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[新型コロナウイルス影響インタビュー]第8回 岩手県在住の主婦の場合(2)──パート先で感染の恐怖。収入激減で厳しい状況に

知人友人に新型コロナウイルスの影響について聞く趣味インタビュー企画。8人目は岩手在住の主婦。連載2回目の今回は、ずんこさんやお子さんたちの新コロの影響について語っていただきます。(1)からの続きです。

パート先で感染の恐怖

──ずんこさん自身はこれまで感染の不安はなかったですか?

いわて花巻空港に1つだけあるレストランと花泉のイタリアンレストランでパートで接客の仕事をしているんですが、空港のレストランは、近くにスキーリゾートがあるので中国人客が多いんです。1月頃は大勢の中国人客をマスクもしないで思いっきり接客してたから、世間が新コロで騒ぎ始めた頃、もう完全に感染してる、いつ発症するかってビビってました。パート仲間とも「私たち、もうコロナに感染してるね」って話してたり(笑)。結局誰も感染してなくてよかったです。

──それ恐いですね。仕事的にも新型コロナウイルスの影響は受けてます?

ものすごく受けてます。その花巻空港のレストランは11時から19時勤務で、月に4〜6日ほど働いていたんですが、2月ごろからシフト減って、4月の終わり頃から休業して仕事がなくなったんですよ。売店も全部休業してますね。(※5月18日からは国内、国際線の全発着便が運休している)

そのレストランを経営していたのは、岩手県内のスキー場を経営してる会社なんですね。空港にレストランを作ったのも中国人客を見込んでのこと。再開したとしてもしばらく中国人は来ないでしょうし、他に県内にもホテルを経営しているんですが、県をまたぐ移動はするなって言われてるじゃないですか。県内からわざわざ泊まりに行く人なんていないから……。

──なるほど。やっぱり観光業は厳しいですね。

厳しいですよ~。特に観光業は飲食業より厳しいと思います。飲食店は今再開している店も増えてるし、お客さんも戻りつつあるじゃないですか。観光業は全然目処がついていなくて、まだしばらく時間がかかるでしょうからね。一番の不安は仕事です。

──もう1つのパート先の花泉のイタリアンレストランの方は?

コロナ前は10~15時くらいまで勤務で、月に15か16日ほど入っていたのですが、同じく2月ごろからシフトが減って5月中旬から休業。5月中に働いたのはわずか4日だけでした。6月1日から営業再開したのですが、最初の週はお客さんがほとんど来なくてガラガラでした。でも週末あたりからお客さんが急に増えてすごく忙しくなって。私も10日に久々に働いたのですが、常連のお客さんがすごくたくさん来て、テーブルは常に満席状態でした。外で待ってるお客さんも結構いて。

仕事中はもちろんマスクを着けているのですが、10日は気温が30度以上あったので、エアコンを稼働させてても、かなりつらかったです。具合が悪くなりそうでした。でも働けるようになったこと自体はありがたいですし、久々の仕事は楽しかったです! 忙しく働くのは、本当に性に合ってると思いました。

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収入激減で生活が厳しく

──なるほど。でも全体的には収入が減って困りますよね。

そうなんですよ。休業補償なんてないので。そもそもパートで微々たる収入とはいえ、半減どころじゃないからすごく厳しいです。1万、2万違っても生活に響くので。家のローンもまだまだ残ってるし、最近小学校の副校長をしてる夫が転勤になって、出費が増えたのでなおさら大変です。10万ぽっちの給付金じゃ全然足りません(笑)。本当にこの先どうなるかすごく不安です。

若い頃はよそのお家の、50歳過ぎて子どもが独り立ちしても働いている奥さんを見て、なんで働かなきゃいけないんだろうと思ってたんですが、自分がその立場になったらわかりました。年金なんてまだまだもらえないし、もらえたとしても微々たるものだし、子どもが独り立ちしても悠々自適の生活なんて夢のまた夢でした(苦笑)。

このままの状況が続くと、新しいパート先を探さなきゃいけないですね。農業がしたいからリンゴ農家とかいいかなと思ってます(笑)。

──学校は東京は最近やっと始まりましたが、岩手ではどうだったんですか?

休校は3月までで、4月からは開校になって普通に働いています。

──へ~さすが岩手!

