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コロナ禍で見つけた、近所のパン屋さんをめぐる冒険。


知らない場所へ行ったり、遠くへ出かけたりするのが好きです。
その地の景色を眺め、美味しいものを見つけるのが楽しみ。
が、今は、それができません。

どこか、行きたいな。
美味しいもの、食べたい。
でも今は我慢…。

そんなある日、ときどき買いにいく近所のパン屋さんへ行きました。
名前は「ナカヤ」。
数年前に改装してキレイになりましたが、今風の横文字の小洒落た店名ではありません。
アンパンが名物の、昔からある町の美味しいパン屋さんです。
近所といっても少し遠くて、いつもなら自転車でサーっといくのですが、その日は散歩がてら歩いていきました。

あ、梅の花が咲いている。
そういえば子供が小さい頃、この神社で豆まきしたなぁ。

そんなことを思いながら、パン屋さんへ。
名物のアンパンや惣菜パンなどをトレーに載せ、たまにはパン屋さんの食パンも買ってみるか、と手に取りました。

家に帰って、分散登校で午後から学校の長女と一緒に、いつもより豪華なお昼ごはんです。

やっぱナカヤ、美味しいねぇ。
食パンもあるよ。考えたら初めて買ったわ。
明日の朝、食べよう。楽しみ。

そして翌朝。
いつも食パンはトーストですが、ふわふわなので、そのまま食べることに。

うわ、何これ、美味しいー!!

ふんわりしっとりとした口当たり、優しい甘さ。
まさに高級食パンのお味に、びっくり!
美味しいパン屋さんなんだから、食パンも美味しくて当たり前かもしれない。
でも、なんとなく、高級食パンというものは、都心のデパートや小洒落た住宅街にあって、遠くまでわざわざ買いにいくもの、そう思ってました。
まさか、ぜんぜん小洒落てないこの町の、昔からあるパン屋さんで、こんな美味しい食パンが買えるなんて。

地元、スゲー!!

そして思いました。
出かけるたびに、アンテナを張り巡らせて美味しいものをチェックしていたけど、地元でそこまでしていたかな。
メディアに取り上げられたり、新しくできたお店はチェックするけど、そこまで気にしてなかったかも。

そうだ、ほかにもどんなパン屋さんがあるか調べてみよう。

そこで次の週末、長女と次女を誘ってパン屋さん散歩をすることに。
家から少し遠くの「おかもとパン研究所」というパン屋さんへ行きました。
時刻は昼過ぎ。
美味しいパンを買って、お昼ごはんで食べようね、なんて話しながらお店に入ったら、陳列棚には何もなく、ほぼ売り切れ。

茫然とするわたしたちに、お店の方が申し訳なさそうに言いました。
「すみません…。午前中で、ほとんど売り切れてしまうんです」
なんと、残念!!
でもそうだよね、手作りのパン屋さんだもの。
いつ行っても陳列してあるスーパーやコンビニとは違うよね。
こちらこそすみません、次は早めに来ます、と、スコーンやマフィン、そして辛うじてまだあった食パンを買いました。

お店を出て、
ほかのパンも食べたかったね。
また買いに来ようね。
と言いながら、長女はきょろきょろ。

この道、初めて歩いたかも。
へー、路面電車の線路跡?
ここを都電が走ってたんだ。
知らなかった。

地元って、案外、知ってるようで知らないものです。
いつも自転車でガーッと走っているけど、目的地に着くことばかり考えていて、まわりに目を向ける余裕はありません。
そこで、帰りは行きと道を変えて、江戸時代に水路として発展した運河沿いの遊歩道を歩きました。
「なんか楽しい」
子供たちは何度もきょろきょろしていました。

途中で唐揚げも買って、その日のお昼ごはん。

「ナカヤ」とはまた違う美味しさです。
パンそのものの旨みと、もちもち感が食べ応えあり。
「ナカヤとは違うけど、ここの食パンも美味しい」と、子供たち。
たしかに。どっちも美味しい。
むむむ…パンの世界は奥深い。

別の日は、ひとりでパン屋さん散歩。
そこそこ近所で、こんなところにパン屋さんがあったんだ、という場所です。
長女の言葉を思い出して、住んでいる町を楽しんで歩いてみることにしました。
行きと帰りで、道も変えてみよう。

なんだか新鮮です。 
昔ながらの豆腐屋さん、そういえば一度も買ったことがない。今度、買ってみようかな。
トタン屋根の建物かぁ。わたしが子供の頃は、あちこちにあったなぁ。懐かしい。
うわ、この銭湯、創業90年!? すごい!!

いつもはさらっと通り過ぎる道を、旅行者のように歩いてみる。
自転車ならあっという間に着く場所へ、時間をかけて歩いてみる。

そうだった。
わたしはこうやって歩きながら、景色を眺めて、美味しいものを見つけるのが好きだったんだ。

へー、こんなところにカフェがある。
テイクアウトもできるんだ、美味しそう。

出かけた先で美味しそうなものを見つけると、多少高くても、つい買ってしまいます。
でも、ふだんは財布の紐をきっちり締めて、買い物は安いスーパーで。
オンとオフは大切。
だけど、たまには、自分の住む町の、いろんなお店で買うのもいいかもしれないな。

この日のパン屋さんは「はつたもの」という、ちょっと変わった名前のお店です。
砂糖も添加物も使わず、自然の味を大切にした、身体に優しいパンやお菓子を作っているそうです。
とても小さいお店ですが、お店の方の説明が丁寧で、愛情を込めて作っているのが伝わってきました。

この日のお昼ごはん。

牛蒡とお麩を煮たものを入れたパン。
餡子のパン。
みかんジュースを練り込んだパン。

砂糖を使っていないせいか、口に入れた瞬間の甘みはありません。
だけど、素材の味をしっかり感じる。
なにより生地がみっしりしているんです。
しっかり噛んで、味わって。
パンはそんなに大きくないのに、食べ応えがありました。

すごい。
パンって、美味しい。
どこのパン屋さんが一番、とかじゃない。
「ナカヤ」も、「おかもとパン研究所」も、「はつたもの」も、それぞれ違って、それぞれ美味しい。
パン、面白い。

近所の気になるパン屋さんは、もっともっとあります。
いろんなパン屋さんをめぐっていきたい。
一気にめぐらず、ひとつひとつ、めぐりたい。
パン屋さんへ行く道のりも含めて、楽しんでいきたい。

これはもう、パン屋さんをめぐる冒険です。
今まで遠くにばかり目が向いていたけれど、自分が住むまわりにも、美味しいものがあり、いろんな景色がある。
コロナ禍で我慢することも多いけど、
身近なところにも、楽しいことはちゃんとありました。

そして、この冒険は、いろいろ応用できそうです。
たとえば、
豆腐屋さんをめぐる冒険、
和菓子屋さんをめぐる冒険、
テイクアウトをめぐる冒険、
なんていうのもいい。

今年は、住んでいる町を歩いて、楽しくて美味しい冒険をしよう。
そしていろんなことが落ち着いたら、別な場所に住む友達を呼んで、おらが町自慢ツアーをやろう。
それが今年の抱負です。













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