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Gruppo Sportivo

グルッポ・スポルティボ。
バンドの名前らしい。
高校時代の友人BJが、おまじないのように口にするのであった。

音楽ヲタのBJは、洋楽を中心に、マイナーなアーティストが大好きだ。
パンク、ニューウェーブ、オルタナティブ系が、特に詳しいようだったが、それだけでは飽き足らず、アバンギャルドで、アンダーグラウンドで、マニアックなミュージシャンを、次から次へと発掘してきては、得々と語った。

一方僕は当時、クラシックばかり聴いていた。
洋楽については、FMでよく耳にする、一通りのメジャーな曲くらいしか知らなかった。
だからBJが、いくら熱っぽく、おまじないのような名前を語っても、右の耳から左の耳に素通りするばかりだった。

ところが、このグルッポ・スポルティボだけは、妙に記憶に残った。
やたら語呂がよかったからだろう。
といって、アルバムを買って聴いてみよう、と思うほどの興味もなかったから、そのまま忘却の沼に沈んでしまったのだった。

ところが、社会人になって、あるCDショップを覗いていた僕の目に、いきなり、Gruppo Sportivoの文字が飛び込んできたのだ。
中古のグルッポ・スポルティボだった。
迷わず買ってしまった。

今そのCDは、実家のどこかにあるはずだが、タイトルさえ思い出せない。
勇んで買ったもののやはり、僕を虜にするほどではなかったからだろうか。

グルッポ・スポルティボとはイタリア語で、スポーツのグループの意。
さしづめ「体育会系」といったところか。
イタリア語だが、しかし、オランダのバンドである。

ほかにも試聴できる音源が多数あるので、改めて聴いてみた。
どれも愛嬌とユーモアがあって悪くはないが、ケッタイなまでの、ぶっ飛びようでもない。
まあ、こんなところ、といった印象だ。

BJの話に戻ろう。
BJは、しかし、青白き秀才タイプでもキモヲタでもなかった。
手塚治虫のブラック・ジャックにちょっと似た、かっこいいやつだ。
ギターとドラムスを、かなり巧みに演奏し、歌もうまかった。
ビートルズとストーンズの名曲に自作の曲を加えて、弾き語りのテープを作り、僕に聴かせてくれたこともある。
なかなか味のあるパフォーマンスだった。

きっと何か、おもしろいことを、やらかしてくれるだろうと期待していたのだが、某高偏差値国大の経済学部を経て、某大手都銀に就職してしまった。

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