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国際的な影響力で高い評価を受けている政治学・国際関係のジャーナルを個人的な感想を交えつつ紹介してみる

はじめに

何らかの分野の研究者、専門家であれば、その分野で有名な学術誌、つまりジャーナルが何かを把握しているものです。というのも、調査研究を進める上で研究者は日常的にジャーナルを読むことになり、最新の研究の動向をフォローすることを余儀なくされるためです。どのようなジャーナルを読んでいるのかを確認すれば、その人が専門にしている分野をある程度絞り込むことも可能です。

この記事では、世界的に有名な政治学・国際関係のジャーナルを紹介するため、被引用数を使って影響力を指標化したSCimago Journal Rank(SJR)に基づくランキングを取り上げてみたいと思います。それぞれのジャーナルには、それぞれに異なった特徴があります。そのため、SJRでジャーナルの内容を無視し、序列化することが常に妥当というわけではありません。

ただ、SJRが高いジャーナルであるということは、その分野の研究者に影響を及ぼした論文が数多く掲載されている傾向を示しているので、これから本格的に大学院で研究しようという方であれば、一定の参考になるのではないかと思います。

以下に示す内容は2021年1月の時点で調べたことを前提にしています。無料の論文が掲載されることもありますが、学問のジャーナルは基本的に有料であるものが多いことをあらかじめご了承ください。

『アメリカン・ジャーナル・オブ・ポリティカル・サイエンス(American Journal of Political Science, AJPS)』

『アメリカン・ジャーナル・オブ・ポリティカル・サイエンス』(外部サイト、英語)が取り扱うテーマは、アメリカの政治、公共政策、国際関係、比較政治学、政治学方法論、政治理論などです。1956年に創刊されて以来、政治学に多大な貢献を果たした論文が数多く掲載されており、政治学のトップジャーナルとして認知されています。全般的に比較政治学に関する論文が多く掲載されていますが、国際政治学、政治経済学などの論文も掲載されることがあります。アメリカの政治に関する調査研究で参照することが多い印象があります。Twitterアカウントは次の通りです。

『アメリカン・ポリティカル・サイエンス・レビュー(American Political Science Review, APSR)』

『アメリカン・ポリティカル・サイエンス・レビュー』(外部サイト、英語)も政治学のあらゆる分野に関する研究論文が掲載されていますが、先ほど挙げたAJPSではアメリカの政治が中心的な研究テーマの一つになっていますが、こちらのジャーナルで取り上げられる研究の対象はアメリカ以外の国である場合が多い印象です。方法論や理論に関する研究も充実しており、また私が関心を持っている内乱や戦争に関する重要な研究もよく発表されてます。Twitterアカウントもあるので、そちらも載せておきます。

『インターナショナル・オーガニゼーション(International Organization)』

『インターナショナル・オーガニゼーション』(外部リンク、英語)は国際政治学で最も権威があるジャーナルの一つであり、外交政策分析、国際政治経済学、安全保障学などに関する論文が掲載されています。国際関係に関する研究を進めたいならば、このジャーナルを避けて通ることはできないでしょう。特に外交政策や国際制度を分析するならば、このジャーナルは大いに役立つことでしょう。国際貿易や国際金融の問題関する論文も掲載されています。Twitterアカウントも活用して発信しています。

『ポリティカル・アナリシス(Political Analysis)』

『ポリティカル・アナリシス(Political Analysis)』は、政治学の方法論に関する研究論文を掲載しているジャーナルなので、研究者でないとあまり興味を持てないかもしれません。しかし、研究者を目指しているなら、ぜひ一度読んでみてほしいジャーナルです。研究者とそうでない人の決定的な違いは方法論に対する理解の深さにあると言っても過言ではなく、このジャーナルは定量的方法、定性的方法の両方を改善する方法で大きな貢献を果たしてきました。Twitterアカウントで更新情報がチェックできます。

『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ポリティカル・サイエンス(British Journal of Political Science, BJPolS)』

『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ポリティカル・サイエンス』(外部リンク、英語)も政治学のあらゆる分野をカバーしているジャーナルです。これまでに挙げたジャーナルの中では、ヨーロッパの政治、特にイギリスに関する研究がやや多い印象を受けますが、ヨーロッパ以外の地域の政治についても取り上げられています。個人的には比較政治学、特に民主主義や政党政治に関する優れた論文が多いので、そのような研究領域を選んだ方はこちらのジャーナルを確認するとよいでしょう。Twitterアカウントでも情報発信しています。

