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【日記エッセイ】「違和感のある電子辞書」

大学1年の授業が始まったばかりの頃である。ある英語の授業で、電子辞書が必要だと言われた。しかし、僕は電子辞書を持っていなかった。持ったことすらなかった。調べると、電子辞書というのは案外値段が高い、僕の手持ちのお金ではなかなか手が出せない。どうしようかと考えていると、ふと、実家にあるかもしれないと思った。見たことも使ったこともなかったが、なんだかんだ、親が昔使っていたとかで家のどこかにあるんじゃないかと期待を膨らませた。親も人生のどこかのタイミングで電子辞書を使ったろう、もしあったら、それを送ってもらえばいい、早速、父に電話した。

僕「もしもし」

父「もしもし、なんや急に電話してきて、なんかあったんか?」

僕「大学の授業で電子辞書が必要ぽっくて、家に電子辞書ってあったけ?」

父「ん?電子辞書ってなんや??」

僕「ん??」

僕の父は電子辞書をそもそも知らなかった。

はい、終了!おしまい!終わり!家に電子辞書があるわけがない。僕の膨らんだ期待は萎むというより割れた。

結局、僕は映画サークルの同期に電子辞書を借りることになる。大学近くのサイゼリアでサークルの人たちが、映画の話やウィットに富んだ会話をしている。そんな中で「親が電子辞書を知らなくて、実家に電子辞書がなくて、金もなくて電子辞書を買えないから貸してほしい」と言うのは違和感しかなかった。けれどそんな違和感をサークルの人たちは面白がってくれて、快く電子辞書を貸してくれた。

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