とはいえ岩手も休校になってた学校もあればなってない学校もありました。関東から陸前高田の病院にお手伝いに来たお医者さんが感染して、その後しばらく陸前高田や大船渡は危ないってことで休校になってました。あとは盛岡の一部の学校を除けば、4月から始まってます。

コロナ渦中での日々の暮らし

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──コロナ渦中での日々の暮らしはいかがでしたか? 東京ではトイレットペーパーやマスクが長らく買えなかったり、一時期はスーパーから食料品が消えたり、大行列になったりして大変でした。

3月頃は岩手でもトイレットペーパーが買えなくて大変でしたよ。マスクはずっと、今も手に入りづらいです。スーパーは食料品が消えるということも行列になることもなかったし、今もお客さんは普通の数だと思います。

息子が2人、東京にいるんですが、次男の方が「トイレットペーパーがあと2ロールしかない」って言ってて、最初は「なんとかしのげ!」とお互い笑っていたんですが、結局かわいそうになって、家にあったのを送りました。

3.9トイレットペーパー

▲トイレットペーパーを送った長男のインスタより

──ずんこさんも感染しないように気をつけてます?

もちろんですよ。初期の段階から手洗い、うがいはもちろん、ちゃんとルールに則ってやってました。

──普段はどんな生活なんですか?

前にお話した通り、コロナのせいで仕事がなくなっちゃったので暇してます。基本的にはちゃんとステイホームしてますよ(笑)。

──家にいる間はどんなことをしてるんですか?

主に本を読んでます。活字中毒なので(笑)。

──どんな本を?

友達に勧められて沢木耕太郎の『深夜特急』を読んでるんですが、すごくおもしろくてハマってます。こんな人生あるんだと思って。家に引きこもってるのに、気持ちは雄大なユーラシア大陸をザックひとつで横断してる感じ。どこにも行けない生活を支えてくれました。若い頃に読んだら人生変わったかもって思いますね。世界が広がるというか。

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あと読書と言えば、前にたけちゃんがFacebookで紹介してた『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(奥野克巳/亜紀書房)もすごくおもしろかったです。私、あれを読んで、お客様にへりくだるのをやめました。そもそも飲食店もライブと同じで店とお客様は対等というか、店とお客様とが一緒になって盛り上げるものだと思うんですよ。もちろん大前提としてお客様に失礼なことや不利益となることはしちゃいけないんですが、あまりへりくだるのはよくないな、お客様もつまんないなと思って。

──素晴らしい!

私、感情移入が激しいというか本を読んでても入り込んでしまう、影響を受けやすいんですよ(笑)。

──他に家の中でやってることは?

4月の頭にファミリーピンポン台を購入して夫とピンポンやってます(笑)。これが想像以上によくて。家で楽しく身体を動かせるのでコロナ太り解消にもなるし、何より何もかも忘れて、夢中になれるのが幸せです。折りたたみ式だから、飽きたらアウトドアのテーブルにもなるし(笑)。

4月3日ファミリーピンポン購入2

──それすごくいいですね。卓球台がおける広い家に住みたいっす。他には?

月4日しか働いてない私に同情して、夫がパズルを買ってくれました。だから最近は読書とパズルと卓球の繰り返しですね(笑)。

──外出はせず?

夫が休みの日にたまに出かけるくらい。先日は家のすぐ近く、散歩のついでに山菜取りをしました。あんな家の近くにワラビやコゴミ、ウドが生えててびっくりしました。ウド食べたことあります? ウドは酢味噌やきんぴらがおいしいんですが、新芽を天ぷらにすると最高においしいんです。山菜の中で一番好きです。

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──好きな登山は行ってないんですか?

