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【サピエンス全史(第1部 認知革命)】虚構の力と地上で最も危険な種

世界中で1200万部売れているという驚異的なベストセラー記録を叩き出している本書。
以前から興味があり、妻が上巻を読み終えるのを今か今かと待ち望んでいて、やっと僕の手に渡ってきた。

最初の20ページほどを読んで、その情報量に圧倒された。
これほどワクワクする知的な著書は無いだろうと、興奮を隠しきれない。

上下巻を読み終えてから感想を書いても、コンパクトにまとめるのは不可能だと早めに判断し、本書は上下巻合わせて全4部で構成されているため、部ごとにまとめていくことにした。

今回は第1部「認知革命」についての記録だ。

〜ヒト科ホモ属ホモ・サピエンス種〜

本書で著者は大前提として、僕たち人間の事を"人類"と言わず"ホモサピエンス"と定義している

かつての地上にはヒト科ホモ属に分類される哺乳類がサピエンス種以外に多くいたのだ。

ネアンデルタール人、ホモ・ソロエンシス、ホモ・フローレシエンシス、ホモ・デニソワ、ホモ・ルトルフェンシス…。
様々なヒト科ホモ属を総じて人類と呼び、その中で、僕たちの祖先であるホモサピエンスは唯一生き残ったヒト科ホモ属なのである。

なぜ、ホモサピエンスは唯一生き残った人類となれたのか?それは、ホモサピエンスは他のヒト科ホモ属より優れた認知という能力が発展していたからだ。

これが本章の主題である認知革命である。

〜認知革命とは?虚構の力〜

認知とは何か。
簡単に言えば、知性の事である。

いわゆる、道具を使ったり火を起こしたり言語を操ったり、といったことなのだが、
道具を使ったり火を起こしたりは他のヒト科ホモ属も出来たことであるし、言語はヒト科に限らず他の動物にもコミュニケーションをとるための独自の言語はある

では、ホモサピエンスだけが突出していた認知能力とは何なのだろうか?
それは、虚構(フィクション)である。

虚構は嘘とは違う。
例えば、サルが「近くにライオンがいるぞ!」と叫び、他のサルを退かせてその場所にある食物を独り占めする、という事は実際にあるが、これはいわゆる嘘である。

しかし、虚構とはいわゆる神話やファンタジーのような空想上の現実であり、これは社会上において膨大な力を発揮するのである。

他のヒト科ホモ属も集団生活を行っていたと考えられているが、それはせいぜい大家族程度の人数だった。社会学的には、集団が連携をとれるのは150人が限界だそうだ。
しかし、ホモサピエンスは1000人単位の集団で生活していたと言われている。その結束を作ったのが、虚構、いわゆる空想上の現実なのだ。

現代でも宗教をイメージするとわかりやすい。神の存在、という空想上の現実を信じる事で世界中で多くの人が結束するのである。

ホモサピエンスが空想上の現実を認知を基に作り上げていた事は、数々の証拠が残されている。例えば、頭が獅子で体がヒト、という現実にはあり得ない生物が壁画で残されていることもそうであるし、発見されたホモサピエンスの化石の中に幼い子供が動物の牙を輪の形に繋げられた装飾品を身につけて埋葬されていたものが発見されているのだ。その装飾品に用いられている牙の数を牙の持ち主であるキツネに置き換えると数百頭分にもなるというのだ。ホモサピエンスたちが1人の子供を埋葬するためにかなりの労力を使っていることがわかる。
狩や採集などで生活していたヒトにとって、まだ力のない子供を見殺しにする事があっても、そこまで手間暇をかけて埋葬する理由は考え難い。
しかし、そこに虚構の存在があれば、その子供が何かの神話において神のような存在で崇められていたのか、もしくは神への生贄として捧げられていたのかは不明だが、ホモサピエンスの中にあった空想上の現実が理由で丁寧に手間暇をかけて埋葬されたのだと説明がつけられる。

ホモサピエンスは数千年前の遥か昔において、フィクションや空想上の物語を作り出す事に長けていたのだ。
そして、その虚構の力がホモサピエンスを大勢の集団として結束させ、地上の支配者にしていったのである。

現代でも、アニメ、映画、小説、ドラマなど、様々な虚構が世の中に蔓延っている。
その力は文化的な生活を始める遥か昔からホモサピエンスに備わっていた他の動物には無い特殊な能力なのだ、と考えると数千年前のホモサピエンスの生活を想像するだけでワクワクしてしまう。

ちなみに、壁画や化石などでホモサピエンスが独自に虚構を作り上げてきた証拠は残っているものの、文書などが残っているわけではないので実際にどのような物語を描いていたのかは一切わからない。
その事実も、非常にロマンチックで心が高揚してしまう。

〜結束し力を持ち危険な種となったホモサピエンス〜

さて、結束し力を持ったホモサピエンスは、地上において最も危険な種となった

ホモサピエンスは船を作り大陸から大陸へ渡る手段も手に入れており、寒い地域に対応するため動物の皮で衣類作る術も持っていた。様々な技術を使い、様々な大陸から大陸へと移動を進めていった。

とある大陸にホモサピエンスが上陸した時期と、その大陸の多くの種が絶滅し生態系が崩れた時期が重なっており、その軌跡が多くの大陸で確認されている。

ホモサピエンスは次々と大陸を移動し、上陸した大陸を他のを絶滅させて支配していった、というのが証拠として残っているのだ。

虚構による結束の力で他の動物ではありえない大集団で行動して、地上の支配者となった。

そう、かつて人類は自然と共存して生きていた、という説は本書においては完全に否定されている。
ホモサピエンスはもともと他の生物を絶滅させて支配していく種であり、自然に対して悪影響となっているのは現代社会に限らなかったのである。

この説が正しいとすれば、自然破壊や絶滅危惧種などの環境保全の問題について、僕たちは考え方を改めなければならないだろう。
自然を元に戻すのではなく、種の生存方法から考え直さなければならないのかもしれない。

と、これが本書のまだ4分の1に過ぎない内容なのだが、これだけでもかなり濃厚で壮大な内容である。
まだこの記事を書いている時点では全て読み終えているわけではないが、この本はゆっくりと時間をかけて読み込んでいきたい。

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