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学校は文書のやり取りをしたくない?【学校と裁判して思うこと】

「学校は保護者と文書のやり取りをしたくない。」

なんらかのトラブルがあった場合の保護者対応において、基本的に文書での回答は避けるべきである、と手引きやマニュアルに書いて推奨している自治体は複数あって、教員向けのマニュアル本などでも同じような意見が述べられています。

このような手引き(マニュアル)は、通常「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応」を目的として作成されたものではありますが、私の少ない経験の中でも、学校の対応に異議を述べただけでクレーマー扱いされることだって残念ながらあるわけで、一般の保護者も他人事ではありません。
下記リンクにもある通り、弁護士の先生に依頼して代理人として介入してもらったことをもって、暴言や長時間の電話と同列にクレーマーとして扱われている可能性もあるのです。
(学校がスクールロイヤーを活用してスムーズな問題解決を目指していることからも明らかなように、相手方との交渉を弁護士に代理してもらうことは、円滑に紛争解決するためのひとつの手段であって、それをもって恫喝等と同じく捉えることは不適切です。)

文書回答の是非はおくとして、児童生徒の側として認識しておきたいのは、どうやら「学校は文書を出したくない」らしい、ということです。
学校トラブルは、どんなケースであれ、いずれ卒業してタイムアウトします。学校はわざわざ頑張って解決する必要はなく、児童生徒側の要求をのらりくらりとかわして諦めるか卒業するのを待っていればよいのです。
逆に児童生徒側は、仮に卒業までに解決したい問題がある場合は、制限時間を課せられているようなもので、早急に、出来るだけ効率的に動かなくてはなりません。

いくら学校の対応が間違っていると思える場合であっても、文書で回答したくないという相手に対して、正論を述べて文書で回答を求めるのは不毛です。
初期からまったく話し合いに応じない、対応しないという学校も中にはあるでしょうが、そこまで不誠実な学校はおそらく少数で、文書では回答できないけれど、口頭でなら回答可能である場合が多いのではないかと思います。
そこで、文書回答に応じてもらえないことを前提に、面談交渉の進め方を考えていきたいと思います。


口頭での情報のやり取りのポイント

相手に話をさせる


児童生徒と学校側には、大きな情報の格差があり、この情報の格差が解決への道を困難にする要因の一つです。
学校側から提供を受けた情報から、Xという事実を前提に解決に向けて話し合いをしていたところ、あとから実はYという事実もあったという具合に学校が情報を小出しにしてくることがあります。
せっかく合意に向けてすすめている途中で、ゴールポストを勝手に動かされているようなもので、この調子ではいつまで経っても問題の解決には至りません。
情報格差を埋めるため、早い段階で出来るだけ多くの情報の提供を受けることを目指して、面談の際には学校の側に言い分を話してもらいましょう。
保護者から面談を申し出るなどすると、学校は通常、クレーム対応のセオリーとして、傾聴の姿勢をとってくることが多いと思います。お悩み相談室のような形で、「そうだったんですか」「大変でしたね」「ご心配をおかけしてます」などと言って、保護者に話をさせて感情をおさめようとする試みです。
しかしながら、学校とのトラブルを解消したい保護者にとってみれば、申し訳ないけれど、話を聞いてもらってそれで終わりとされても困ってしまいます。(とはいえ、学校が良かれと思ってなさっていることですから、それ自体を否定するわけではありません。)
この時点でそもそも学校と面談の目的がずれてしまっていると、何度話し合いを重ねても事態が前に進まない「こう着状態」に陥ってしまう可能性もあります。
そのような無駄な時間を避け、解決への糸口を探るためにも、学校の方から情報を出してもらうことが大切です。
児童生徒側は知り得ている事実に基づいてこちらの意見を端的に述べ、それに対して
「学校側ではどのような事実を把握しているのか」
「問題をどのように捉えているのか」
「着地点をどこに置いているのか」
学校の側に話をしてもらうことで、学校との情報共有をはかります。

言語化する


口頭での説明の場合、主語が抜けたり、語尾を言い切らなかったり、それ、あれなどの指示語を多用するなど、どうしても曖昧な部分が出てきます。
また、表情や身振り手振りなどで言葉にしづらい微妙なニュアンスを表現することは誰しも会話の中で自然に行っていることですが、事実関係の確認など正確な情報を開示してほしい場合に、抽象的な表現を許すことはできるだけ避けた方がよいはずです。
そこで面談等では、相手の説明で言語化されていない部分をこちらが補う形で質問していきます。
「どなたがおっしやったのですか?」
「先生が直接その発言を聞いたのですか?」
「それ、とは〇〇のことを指しているのですか?」
など。
先生の中には、質問を否定と捉えて感情的になる方もいらっしゃるので、問い詰めるような調子にならないように配慮も必要です。
揚げ足を取られないためにも、たとえ先生が高圧的な態度をとってきた場合でも、児童生徒側は相手の感情に引っぱられることなく落ち着いた姿勢を崩さないようにしましょう。

記録を残す


以前のnoteでも書きましたが、面談の内容は録音をしておくとのちのち便利です。

それに加えて、目の前でメモをとることも記録の残し方として有用であると思います。メモの内容はその場で相手にも確認してもらいます。
「〇〇という理解でよろしいですか?」
「学校の回答として⬜︎⬜︎であると受け取りましたが相違ありませんか?」
などの質問をして、こちらの記載内容を読んでもらい、学校の伝えたいことと齟齬がないか認めてもらいます。
いわば、相手の喋っていることをこちらが文書に起こす作業を面談の場で行います。
これは、例えば後日になって学校側が「そのようなことは言っていない。」と主張を翻すケースに備えるためです。
いくら発言を録音していても、学校側は、
「発言はしたが、〇〇という意味ではなかった」
「児童生徒が感情的になっていたので教育的配慮から話を合わせただけ」
「学校としての回答でなくA先生の個人的な感想だった」
などと返してくる可能性があります。
このようなことで言った言わないの押し問答をしても仕方がないので、説明を受けた段階で発言の趣旨を明らかにしておくとよいと思います。

当然、解決に向けて保護者や児童生徒と協力して誠実に努力してくれる学校や先生もたくさんいらっしゃるはずで、ここで書いたことは、残念ながらそのような対応を受けられない可能性がある場合に試すべき一つの方法としてのご紹介です。
子どもたちのために、円満な人間関係の中で、一日でも早く学校とのトラブルが解消されることを願っています。

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