3月初旬以降は行ってません。ちゃんと自粛してます(笑)。行っても大丈夫なんでしょうけど、万が一熊に襲われたり、滑落したりしたら救助隊や病院に迷惑をかけるのがイヤなので。今回のコロナはただ事じゃないなと思うので、やっぱりちゃんとしておかないと嫌なことが起こるような気がして。長らく夫と一緒に山を眺めながら我慢してました。

でもやっと5月30日に久々に夫と一緒に山歩きしてきました。源太が岳から三ツ石山までの15キロの縦走です。久しぶりの土と木と緑のむせるような匂いをお腹いっぱい吸い込んで、自然に戻れたうれしさにむせび泣きました(笑)。あと6月7日には大好きな女神山に登りました。ただ、山の中ではあまり登山客とは出会わず、まだずいぶん自粛ムードです。

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▲3月初旬、姫神山にて

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▲5月末の縦走登山、三ツ石山にてご主人と

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▲6月6日の女神山、白糸の滝(左)、9日の室根山にて(右)「室根山では生まれて初めて一人登山しました。東には気仙沼の街並みと海が、西には鳥海山も見えました。ツツジもきれいに咲いていました。室根山は中学生の遠足コースだけあって、観光客もけっこう来ていました」

コロナ禍による精神状態

──精神的にはどうでした?

周期があって、何をしてるわけじゃないし、何も傷つけられるわけじゃないのに、ものすごく不安に押しつぶされそうになる時もあれば、そういうのを一切感じずに不思議とケロッとしてる時もあって。また、そこまで厳しく規制しなくてももうちょっと自由でもいいんじゃないのと思う時もあれば、都会の人混みを見たらいやいやみんなもっとちゃんとしてよと思う時もあったり。

──誰でも気分の波はありますよね。

ありますよね。この数ヶ月、やっぱりそういう周期、バイオリズムをリアルに感じましたね。仕事で忙しい時はそういうのを一切感じずにそのままさらっと何ヶ月も過ぎるのに。だから忙しくしてないとダメって思いました。考えることはいいことではあると思うんですが、考えすぎというか、無駄に考えちゃう、不安になっちゃうというのは全然生産的じゃなくて。ほんと、あの時感じていた不安は何だったのかなと思いますよ。少し忙しくしている時の方が自分としてはいいかなと思いました。みなさん同じでしょうけどね。

──それすごいわかります。暇になるとろくでもないことばかり考えちゃいますからね。

たけちゃんでもそうですかやっぱり。

──もちろんです。1ヶ月以上、仕事がゼロな状態が続いたので、暇だとヘンなことばっかり考えちゃうので。

考えますよ、ほんとに。亡くなられた飲食店の経営者のニュースを見たりするとなんでそうなっちゃうかなと思って。そもそも死ななきゃいけないような責任なんて誰にもないじゃないですか。こういう状況だからこうなってしまったけど、なんで死ななきゃいけなかったんだろうと。

バンドマンの長男、新コロ直撃

──お子さんたちは元気ですか?

長女、長男、次男の3人いるんですが、おかげさまでみんな元気です。長男と次男は東京で、長女は仙台で働いています。

ただ、次男は家で仕事できるようになってたからいいんですが、長男はリモートワークができなくて、3月中旬頃まで埼玉の蕨から渋谷まで満員電車で通勤してたんですよ。ものすごく心配してたけど、今の所大丈夫そうでよかったです。

──埼京線は都内でも1、2を争う混む路線ですからね。

そうなんですね。発症しても不思議じゃないと思ってたので、よく発症しなかったなと。20代のお相撲さんがコロナで亡くなったじゃないですか。それがものすごいショックで。20代の若い人も亡くなるんだと。ちょうど息子と同い歳くらいなので不安になりました。

──そりゃ不安になりますよね。長男はバンドマンでしたよね。バンドマンもコロナ禍直撃ですよね。

そうなんですよ。BRAVE in HEADというロックバンドでボーカル&ギターを担当してます。コロナ前は吉祥寺とか新宿のライブハウスでライブをやってて、夫と一緒に観るために上京してました。コロナの感染拡大が始まった2月以降はクラスターが出たと名指しで非難されたので全くライブ活動はできてません。

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▲ずんこさんの長男、「BRAVE in HEAD」のボーカル&ギターの齋藤光悦さん。筆者もお会いしたことがあるが高良健吾似の大変なイケメンである


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▲これまで2枚のアルバムをリリースしている(写真はセカンドミニアルバム『REAL』)

──ステージに立って演れないというのはつらいでしょうね。

そうですね。もちろんライブをやりたいという気持ちは強いだろうから、かわいそうですよね。でも長男はある会社で正社員として働いていて、とりあえず生活はできてるので大丈夫なんです。

