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[新型コロナウイルス影響インタビュー]第8回 岩手県在住の主婦の場合──息子の婚約者がコロナ病棟で働く事になった時、娘を戦地に送り込む心境だった

新型コロナウイルス(以下、新コロ)の影響で仕事や私生活がどう変わったか、今どんなことを考えているか、個人的対策、そして今後のプランなどについてオンラインで身近な友人知人にインタビューする趣味企画。第8回は、まだ1人も新コロ感染者が出ていない岩手県在住の主婦・齋藤順子さん(54歳)にご登場いただきました。

いつも「ずんこさん」とお呼びしているのですが、ずんこさんと知り合ったのは2016年なのでもう4年の付き合いですか。きっかけはFacebookでの逆ナンです(笑)。その経緯は後ほど詳しく書きます。

さて、岩手に暮らす普通の主婦に新コロはどのような影響を及ぼしているのでしょうか。LINEで呑みながら話し出すと一瞬にして時間は過ぎ去り、気がつけば5時間ほど経っていました。完全にベロンベロンです。その模様を全4回でお届けします。(取材日:5月13日、6月8日)

【プロフィール】さいとう・じゅんこ。1965年、岩手県生まれ。1989年、盛岡大学卒業後、住宅会社に就職。営業に従事。同期でダントツの営業成績を誇るも社風が合わず、1年目で退職。同年、大学時代の合唱部の後輩のこーちゃんと結婚。翌年、25歳で長女、27歳で長男、30歳で次男を出産。趣味は登山と読書。休日はよく夫と一緒に山歩きをしている。明るく屈託のない性格でみんなから慕われている岩手のめんこいおっかあ。

いまだ感染者が一人も出ていない岩手の様子

──岩手県はいまだに1人も新型コロナウイルスの感染者が出ていませんが、街の様子はどんな感じですか?

私は北上市に住んでいるんですが、さすがに緊急事態宣言が出る前後は人の往来は少なかったです。でもすぐ解除されて、それからは普通に人は出歩いていますね。気をつけてる人もいればいない人もいて、危険だなと思うこともあります。

──飲食店はどうですか?

今(5月13日)は、盛岡とか都会の方は休んでる店は多いと思うけど、田舎の方はとりあえず営業してますね。

今、パートを2つかけもちしてて、そのうちのひとつ、花泉のイタリアンレストランは、コロナ騒ぎ以降、ほとんどお客さんは来なくなりました。4月からピザやパスタのテイクアウトを先々週から始めたんですが、平日はぐっと減ってましたね。数えるくらいしかいなかった。夜は誰もいないですね。予約が入らなくなったので厳しいです。

でもGWになったらお客さんがたくさん来るようになりました。最近もカウンターも満席で普通に3密状態です。それでも岩手は感染者が出ないからすごいよねって友達と話してます。でもGWが過ぎたらまた暇になりました(笑)。

笑い話じゃないですけど、そのイタリアンレストランには地元のおばちゃんグループがよく来るんですよ。そこで手作りマスクの自慢をするんです。マスクを外して大声で至近距離で話してる。なのに感染者がよく出ないなと。笑っちゃいますよね(笑)。

──ほんと岩手はいまだに1人も感染者出ないってすごいですね。

たまたまだと思いますよ。何がよかったのかはわかんないですけどね。でも感染者は絶対いると思いますけどね。発症する人が出てないってだけで。ちゃんと検査してないからとか隠しているからという人もいるけど、そんなことないと思うんですよね。隠そうと思ったって隠しきれないと思うから、やっぱりまだ発症者が出てないんでしょうね。

──今、東京は自粛警察がすごいんですが、岩手はいないですか?

そういう人はいないですね。こないだ(5月9日)の昼間、夫と一緒に盛岡の友達が経営しているバーに行ってランチしてきたんですけど、ようやく昼だけ始めたんです。ドアを開けて3密避けて。でもそういう自粛警察の話は聞かなかったですね。そういうことする人って、ほんとに神経質かヘソが曲がってるんでしょうね。

コメント 2020-06-09 135857

息子の彼女がコロナ病棟に

──戦時中の隣組かっていうね。

3月頃、戦争になるときってこういう時かな、今の状況はまさに戦争の一歩手前だなと思った時期がありました。みんな気持ちが同じ方向に向かわざるをえない状況になっていくというか、人と違うことを言ったりやったりしたら非国民って責められるからできない、みたいな。だから戦時中のお母さんは、戦争に息子を行かせたくないなんて言えなかったというのもわかるなって。その頃、精神的にすごく鬱々となりましたね。

