第四十二回小説推理新人賞に落選しました。

先日、第四十二回小説推理新人賞の中間発表がありました。
僕の作品は一次審査落選でした。

シンプルに悔しいですし、普通に凹んでます。
ただ、あれこれ理由をつけてその気持ちに抗うのではなく、いったん素直に受け入れることにしました。悔しいとかつらいとか、そういう感情が自分のなかにきちんと存在するのをよく憶えておきます。

それはそれとして、自分なりに考えた敗因を以下に洗い出しておこうと思います。でないとまた同じやらかしをしそうなので。

<敗因>
【1】そもそもミステリとして仕掛けが弱かった。
【2】専門性とオリジナリティの欠如。知識がなくても書ける話になっていた。SNSは格別新規性が高い要素ではない。
【3】書き抜いた感覚がなかった。書き上げると書き抜くは違う。小さくまとまった感覚を受け入れてしまった。
【4】タイトルと冒頭にこだわらなかった。

まず【1】に関してはそのままです。後述しますが、BOOTHにて落選作を販売します。読んでいただければわかると思います。

個人的にいちばんの課題は【2】です。仙台短編文学賞を受賞した際の作品と比べて気付いたのですが、今回の作品は何か専門性の高いモチーフがあるわけでもないし、ある立場にいなければ持ち得ないような独特の感情を描いたわけでもありませんでした。言い換えれば、ネタと構成さえ思いついてしまえば僕でなくても書ける作品になってしまっていた、ということです。
書いた当初は、SNSを絡めていることが新規性でありオリジナリティだと思い込んでいました。しかし今のご時世、その程度の要素は誰でも思いつくレベルの工夫です。それを冷静に判断できていませんでした。
文学賞で賞を獲るには、何らかの専門知識や独特な観点が必要なのだと痛感しました。いわば個性とでも言えるその要素をどのように磨いていくのかが、今後の課題だと考えています。自分の中に激しくうねる感情や、強くこだわりたいと思えるものを素直に作品に取り組んでいくところからやっていきます。

【3】は感覚の話です。応募した作品はもちろん作品として「書き上げて」応募しました。ただ、胸を張って「書き抜けた」かというと、自信がありません。僕の中で「書き抜けた」とは、「もうこれ以上ないくらい推敲を重ね、これで落選しても後悔はないと思える状態で応募する」ことを指します。正直、これができていませんでした。本気を出していなかったという意味ではありません。作品に対し、自分自身が納得できていなかったという意味です。応募直後に書いた反省文にもそのような表記が見られます。
改稿の時間が十分に取れなかったことも要因です。しかし、いちばん心残りなのは、最終稿を仕上げる間際に予防線のような描写を増やしてしまったことです。瑕疵を恐れてお利口さんになってしまいました。もっとシンプルに、日和ったとも言えます。それが直接的に低評価につながったのかはわかりませんが、自分の納得の問題としては見過ごせません。せめてそこが貫けていれば、今ほど後悔はしていなかったでしょう。

最後に【4】ですが、これはほとんどそのままです。まずタイトルは安直でした。モチーフを取り入れていなかったのが、その原因のひとつだと思っています。せめて作品全体を象徴する何かひとつのアイテムがあれば、もう少し良いタイトルがつけられたように思います。
また、冒頭三行にも十分にこだわらなかったのは明らかにミスでした。「こだわらなかった」というのは、仙台短編文学賞の受賞作のときと比べて、という意味です。結果が出たときと出なかったときでの単純な比較ですが、自分の中でより冒頭にこだわったと言えるのは明らかに受賞作でした。
タイトルや冒頭は作品の玄関。基本中の基本です。それをわかっていながら、実践できていませんでした。

細かい部分を上げればキリがありませんが、ひとまず反省は以上とします。
もちろん、自作のすべてがダメだったとは思っていません。査読していただきに良かったと言ってもらえた点もあるし、自分でも気に入っているポイントもあります。ただそれはすでに自分の胸の中にあるので、あえて文章化はしません。

最後にちょっと実験的な取り組みです。
この落選作をBOOTHにて販売します。落選した作品を読む機会って意外とないですし、僕自身も「落選したやつも読みたい!」と思ったことが何度もあるのでやってみることにしました。「こういうところが良くなかったんじゃない?」というアドバイスをもらえたらラッキーだなという下心もあります。もちろん楽しんでいただければいちばんです。ただ、「この程度だと落選するんだな」という指標にしていただいても、僕は一向に構いません。
無料でもいいかなと思ったんですが、各方面への義理立てや脆弱な自尊心を考慮し、100円だけ頂戴します。ご了承ください。

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※小説推理新人賞の規約は確認済みです。受賞作の諸権利は双葉社さまに帰属するようですが、落選作についての規定はありませんでした。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
引き続き頑張っていきます。


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