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だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口 2022.12.05 1/3

【『日経ビジネス』の特集記事 】 No.37

✅はじめに

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。
Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


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日経ビジネスの特集記事 37

だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口 2022.12.05 1/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

数十年前を振り返ってみますと、当時、産業スパイという言葉が新聞紙面を賑わしていたという印象があります。紙の新聞はもう何年も読んでいないので確かなことは言えませんが、ネットニュースにも「産業スパイ事件」が滅多に取り上げられることはなかったように思います。

ただし、産業スパイや産業スパイ事件が減少したのではなく、手口がますます巧妙になり、摘発し難くなってきているかもしれません。

産業スパイとは

産業スパイは、企業の経営的・技術的な情報を不正入手する諜報員を指します。これは国内(もしくは国内外)の企業間で行われるほか、先進的な技術を入手するため、あらゆる手段を用いた網羅的かつ体系的な、国家ぐるみの産業スパイ網も存在するといわれています。

産業スパイとは?その手口と法的な調査方法を解説
デジタルデータフォレンジック

2種類の産業スパイ

1 転職者スパイによる諜報活動

転職者による諜報活動の多くは、社員を外部勧誘し、転職を決意させ、転職先での高待遇と引き換えに競合他社の機密情報を提供させるというものです。また、高待遇や金銭を得ることを目的に、自らスパイ行為を行うような事例も存在します。

産業スパイとは?その手口と法的な調査方法を解説
デジタルデータフォレンジック

2 退職者スパイによる諜報活動

退職者による諜報活動の多くは、データなどの情報を持ち出すことはせず、本人が持っている知識や技術をすべて競合他社に提供するというものが大半です。
またこの場合、本人が既に退職していることもあり、阻止すること自体が困難とされます。

産業スパイとは?その手口と法的な調査方法を解説
デジタルデータフォレンジック

⭐出所: 産業スパイとは?その手口と法的な調査方法を解説 デジタルデータフォレンジック 2021年10月1日 / 2022年3月18日


本題に入る前に、産業スパイについて書いた理由は、最近、機密情報の漏洩や特許侵害の疑いのある事案が出てきたので先に取り上げました。


最近頻出している専門用語に知的財産(知財、IP=Intellectual property)ないしは知的財産権(Intellectual property right)があります。

ものづくりの先端技術から、改良を重ねた農産物の種苗まで、ハイクオリティーを売り物にしてきた日本の知的財産が闇に紛れて流出し続けている。

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PART 1 「ジャパンクオリティー」根こそぎ   製鉄技術から果実まで 模倣では年3兆円損失

とても看過できない実態が記されています。

工業製品、農産物、化粧品──。虎の子の独自技術があっさりと流出している。模倣品による経済損失は世界で70兆円、日本で3兆円を超すと試算される。巧妙化・高度化する手口に、日本企業が振り回されているのが現実だ。

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以前から中国企業による模倣品について問題視されてきました。
例えば商標権について言えば、日本国内で商標登録されている商品が中国国内で全く同名の商品を商標登録し、日本製品の販売を排除するということが頻発しています。社名にしても同様です。

✅商標権とは

商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます
商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。
権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。

商標権と商標出願 日本弁理士会                   
                        

✅日本製鉄のケース

日本製鉄は2012年、電力インフラの変圧器などに使う「方向性電磁鋼板」の製造技術情報が盗まれたとして、ポスコとその技術者らを相手取り、提訴した(日鉄とポスコは既に和解)。日鉄側は元技術者4人が情報流出に関与したと名指しした。

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元技術者4人のうちの1人が詳細に語っています。概略だけを取り上げます。

男性は1955年、日鉄に入社。八幡製鉄所内の電磁鋼板工場に配属され、電磁鋼板設備を開発・改良するエンジニアとして37年間勤務、定年を待たずに自主退職した。その後、鋼板の熱処理炉設計などを行う会社を設立し、ポスコなどの外国鉄鋼メーカーと取引するようになった。

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その後、韓国のポスコから誘いがあり、韓国に渡ったそうです。その男性は

日鉄時代に取得した電磁鋼板の製造設備装置に関する特許は、出願後20年で切れ、発明者に帰属することになる。それを待ち、2002年ごろにポスコの技術指導者として韓国へ渡り、5年ほど働いた。

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「男性は中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄にも自らの技術を売り込んだ」
(p.012)そうです。
ところが、思いがけないことが起こります。

