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【日記エッセイ】「未知との出逢い ①」

僕は大学に入学してサークルを探していた。4月の初めは各サークルが僕たち新入生をサークルに勧誘する期間である。人がごった返していて、ビラを何枚ももらう。僕はどのサークルに入るか全然決めてなかった。

選択肢があり過ぎて迷っていると、背の高い、カッコいい男の人にビラをすっと渡された。そのビラには『自主制作映画サークル』と書いてあった。映画を自分たちで作る、僕の心は確かに踊った。

ある程度勧誘を受けた後、分厚くなったビラの中から自主制作映画サークルのビラを取り出した。そこにはBox232と書いてあった。Boxというのはサークルの部室である。僕は1人でBoxに向かった。階段を上がって扉の前に立った。なぜあんなに緊張したのだろうか。ドアの向こうは未知そのものだった。そのドアをノックした。

「はーい」と声がした。

恐る恐るドアを開けた。

中にはビラをくれた男の人が1人椅子に座っていた。

「あっ、どうも、サークルに興味があってきました」

「ほんとに!」

「あなたからビラをもらって興味を持ちました」

「それは嬉しいな、まぁ、座りなよ」

僕は辺りを見回した。

無数の漫画とDVD、VHS、分厚い本、映画のポスター、落書き、デカいパソコン、アンプ、木材やらヘルメット、テレビ、ゲーム、気持ちの悪い人形、プロジェクター、ソファー、毛布。

その全部が汚かった。

それを見た僕も僕で何かカッコいいと思ってしまった。理路整然としてない空間に入り込んでみたくなった。

「ご飯食べた?」

「いや、まだ食べてないです」

「じぁ、飯行こっか」

「ほんとですか!はい、行きたいです!」

これが始まりの始まりである。


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