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無私を得る道

湯川秀樹

今週は湯川秀樹を読んでいます。湯川秀樹については、日本人初のノーベル賞受賞者ということで、知っている人も多いのではないでしょうか。中間子論を提唱し、その功績が認められてノーベル賞を受賞しました。

なんでまたそんな人の本を読んでいるのか? 物理学の勉強をしているのか? と思う方もいるかもしれませんが、創造性ということについて書かれている本で気になる本を色々と集めていたときに、たまたま湯川秀樹の本を見つけて、読んでみたのです。僕が今読んでいるのは『湯川秀樹著作集4 科学文明と創造性』という本です。どんな固い本かなと思いましたが、これがとても面白い。短編のエッセイ形式が中心になっているのですが、物理学者が書いたとは思えないとても読みやすい文章で、この人は作家?と思うほどの文章力です。そして、また鋭い視点から物事を捉えて、それを一般の人にもわかりやすい形で物理のこととも交えて話す。なんだか、とても文才のある人だと感じました。以前、小林秀雄全集の中で、小林秀雄との対談が収録されていて、それも面白いと感じましたが、湯川秀樹の文章自体がとても素晴らしいのには驚きです。面白いのでついつい読んでしまいます。こういう人が学校の先生だったりしたら、もっと多くの人たちが物理に興味を持つかもしれませんね。でも、湯川秀樹は、もっと俯瞰した目で世の中を見ている感じがするので、たぶん、物理推しするだけではなく、世の中のいろんな面白さを教えてくれる先生になったのではないでしょうか。彼の文章からはそんなことを想像してしまいます。

もちろん、京都大学の教授などにもなっているので本物の先生ではあるのですが、もし、小学校の先生、中学校の先生とかになっていたら、面白い生徒が育っていったのではないでしょうか。とても広く世の中を見ていたことがこの文章を読むだけで伝わってきます。一体彼は何者なのでしょうか、と素人の僕には思ってしまいます。この文章を読んでいるだけでは、物理学者というよりは思想家に近い印象を受けました。それはノーベル賞受賞者だから、すごいに決まっているでしょ、という感じではなく、その人物の凄さ、だから、賞が後からついてきた、という印象を受けるのは僕だけでしょうか。

日本の中にこういった考え方の科学者がいたということは、なんだかとても嬉しく感じます。物理の力、科学の力を、ちゃんと善いことに使おうとした。ただ自分の探究心を満足させるために研究するのではなく、世のため、人のため、を考える。当たり前のことなのですが、本の中にもたびたび原子力の話が出てくるように、それを求めて科学者は探究しているわけではないが、その副産物として、時に戦争に利用されるような、もしくは、世界を破壊してしまうようなものも生まれてくることもあるのです。それを認識せよ、と湯川秀樹は言っています。当たり前のことですが、どこまでそれを意識して、真善美の心を持って取り組んでいる研究者、科学に限らずですが、そういう人は今どれだけいることでしょうか。

湯川秀樹が目指していた世界に今、少しでも近づいているのでしょうか。まだ彼が生きていたらどういう言葉を発するでしょうか。そんなことを思いながら、湯川秀樹の言葉を読んでいます。
メタフィジカル・ジャーニーは続きます。

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