そういう意味ではとても心配になったことがあって。私には長女、長男、次男と子どもが3人いるんですが、その内、長男と次男は東京で暮らしています。その次男の彼女は看護師で、感染症指定医療機関に勤務してるんです。元々は青森の病院に就職が決まっていたんですが、次男と付き合うことになって、次男が就職で上京することになったのでそこを辞退して、一緒に上京して東京の病院に就職したんです。そのタイミングから一緒に暮らしています。

最初は一般病棟だったんですが、だんだん差し迫ってきて、新型コロナウイルスの感染者をケアする病棟で働くことになったんです。

──マジすか! もろ最前線ですね。まさかこんなことになるとは想像できなかったから大変でしたね。

扱ってるのは軽症者らしいんですが、軽症者が急に重症化することもあるので心配です。院内感染の話もよく聞くので余計に……。

だからそのことを彼女から電話で伝えられた時、思わずこう言っちゃったんですよ。「津波もてんでんこっていうでしょ? もし命の危険を感じるような状況になったら、他人からずるいと責められることを全然気にしないで辞めていいんだよ」って。

──そしたら彼女はなんて?

あんまりピンと来てる感じじゃなくて、「はあ…わかりました。でも今は頑張ります」って。どんなに危険でも誰かがやんなきゃいけないことだから逃げちゃいけない、一生懸命立ち向かおうとしてるんだろうな、その気持を尊重したいと思ったので、「本当に気をつけて頑張ってね。遠くからだけど応援してるからね」って言いました。そしたら元気に「はい! 頑張ります!」って。

後から思ったんですが、彼女も息子とかなりの話をして、逃げないで頑張ろうと覚悟を決めて電話を掛けてきただろうから、私も余計なことを言っちゃったかなと。

コメント 2020-06-09 140138

最前線で戦う彼女を支えてあげてほしい

──いやあその気持はわかりますよ。僕がずんこさんでもそう言うと思います。身内としては自分の命を一番大事にしてほしいと思いますもん。

そうですよね。あとね、その時、次男と一緒に住まない方がいいんじゃないかとも言ってきたんです。中には、それまで家族と一緒に住んでいた家から離れて、単身寮に引っ越した看護師もいるみたいなんです。

でも病院で仕事が終わるとすぐちゃんとシャワーを浴びてから帰ってきたり、食事も離れて採ったりと気を遣ってくれているみたいだし、そもそも離れて暮らしてもお互いに心配もあるだろうなと。何より彼女がそんな過酷な勤務状況で精神的に大変な時に、次男と離れて暮らしてほしいとは全く思わなかったです。むしろ彼女なんだから、息子は一緒に暮らして支えてあげなきゃダメだと思いました。息子も夫も同じ気持ちでした。それで「そんなこと気にしないで、息子と一緒に暮らしてあげて」って言ったんです。

──ええ話や……。

新コロパニックが起きてから今まで、この息子の彼女がコロナ病棟で働かざるをえなくなった時が一番嫌な気持ちになりましたね。実の娘じゃないんですが、戦争に娘を連れて行かれたみたいな。ちょうど東京がどんどん感染者が増えていた時期なので。

でもそう思うとかえって不幸がやってくるような気がして、そう思っちゃいけないって考えないようにしてました。

──その後は?

今も「時々、どう?」って聞くんですが、2人で元気で明るくやってるみたいです(笑)。だからなおさらこっちが変なことを考えちゃいけないなと思って。早く東京の感染者が減ってほしいとそれだけを祈っていました。今はちょっと乗り越えた感はあります。

コメント 2020-06-09 140016

──やっぱり身内に対してはそういう気持ちになりますよね。

でもやっぱりその彼女のお母さんは違うなと思ったことがあって。私に電話をくれた数日後に、青森に住む介護士のお母さんから大量の黒にんにくが送られてきたらしいんです。これで免疫力を上げてコロナに負けるなと。それを聞いた時、「やっぱりこの子のお母さんは強いわ、逞しいわ、私とは全然レベルが違うわ、私はまだまだ甘いわ」って思いました(笑)。そういうおっかあじゃないとダメだなと、お母さんに教えられましたね(笑)。そんないいお母さんと身内になれてよかったです。婚約したのが最近で、このコロナ禍なのでまだ挨拶に行けてないんですけどね。落ち着いたらすぐにでも行くつもりです。

──最近は話しました?

はい。元気そうでした。明るい子で。黒にんにくを送るお母さんの娘ですからね(笑)。

そして5月の終わりに、彼女から嬉しいお知らせがありました。今、彼女が働く病院ではもう新型コロナの患者さんはいなくなって、(新型コロナ患者の)受け入れは5月末で終了するそうなんです。これを聞いて心底ほっとしました。東京もこのまま、とにかく収束してほしいですね。

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(第2回に続く)

次回は、ずんこさん自身が新型コロナウイルスから受けた影響などについて語っていただきます。乞う、ご期待!


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