『ジャーナル・オブ・ピース・リサーチ(Journal of Peace Research, JPR)』

『ジャーナル・オブ・ピース・リサーチ』(外部リンク、英語)は平和学の分野で最も権威あるジャーナルであり、武力紛争や平和構築に関する研究論文が掲載されています。1964年に創刊されて以来、その理論的な厳密さと優れた方法論を駆使することで国際的な評価を受けてきたジャーナルであり、国際関係、特に安全保障の分野で大きな影響力があります。これまでに挙げてきたジャーナルの中で最も私の関心に近い分野のジャーナルであることもあり、更新されると必ずチェックするようにしています。日本では平和学は平和主義のイデオロギーというイメージがあるかもしれませんが、世界の平和学の研究に携わる人々は、戦争を客観的、理論的、実証的に分析する専門家であり、日本でもこうした研究成果がもっと知られればよいと思います。

『クォータリー・ジャーナル・オブ・ポリティカル・サイエンス(Quarterly Journal of Political Science)』

『クォータリー・ジャーナル・オブ・ポリティカル・サイエンス』(外部リンク、英語)は政治学の中でも政治経済学に重点を置いているジャーナルです。政治と経済の関係、企業の政治的関与、選挙運動、投票行動に関する論文が繰り返し掲載されています。これまでに挙げてきたジャーナルの中でも新しいジャーナルであり、創刊された年は2006年になります。これほど短期間でSJRの観点から高い評価を受けているだけあって、研究の水準は高く、方法論も洗練されています。今後、政治経済学の分野で重要な研究成果を続々と生み出すことになるジャーナルとして注目されることでしょう。Twitterのアカウントはまだ運用されていないようです。

『ジャーナル・オブ・コンフリクト・ソリューション(Journal of Conflict Resolution)』

『ジャーナル・オブ・コンフリクト・ソリューション』(外部リンク、英語)も先に紹介した『ジャーナル・オブ・ピース・リサーチ』に並んで戦争に関する研究論文を数多く掲載しているジャーナルです。こちらも更新されるたびに必ず目を通すようにしています。ジャーナルのテーマは紛争解決であり、国家間の武力行使だけでなく、国内における暴力の問題に関する分析も読むことができます。政治学に分類されるジャーナルですが、必ずしも政治学のアプローチに特化しているというわけでもありません。軍事学の研究成果として分類することができるような論文が掲載されることもあり、学際的なジャーナルです。Twitterアカウントは見つけられていません。

『インターナショナル・アフェアーズ(International Affairs)』

『インターナショナル・アフェアーズ』(外部リンク、英語)は国際関係に関する論文を掲載しているジャーナルであり、時事的な問題、例えば米中関係のようなテーマに関する論文が掲載されています。理論的な厳密さはそれほどでもありませんが、最近の国際情勢に対する理解を深めたいのであれば、このようなジャーナルを確認しておく方が有益かもしれません。それと、ヨーロッパに関するテーマがやや多いように感じます。1922年に創刊され、イギリスの有名なシンクタンク王立国際問題研究所(Royal Institute of International Affairs, RIIA)によって出版されてきました。自分の研究で参照することはあまり多くないのですが、授業やセミナーなどで時事的な問題について解説する際には参考にしています。

『ワールド・ポリティクス(World Politics)』

『ワールド・ポリティクス』(外部リンク、英語)は、国際関係と比較政治学の分野で広く知られてきたジャーナルであり、1948年に創刊されました。先ほどの『インターナショナル・アフェアーズ』とは対照的で、時事的な問題は取り上げず、政治学の理論、実証のいずれかに貢献を果たした論文が掲載されます。全般的な印象として、現地調査に基づく地域研究が多い感じがあり、理論的、計量的なアプローチとは一味違った切り口の論文は興味深いです。特に紛争地域の政治的状況について踏み込んだ記述は理論的な研究をしている人にとっても有益だと思います。歴史があるジャーナルなので、教科書で紹介されるような論文も読むことができます。Twitterアカウントは以下の通り。

まとめ

政治学、国際関係のジャーナルはまだまだ無数にあるのですが、ここでは特に影響力がある主要なジャーナルのみを紹介しました。これ以外にも、さまざまなジャーナルがあるので、興味があるという方は以下のランキングを自分で調べてみてもよいでしょう。

自分の研究で参考にするジャーナルは人によって違いますから、あまり世間で知られていないけど、お薦めしたいジャーナルがあれば、コメントなどで気軽にお知らせください。皆様が普段どのようなジャーナルを読まれているのか興味があります。政治学以外のジャーナルでも歓迎します。

調査研究をサポートして頂ける場合は、ご希望の研究領域をご指定ください。その分野の図書費として使わせて頂きます。