──ずんこさんとしても正社員の方が安心ですよね。

最初はバイトだったんですが、コロナ騒ぎのちょっと前に正社員になったんですよ。今となっては安心ですね。

でもバンドオンリーでやってるミュージシャンやライブハウスを経営してる人も大変ですよね。

──ですよね。ライブハウスを潰しちゃったら生活の糧と生きがいが失われてしまうわけですからね。

ライブハウスが軒並み営業自粛してるじゃないですか。その中で、潰れてるライブハウスもけっこうあるみたいなんですよ。長男はお世話になったライブハウスに連絡してるみたいですが、とにかく厳しいし、もし感染者数が減ってもすぐお客さんが戻るわけじゃない。だからライブハウスも飲食店より厳しいと思いますよ。音楽だけじゃなくても落語家とか演劇とかライブ活動をしている人はすごい不安でしょうね。だから長男もこれからバンド活動をどうするんだろうと心配です。とりあえず今は他に仕事をもってるので、そっちを頑張ってるとは思うんですが、自分らしく音楽を続けていきたいと考えているようですので、今まで通り見守っていきたいと思います。

──次男の方は?

次男は2年前に就職で上京して施工管理の仕事をしてるんですが、早くからリモートワークができるようになってたから安心でした。リモートワークでもすごく忙しいらしいんですよ。でもこれから新コロで業績悪化や倒産する会社が増えたら受注が減るからやばいかもって言ってましたね。

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長女は結婚式が延期に

──コロナの影響、長女には?

めちゃめちゃありました。仙台駅のショッピングモールで働いているんですが、まず4月18日から5月10日まで休業となりました。仕事は11日から営業再開しているのでいいのですが、プライベートが大変だったんですよ。

娘は昨年入籍して、今年の6月6日に結婚式を挙げる予定だったんです。おもしろい披露宴で、会場はいわゆる式場じゃなくて、自然豊かな野外。ブライダルコーディネーターの方がいろいろと相談に乗ってくれて、計画を立ててくれてね。

でも新型コロナの感染拡大でどんどん状況が悪化して、3月末くらいまでは何とかやりたいと言ってずいぶん準備してたんですが、いくら野外とはいえ感染のリスクはあるので結局泣く泣く中止せざるをえなくなりました。野外だから晴れればいいなと天気だけ心配してたのに、まさかこんなことになるとはね……。

本人もずいぶん落ち込んでいましたよ。親としても楽しみにしてたし、何とかやらせてあげたかったのですがこればかりはしょうがないですよね。

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▲長女が披露宴を行う予定だった自然豊かな会場

──残念ですね。

でもコーディネーターの方にお話したら、こういう状況なのでしょうがないですとキャンセル料をなしにしてくれたんです。中にはすごいお金を払わなきゃいけない人もいたみたいで、そういう人は大変ですよね。

──不幸中の幸いでしたね。

でも来年できるかなあと。たぶん無理ですよね。

──こればっかりはわかんないですよね。

そうですよね。だから娘には「来年できるかなあと心配するよりは、先に子ども作っちゃえば? 何年か先になって子どもと一緒に結婚式挙げればいいんじゃないの?」って言ってるんです。そしたら「その頃ウエディングドレスを着れるかわかんない」って。でも年齢のことを考えると子どもを産むのは早い方がいいかなと思うんですよね。

──そうですよね。じゃあお子さんたちはGWも帰省せず?

3人ともせず、です。

──長女、仙台からでも帰るのは難しかったですか?

私達夫婦も50代なので、もし自分がウイルスを持ってたらと私達のことを気にして帰らなかったんでしょうね。

──じゃあ今年のGWは寂しかったですね。

子どもたちは毎年GWや年末年始には帰ってきてるんですが、こういう感じでLINEとかで顔を見ながら話せますからね。東日本大震災の時はそれすらできなかったので、震災の時を思えば全然ましです。あと今年の1月に会ってるから寂しいって感じでもないです(笑)。今は3人とも元気でいてくれているので、何の不満もありません。

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ますます盛り上がるずんこさんとのLINE呑み。ずんこさんはおいしそうな手料理を肴に南部美人を無限にグビグビ。さすが東北の女は酒が強い! 話はコロナ関係から、これまでの人生の話へ。第3回では番外編としてずんこさんの死生観について語っていただきます。乞う、ご期待!


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