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焚き火のようにビジョンがジワる

先日の投稿ではビジョンやパーパスなどの「自分ごと化」について触れました。個人の中での「自分ごと化」には個人それぞれが自分のビジョンを見出し、個人ビジョンと組織ビジョンの相乗効果を作っていくことが大切だという主旨でした。

今日はその続きっぽいテーマです。集団の中で掲げたビジョンがどう浸透していくのか、どう変化していくのかについて、ちょっと観念的な思考になるかもしれませんが掘り下げてみたいと思います。

前回は「個人軸」がそもそも前提だって話題だったのですが、それでも「働きかけ」も同じように大切であり、両者は相乗効果です。

ちなみに、ここから先は「集団が大切にするモノ」を「ビジョン」と表現します。別にこれはパーパスでもコアバリューでも熱源でも理念でもなんでもイイので、ご自身にとってイメージしやすい言葉に変換して読んでみてください。



▶︎01.焚き火のように、ビジョンがジワる


ビジョンの浸透プロセスは基本的に「ジワる」であり、そのプロセスは「焚き火」に近いものがあると感じています。「焚き火」で捉えると、「ジワる」がどう起こるのか、なぜ起こらないのかもイメージしやすいですよ。

ちなみに僕はアウトドア趣味があるわけでは全くないので「焚き火」の解釈が変なところはあるかもしれません。昔やった焚き火で失敗した経験とうまくいった経験の両方から、抽象化したときにビジョン浸透のプロセスと共通項が多いなーと思ったのです。

画像に書いた、それぞれの要素について解説していきます。


▶︎【はじめはチョロ火、マジチョロ火】

コレが直感的に理解されにくいところ。最初は行動に対して全然変化が出ません。でも継続することがめちゃくちゃ大事。ちゃんと燃え始めているから。焚き火よりも燃えている様子が可視化されない分、しんどいかもしれませんが我慢するのです。

イベント的な盛り上がりを作れば、一度は燃え広がるかもしれません。でもそれは木材の表面が燃えてるだけで芯はまだ燃えてない。だからすぐに火が弱まるのです。時間をかける前提でいる方が健康的です。


▶︎【あるラインまで燃えると一気に燃え広がる】

地道に活動を続けていると非線形に一気に浸透がハネ上がるタイミングがあります。ダムが決壊すると言ってもイイかもしれません。燃え上がるときは急上昇します。

基本的に成長ってみんな「直線」だと思いがちなんですが、実際は「曲線」を描くことは多いです。ビジョンも同じだと思います。なかなか浸透しない、時間をかければかけるほど取り組みが結果につながらないもどかしさがある。でも、ある一点を超えると急上昇するんです。

ただしコレは後述する「鎮火」シリーズの行動を取っていないとき。「鎮火」は燃え広がらせようとする努力を打ち消してしまいます。


▶︎【火が燃え広がる構造づくりが大事】

ココを見過ごしがちです。焚き火も空気が通る構造や、細い木から太い木に燃え移る構造が必要です。同じようにビジョン浸透も構造を意識することが大切です。「自分たちに発生する力学を構造で捉える」視点とも言えます。後述する「水をかける」とも関連します。


▶︎【火種があるから燃え始める】

当たり前ですが「火種」がないと燃え始めません。キッカケの設計ですね。それがあるから少しずつ燃え出すとイメージすれば分かりやすいかもしれません。

しかし、焚き火と違うのは「最初から燃えているヤツもいる」ってところです。ただ燃えているヤツは分かりにくかったりもします。炭火状態で内側はアツイのに外から見ると分かんないことも多い。そんな「とっくに燃えている人の発見」はメチャクチャ大切です。


▶︎【最初は丁寧に風を送り続ける】

焚き火全体に火が広がるまでは丁寧に風を送り続けることが必要です。「経営者が自分の言葉で常日頃からビジョンを語る」といった行動はこの風送りに該当します。火種を放り込むだけではすぐに火は消えますし、風を送る頻度が少なくても火は燃え広がりません。


▶︎【水をかけると鎮火する】

コレが一番見過ごされがちです。燃え広がろうとするときに水をかける行為をナチュラルに取っていたりするのです。例えば「仕組み」「文化」によって、あるいは水をかける「個人」によって、燃え上がり始めた火が消されたりします。

「評価に落とし込む」ができていないためにビジョンが浸透しないと言った話題もよくありますよね。そりゃそうです。ビジョンを体現しようとしているのに評価されない環境で誰が燃え続けられるのか。

本当は簡単なんですけどね。何があれば「萎える」のかを考えてみればイイのです。メンバーの「心を折る要因」を丁寧に紐解いて、それを排除していくプロセスです。そこに向き合うと、多くの場合は「経営者の言行一致」に至ったりするのが面白いポイントでもあります。


▶︎【隣り合う木に燃え移らないと鎮火する】

焚き火は一本の木が燃えただけでは燃え広がりません。周りに燃え広がる構造がないと鎮火してしまいます。「燃え広がる構造」を意識的にデザインする必要があるわけです。既に燃えていたはずの人が「一人で頑張っててバカみたい」とか思っちゃうと鎮火でございます。ちゃんちゃん。


▶︎【小さな火種に強すぎる風を送ると鎮火する】

風を送ると言っても、小さな火種に強すぎる風は鎮火の原因になります。そこまでの風を受け止められる状態にないわけです。いわゆる「引く」が発生する状態ですね。

全然熱量が高くない集団に、いきなりトップが「うおおおおおー!」なメッセージを発してもメンバーは「ドン引き」なわけです。燃えません。鎮火でございます。


▶︎【いま木材が湿気っているなら、木材を乾かすところから】

これも見過ごされがちです。というより、多くの集団はこの状態だと思います。過去の自分たちの行為の積み重ねによって、木材が湿気っている状態。つまりメンバーからは「またいつものヤツだ、期待するだけ無駄だよ」と思われている状態ですね。信頼されてないのです。

でも、そんな状態にしてしまったのは上層部の責任。湿気った木材を乾かすのには時間がかかりますが、そこにも真摯に向き合わないと乾かないのです。ここで自分の責任を認めないと、また水をかけてさらに湿気らせちゃうのです。燃える気配がありませんね、誠に残念です。



▷02.注目するのは「燃焼」と「鎮火」を促すモノ


と、そんな「ビジョン浸透」を「焚き火」に見立ててみた投稿でした。でもコレ、僕が普段から意識しているポイントの一端です。

全体をシンプルに表現するなら、「何が燃焼をもたらして、何が鎮火をもたらすか」を想像することだと思うのです。

この構造は集団によって異なります。それぞれが持つ文脈によって燃焼と鎮火のメカニズムはまったく異なる。だからそこを知ることが最初のステップだとも思うのです。

最近は「インナーブランディング」をテーマにしたご依頼をいただくことも増えました。僕の向き合い方は基本的に今回の投稿と前回の投稿を踏まえたモノです。そのうえで個人と集団の「あり方」を少しずつ整えるインナーブランディングを実践しています。

ぜひ自分たちの「焚き火」が、いまどんな状況にあるのかを理解して、それぞれの炎を燃え広げていく活動を進めていただければと思います。色んな炎が色んな場所で挙がる状態だとステキですしね。

そんな炎の姿が可視化されて、自分が飛び込みたいと思う炎を誰もが自分で選べる社会になるとイイなーと思うのです。おわり。

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