「あなたの技術はもう知っている」と言われたのだ。実際、自分しか知り得ない技術情報を披瀝(ひれき)された。
「技術指導をしたポスコの誰かが、宝山側に漏らしたに違いない」。それはすぐに判明した。知人のポスコ元社員が、宝山に製造技術を流出させたとして韓国で逮捕、起訴された(08年に有罪確定)。カネに困り、密通したのだ。ポスコ元社員は裁判で、日鉄から教わった技術を宝山に開示したと証言した。

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✅日鉄は宝山鋼鉄とトヨタ自動車を提訴

日鉄はこの事態を看過できず提訴に踏み切ります。

日鉄は、トヨタ自動車も使用する宝山鋼鉄製の電磁鋼板が特許を侵害しているとして21年、両社に損害賠償を求めて提訴した。トヨタは日鉄の大口顧客だが、法廷で闘うことを選択した。毅然たる態度を示さなければ、漏洩の脅威から日本の技術を守れないという危機感の表れだ。

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✅危機感の表れ

高品質を売りにした日本の技術の情報、製品、サービスの数々が今、海外流出の危機にさらされている
ウクライナ情勢の緊迫化を背景に欧米諸国と共産国家との緊張が高まる中、安全保障の裾野が外交・防衛分野だけでなく、経済分野にも及んでいる。

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次の図表をご覧ください。今までメディアはこうした事案をほとんど取り上げてきていませんでした。商標権侵害事件も営業秘密侵害事件も減ってはいません。営業秘密侵害事件は年々増加しています。

営業秘密漏洩の検挙数は増加
●商標権と営業秘密の侵害事件の検挙数
だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口
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中国企業にはこうした行為に対する「恥ずかしさ」というものがないのでしょうか? 「手段が目的化」しているのでしょう。目的のためならどんな手段を講じてでもモノにするという心構えなのです。

最近は中国への技術流出が多い
●海外の企業に技術が流出したとみられる主な事案
だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口
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民生技術でも軍事転用される可能性が・・・・・・
●軍事転用の可能性が指摘される製品や素材
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✅現地従業員を信じすぎた

東レのケース

東レといえば、ユニクロのヒートテックやエアリズムに使われている機能性繊維のメーカーとして知られていますが、航空機のボディに使われる炭素繊維でも有名ですね。

その炭素繊維に関連した技術が流出したことがありました。

「軽くて強い」という特長を持ち、航空機などの分野で使われる炭素繊維は、性能の高さから日本勢が世界シェア上位を占める。軍事産業の重要素材にもなることから、経済産業省は輸出許可を得た取引先以外の企業への販売を禁じている。
そんな日本が誇る炭素繊維も20年、許可を持たない中国企業へあっさり流出したことが発覚。被害に遭ったのは、米ボーイングの中型機「787」などに供給し、シェアトップの東レだ。
子会社の東レインターナショナルの中国子会社で働いていた現地採用の従業員が販売していた。

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もう少し、経緯を読んでみましょう。

東レは「当人を信頼しすぎ、チェック体制が甘くなった隙を突かれた。輸出管理体制に不備があった」と釈明する。

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中小企業の経営者は自社技術を過小評価していることがあります。

公安調査庁の担当者は「日本の中小企業の経営者は自分たちの技術を過小評価する傾向がある。流出に対する危険意識が相対的に低い」と警鐘を鳴らす。
21年、国の許可を得ずに商社を通じて中国へ不正輸出したとして、警視庁がある中小企業の精密機械メーカーの経営者を書類送検した(その後不起訴)。
軍用ドローンの残骸から、この企業の製品が見つかったと国連の報告書が指摘した。同社の関係者は「商社の人を信頼していた。軍事転用されるなんて考えたこともなかった」と肩を落とす。

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✅品質登録しなかった代償

ぶどう「ルビーロマン」

他国に盗まれているのは工業製品だけではなく、農産物や化粧品、ロゴなどがあります。

実態を見てみましょう。

「流出していると話題になっても、自分たちではどうにもできない」。こう嘆くのは、石川県が14年かけて開発したブドウ「ルビーロマン」の生産関係者だ。種苗が持ち出された先は韓国。その経路は不明というが、ソウル市内の高級百貨店などで売られていることを県の担当者が確認。遺伝子検査の結果、石川産ルビーロマンと同じDNA(遺伝子)型が検出され、関係者からため息が漏れた。

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ルビーロマンの基準

日本で「ルビーロマン」を名乗るには、厳密な基準をクリアしなければならない。糖度は3粒平均で18度以上、粒の重さは同20g以上といった具合だ。

      だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口 2022.12.05                                p.015          

