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【読書感想】中村文則『悪意の手記』

2017.02.02読了。
中村文則著『悪意の手記』

15歳の時に奇病にかかった少年。
彼は退院後、同級生Kを殺してしまう。
「人殺しであること」をただひたすら己に問い続けていく話。

人を殺した者のみが感じることができる世界が確かに存在する。
私は殺人を犯したことがないし、前回読んだ落語の本の方が実生活に近いのに、彼の抱える虚無が痛いほどにわかってしまった。
変なことを言うようだが『共感』がそこにあったのだ。

彼は問う。
生死を彷徨いながらも奇跡的に治癒した後に感じた虚無は何だったのか。
そして、なぜKを殺したらその虚無がなくなったのか。

彼の分析は果てしなく続く。

人を殺して動揺する人間と、動揺しない人間。
人殺しである自分と、人を殺していない人間。
人を殺したことを苦悩する人間と、苦悩する必要のない人間。

彼の問いは、もちろん彼自身に向けられている。
が、同時に読み手も問われる形となる。

それがこの小説の恐ろしさであり、素晴らしさであると思う。

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