suiri_award/index.html) 結果は待つしかないし運も大きいと思っているので、反省点だけ書いたらひとまず存在を忘れます。 今回はあまりにもやらかしが多すぎました。 基本的に自傷なのでお通夜テンションで書いていきます。 ■適当に作っていいキ

          第四十二回小説推理新人賞の反省

          第二十三回伊豆文学賞の反省

          ※この記事は2019/10/16にはてなブログに投稿した内容をそのまま移植したものです。 第二十三回伊豆文学賞に応募しました。 https://compe.japandesign.ne.jp/izu-bungaku-2019/ 原稿用紙換算82枚でフィニッシュ。 無駄は削ったつもりですが長くなってしまいました。 規定には80枚「程度」とあったので、まあ、ギリギリ土俵には上がれそうです。 かけた時間は約1ヶ月半。 プロットは2時間くらいでまとまったし、最後まで大きな変更は

          第二十三回伊豆文学賞の反省

          第二回仙台短編文学賞の反省

          ※この文章が記されていたテキストファイルのタイムスタンプによると、2018/11/24に書かれた内容らしいです。つまり受賞前(というか投稿直後)ですね。他の賞の反省を投稿するにあたって掘り返しただけなので細かい修正等はしていません。 【最終成果物】 1万字弱の短編小説。 未公開であることが応募条件なので、結果が出るまでは公開しません。 また、万が一のリスクも想定し、当記事で本編の具体的な内容に触れることもしません。 【挑戦した理由】 ・2018年の抱負が「最低でもひとつ、

          第二回仙台短編文学賞の反省

          数字の意味を考える

          物語のなかに具体的な数字を織り込む際、重要なのは数字そのものではなく、その数字が示す事実なのではないか、という話です。 本題たとえば、以下のような文章があったとします。 その高校は1年生が30人、2年生が30人、3年生が40人ほど在籍していた。 主人公Aは1年生で、各学年を含めても唯一、ある中間テストにおいてすべての科目で満点を取っていた。 この例文の悪いところは、数字そのものにあまり重要性がないことです。 この文章には以下のように書き換えられます。 主人公Aは高校

          数字の意味を考える

          リアリティと必然性の関係

          以前書いた以下の記事をラジオで取り上げた際、リアリティと必然性は何が違うのか?という話になりました。 そのときは「ドラえもん」を例に出し、非日常作品における(非日常要素のない)日常を丁寧に描写するとリアリティが生まれるという話をしました。 また、必然性はミステリの文法になぞらえて、納得感に繋がるものだとも言いました。 これらについて、僕の考えは変わっていません。 ただ、説明不足だったなと思うところが多々あるので補足をします。 本題ひとつご指摘としていただいたのが、リア

          リアリティと必然性の関係

          人間観察の観点リスト

          物語を書くとは人間を描くことという考え方もあります。 人間を描くには人間を知らなくてはいけない。 では人間を知るためにはどうすればいいか。 ひとつの方法として、よく「人間観察」が挙がります。 でも、実際、何を観察すればいいんでしょう? 僕なりの観点を整理してみました。 本題ふと時間ができて、カフェに入ったとします。 そこでスマホを見たり読書をするのもいいですが、人間観察に時間を割くのも悪くありません。 でも、具体的に何を観察すればいいのかわからず、ぼーっと眺めているだけ

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