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令和に歴史的合体⁉『「超」怖い話×中山市朗』が発売!「超」怖い話四代目編著者・加藤一による解説冒頭を紹介

「超」怖い話×新耳袋

すべての怪談ファンに捧ぐ、
純粋に「怖い」を楽しむ聞き書き恐怖譚

内容・あらすじ

1990年代、体験者への取材を元とする聞き書き怪談のムーブメントが起きた。
その火付け役となったふたつの怪談シリーズがある。
西の「新耳袋」、東の「「超」怖い話」。
同じ実話怪談、あるいは怪談実話と称されるジャンルにおいて、両者の色合いは面白いほどに異なり、それぞれのファンが議論を交わし、敵対するほどであった。
長年ライバル関係にあると目され、けして交わることはないと思われていた両者の歴史が
三十年の時を超え、今動く。

令和六年。
中山市朗(新耳袋)、「超怖い話」参戦――!

解説 冒頭紹介

加藤 一(「超」怖い話第四代編著者)

 怪談界隈では、古くから『西の新耳袋、東の「超」怖い話』と呼び習わしていただいた新耳袋と「超」怖い話。この因縁の二大タイトルに連なる裏話について、歳を経て最近すっかり胡乱になった曖昧な記憶を頼りに、ちょっと一筆啓上させていただく機会を得た。
「超」怖い話は一九九一年に今は亡き勁文社で産声を上げた。そして、新耳袋はそれよりも一年早い一九九〇年に扶桑社から世に出た。新耳袋のほうが一年先輩なのであるが、新耳袋の存在は、実は創刊準備中の「超」怖い話に大きな影響を与えている。「超」怖い話創刊の二代目編著者にして、創刊時の実質的な企画推進者でもあった樋口明雄先生が、原稿執筆開始前の打ち合わせの席に発刊直後の新耳袋を持ち込まれた。
「ハジメ、見たかこれ。凄いぞ」
 これ、怪談本なんだけど、こんな投げっぱなしでいいんだ。後日談なんかなくてもいいんだ。怖がらせるような書き方しなくてもいいんだ。凄いぞ。本当に凄い――確かこんな具合でべた褒めされていたのを覚えている。黎明の「超」怖い話が産声を上げる前、それこそまだ、子宮の中でああでもないこうでもないとぐるぐるしていた頃から既に、「超」怖い話のスタンスは新耳袋の影響を受けていた、と言っても過言ではないと思う。
 その後、新耳袋はぱったりと鳴りを潜め、「超」怖い話は編著者を安藤君平先生から樋口先生、平山夢明先生に移しながら、一九九七年まで毎年新刊を出し続けた。
「超」怖い話が一度目の休刊に入ったのが一九九八年。そして、その年に、入れ替わるように新耳袋が怪談の世界に帰還した。版元は扶桑社からメディアファクトリ―に変わったが、その強烈なインパクトが褪せることはなかった。
「超」怖い話のいない一九九八年を新耳袋が繋いだその翌年、一九九九年に『新「超」怖い話Q』として復活するものの、二〇〇〇年の『「超」怖い話 彼岸都市』を最後に二度目のダウン。この後、勁文社が倒産してしまい、「超」怖い話は復刊を引き受けてくれる版元を探して二度目の雌伏へ。その間、新耳袋は嫡々と続刊を重ね、怪談界に於ける揺るがぬ指標の地位を築いていった。
 そして「超」怖い話は二〇〇三年に、版元を竹書房に変えて二度目の復活を遂げる。冒頭に挙げた「西の新耳、東の超怖」という言葉、あれはどなたが最初に言い出したのかそこのところはあまり詳しく存じ上げないのだが、竹書房へ移籍復刊を遂げた後くらいの頃には、気付いたらそう呼ばれていたなあ、と。
 当時、怪談の文壇というのか、怪談界隈というのか、そういったものがあったかどうかは分からない。というのは、「超」怖い話が立ち上げられてからの数年間、継続的に同じレーベルタイトルで同じように怪談を打ち出し続けるシリーズというのが、ほぼ存在していなかったので。その頃までは怪談本というと、一発こっきりの本や、○○研究会といった著者の詳細不明な本が多く、特に体験談を聞き取り取材して書くスタイルの怪談を、同じタイトルで同じメンバーがずっと続けていたのは、新耳袋、「超」怖い話、そして稲川淳二先生、それからさたなきあ先生くらいではなかったかと思う。
 僕などは一九九一年の「超」怖い話立ち上げからの怪談著者なので、「超」怖い話の歴代編著者諸氏が卒業されてしまった今、現役最古参の部類には数えていただいている。が、僕よりも古くから、なおかつ今も現役で書き続けていらっしゃる怪談作家さんとなると、もう本当に数えるほどしかいない。中山市朗先生はその意味で、数少ない「ほぼ同期かつ、僕よりキャリアが長いレジェンド級怪談作家」なのである。

~後半は書籍にて~

著者紹介

中山市朗 (なかやま・いちろう)

兵庫県生まれ。大阪府在住。怪異蒐集家、オカルト研究家。木原浩勝氏との共著『現代百物語 新耳袋』(全十夜)は、怪談実話の金字塔。著書に『なまなりさん』『聖徳太子 四天王寺の暗号―痕跡・伝承・地名・由緒が語る歴史の真実』「怪談狩り」シリーズ(最新作は『怪談狩り まだらの坂』) などがある。現在、配信、ライブなどで積極的に怪談語りを披露中。

松村進吉(まつむら・しんきち)

1975年、徳島県生まれ。2006年「超-1/2006」に優勝し、デビュー。2009年から老舗実話怪談シリーズ「超」怖い話の五代目編著者に就任、本シリーズの夏版を牽引する。主な著書に「超」怖い話〈十干シリーズ〉、『怪談稼業 侵蝕』『「超」怖い話 ベストセレクション 奈落』『丹吉』など。

深澤夜(ふかさわ・よる)

1979年、栃木県生まれ。2006年にデビュー。2014年から冬の「超」怖い話執筆メンバーに加入、2017年『「超」怖い話 丁』より夏の「超」怖い話の共著も務める。単著に『「超」怖い話 鬼胎』、編著に『栃木怪談』、共著に『恐怖箱 しおづけ手帖』などがある。

「超」怖い話 好評既刊

夏の「超」怖い話(2023年)
冬の「超」怖い話(2024年)