どこか他でルビーロマンだったか、韓国で売られていたものと日本のものとは同じ種苗であってもまったく違うものだったという記事を読んだことがあります。

種苗が同じでも、環境や育成の仕方でまったく違うものになるということです。韓国で販売されていたルビーロマンは、グジュグジュしていて美味しくなかったという報告がされていました。

問題はどのような経緯で流出を防げなかったかです。

今回流出が確認された韓国産は、隙間があるなど房の形が整っておらず、色づきもまばら。糖度は16.7度と基準を下回っていた
なぜ流出を防げなかったのか。多くの農産物は新品種として開発された後、知的財産として保護する「品種登録」と呼ぶ手続きを踏む。これは輸出先の国ごとに必要だ。

石川県は当初、海外向けとして香港やシンガポール、台湾の富裕層を想定し、韓国での品種登録をしていなかった「登録までに一定の期間や相当のコストがかかる」(県生産流通課)といった事情もあった。それが結果的に、流出という大きなツケを払う事態を招いた。

       だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口 2022.12.05                                 p.015         


次の画像をご覧ください。こんなにも違うのかと愕然としました。
別の品種かと思いました。

石川県産のルビーロマン(左)と比べ、韓国産(右)は
隙間があるなど房が整っておらず、
色づきがまばらな様子も一目で分かる
        だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口 2022.12.05                                  p.015
 


高級ブドウ「シャインマスカット」の場合、「損失は年間約100億円を下らない」(p.015)そうです。
 

多大なコストをかけて開発した品種が持ち出されている
●日本から海外に流出した農畜産物の例
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以前から問題視されていたのは、日本のロゴや社名を真似て中国国内で登録し使用していることです。パクリと言う言葉で表現するだけでは物足りません。

誤った行為でした――。中国の雑貨店大手、名創優品(メイソウ)が8月、店舗や商品、宣伝などが「日本風」であることを陳謝する声明をSNS上で発表した。同社は「MINISO」や「メイソウ」のブランド名で雑貨店を展開。

ロゴが日本企業の「ユニクロ」「ダイソー」「無印良品」に似ていることは指摘されていたが、同社は言及を避けてきた。ところが、中国共産党系メディアの人民網で「ロゴや商品など、すべてが日系の味わい。ユニクロなどを連想させる」と批判されて態度を一変。

「日本をまねしていました」と認める形に。そんなメイソウは店舗数がユニクロの約2400店をしのぐ世界約100カ国で5000店を超え、“本家”よりも急成長を遂げている。

     だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口 2022.12.05                                 pp.016-7         


       だだ漏れニッポン 技術、情報狙う「盗み」の手口 2022.12.05                                  p.015 

どうして自分たちでデザインしないのかと思いますね。
もっとも、戦後、日本も「猿真似」と長い間揶揄されたことがありました。
イエローモンキーという侮蔑的な言葉を吐かれた経験のある人たちがいました。


次回は

PART 2 企業活動も最高学府も隙だらけ     ここが危ない 浮かぶ3大流出リスク


をお伝えします。


🔷 編集後記

中国や韓国にいいようにやられている現状は看過できません。
日本政府は抗議するだけでなく、法的措置を取るということはできないのでしょうか?

企業だけでは限界があります。特に中小企業は泣き寝入りするしかないのでしょうか?

さらに、国内の法整備が不十分であることも問題です。
法の網をくぐるという言葉がありますが、これだけやられまくっていることに憤りを感じます。

IP(知的財産)の保護と同時に損害賠償請求をもっと積極的に行なうことが求められます。国際問題になると厄介だとして国や政府は尻込みしがちですが、これではこれからもやられ続けることになります。



日経ビジネスはビジネス週刊誌です。日経ビジネスを発行しているのは日経BP社です。日本経済新聞社の子会社です。

日経ビジネスは、日経BP社の記者が独自の取材を敢行し、記事にしています。親会社の日本経済新聞ではしがらみがあり、そこまで書けない事実でも取り上げることがしばしばいあります。

私論ですが、日経ビジネスは日本経済新聞をライバル視しているのではないかとさえ思っています。

もちろん、雑誌と新聞とでは、同一のテーマでも取り扱い方が異なるという点はあるかもしれません。

新聞と比べ、雑誌では一つのテーマを深掘りし、ページを割くことが出来るという点で優位性があると考えています。


⭐ 回想録


⭐ マガジン (2023.02.14現在)

    


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