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「推しが多すぎるのか、いないのか」問題

 「推しが多すぎでしょ!」と怒られた。先日の飲み会のことである。
 厳密に言えば、いわゆる「推し」ではない。ライター講座の受講生仲間への「推し」である。今通っているライター講座で、「ほかの受講生の文章で誰の文章が好きか?」という話題が出た際、「この人の文章は全て良くて」「この人のこの回のインタビューが凄く良くて」「この人の文章からにじみ出る誠実さが好きで」、、、と好きな人の数がどんどん増えていった際、受けたツッコミだ。
 こういう「推し」多すぎでしょ!というツッコミを色んな場で受けている気がする。
 「多趣味ですね」というのも、考えてみれば同じ方向性のコメントだ。確かに、漫画が好きで、音楽が好きで、映画が好きで、落語が好きで、ミュージカルが好きで、登山が好きで、お酒が好きで、海外バスケットボールのNBAが好きである。お酒で言えば、日本酒が好きで、ワインが好きで、ウイスキーが好きで、カクテルも好きで、テキーラも好きだ。ワインも、白ワインも好きだし、赤ワインも好き。
 多い。多いよ、「推し」。

 違う質問もある。「NBAのチームだと今年はどこを推すの?」と友人に訊かれたことがある。この時は、複数の「推し」チームの名前をあげると、「複数推すのは推しではない」と一刀両断にされた。
 友人は、元々とある一チームを熱烈に推している。そのチームが負ければ、落ち込む。野球で言えばクライマックスシリーズに当たるプレーオフという重要な試合があるが、そこで一試合負ければ一日落ち込む。好きな選手はInstagramもTwitterもフォローする。好きな選手の子どもまでチェックしておいる。その子供がちゃんとまっすぐに育つのか心配したりする。そのレベルの「推し」である。そんな生活が、若干エスカレートしながら既に3年。
 確かに、日常生活に深く深く食い込んだ友人の「推し」の強さと比べると、私の「推し」レベルは低い。

 熱狂的に何かを「推せる」人に憧れもある。
 実は、なろうと努力したことさえ、ある。
 今から7年ぐらい前、サッカー観戦にはまっているころ、「推しチーム」を作ろうとした。その時は、湘南ベルマーレを選んだ。理由は、①近い ②サッカーが面白そう ③好きなサッカーblogの人が推していたから、しかもそのblogがめっちゃ良かったから、という理由である。③だけ長いことから推察される通り、③が本当の理由である。「ファンのBlogが好きだから、そのチームを応援する」。なんというか、まぁ、あまり説得力のない理由である。
 とは言え、その時期の湘南ベルマーレは、良いチームだった。J1昇格後、J2に戻り、そして圧倒的な力を見せつけ、再びJ1に返り咲いた時期だった。優秀な選手もいた。今となっては代表のボランチに定着している遠藤航がおり、その後鹿島に移籍した永木亮太がいた。当時の遠藤は既にU-20には選出されており、センターバックから攻撃参加まで行えるユーティリティのある選手だった。永木の知的なパスワークも良かった。何より、チーム状況が良かった。チーム全体にJ-1に定着しようという熱さがあった。それが前線のプレスの厳しさに現れていたと思う。良いチームだったんだ、本当に。
 そして、一人でスタジアムにも行った。スタジアムのグルメは美味しかった。1万円以上もするユニフォームも買った。控えまで選手名を覚えた。
 でも、やっぱり、そこまで熱烈なサポーターにはなれなかった。半年程度で足が遠のき始め、録画したJリーグの番組も見なくなった。それから、「推し」チームを熱烈に作ろうという努力もしていない。今では、サッカーすらほぼ見ていない。
 やっぱり、熱がなかった。自分の中に。
 それは、何事についてもそうなのかもしれない。好きなものは数多くある。でも、あるレベルより先にはいかない。だからこそ、好きなものが多い。

 タイトルに戻る。
 私の「推し」は多すぎるのか。あるいは、いないのか。
 こう考えていくと、「いない」の方が近いのかなぁ、と思わざるを得ない。一人の人間が持てる熱量も、時間も、限界がある。それを継続的に一つの物に注ぎ続けられる人こそ、「推し」の称号が似合うと思う。
 そして、そういう人に対して、やっぱり、ちょっと憧れはある。それだけの熱量を持って世界に接してみたいとは思う。自分がそうではないから。

 書いてて思ったけど、そういう人、いいですよね。応援したくなるよなぁ。。。
 そして、憧れが増えて、また「推し」が増えていく。

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