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読む心霊特番・戦慄の44選!不可解だから怖い、現代の怪奇心霊事件簿『恐怖ファイル 不怪』(最東対地)著者コメント+試し読み1話

奇妙、奇怪、不可解、不気味!
怪しさ満点の怪談奇談44選+特集3選。

あらすじ・内容

一度聞いただけで擦り込まれてしまう恐怖の歌「かげろかげろ」
人為的に凶宅=禍を呼ぶ家を作る中国大工の呪法「木工厭勝」
ショッピングモールで迷子になった子が吸い寄せられる「魔の場所」
全く別の土地から何度も寄せられる究極の「曰くつき怪談」
・死んだ動物と話せる少女
・なぜか集まる中原中也の詩集の怪
・絶対に思い出せない謎の言葉
・廃墟で撮った画像に写った宴会
・孤独死の部屋から聞こえる腐る音
・特殊清掃人すら驚く死臭の持ち主
・子供から乳歯を買う軍服男の霊
・恐怖!火事現場で自撮りした顔の異変
・戦慄!ニュース速報で流れた「水」一文字の意味
・降霊実験で録音された「死にたくない」の声

★実録・怪紀行~100メートルの廃墟、世界平和大観音
★実録・小説~凶宅
★コラム~心霊写真今昔

…ほか収録。

著者コメント

まずはカバーにご注目!知ってるひとには懐かしく、知らないひとには新鮮な『読む心霊特番』。怪しい話、怖い話、うさん臭い話44怪と怪リポ、怪小説、怪コラムと盛りだくさんの一冊。ICレコーダー、スマホ、SNSなど最東お得意のデジタル系怪談からなんとなくキモイ怪談まで、〝怪のごった煮〟とくとご堪能あれ!

試し読み1話

「ずるずる」

 僕ね、時々仕事で東京出張するんです。
 それである時、取引先との打ち合わせ場所に行くのにバスを利用しました。そしてあるバス停でぞろぞろと乗客が入ってきました。場所は言えませんが、東京の観光地と言えば……とだけ言っておきます。とにかくですね、割と空き気味だった車内がそこそこ埋まるくらい乗ってきたわけです。
 それで椅子を探す列の中にひとり、若い女の子がいたんですよね。
 まあ僕も男ですから、かわいい子がいたらついつい目で追っちゃうわけですよ。ちょうど窓際の席に座っていたものですから、ぞろぞろ歩く足元を見ていて。黒タイツの綺麗な足があったのでどんな女の子かと見上げました。赤いチェックの短めのスカートにスタジャンを着た女の子。前の客の頭で顔ははっきり見えなかったんですけど、赤いニット帽を浅めに被っていて「あ、こりゃかわいいな」と。
 それでわざとらしくならないよう顔が現れるまで観察しました。それでようやくご尊顔を拝めたんですが――。いやね、思わず息を呑みましたよ。
 かわいかったからじゃありません……顔がね、ずるずるだったんですよ。
 どう表現すればいいかわかりませんが、爛れているのか顔面の皮がないのか、それとも血まみれなのか……とにかく普通じゃないんです。
 反射的に、いえほんと悪気なくですよ? 反射的にうわって思ったんです。それが態度に出ちゃったんですかね、その瞬間女の子と目が合ったんです。咄嗟に目を逸らしましたよ。あたかも最初から窓の外を見てましたよ、みたいな顔してね。でも実際は脂汗でぐっしょりでしたよ、なんなら顔だって青ざめてたかもしれません。
 そのくらい瞬時に恐怖を感じたんです。
 あれはなんなんだ、生きてる人間なのか? 頭は混乱しましたね。もしも事故の傷痕だったりしたら失礼だし申し訳ない。そんな目で見てはいけない。わかっちゃいますが一度「怖い」と思った気持ちはそうそう拭えないってもんです。
 なんとなくの気配で、彼女が僕の斜め後ろの席に座った気がしました。今となっちゃどうなんですかねぇ……なんでそう思ったのか。とにかく、どうしてだか確かめてないのにどこに座ったかわかったんです。
 それでバスは走りだしたんですが、もう頭の中はあのずるずるの女の子のことでいっぱいで。あまりに衝撃的だったのでちょっと夢だったんじゃないかな、くらいは思っていました。もしくは気のせいだったのかな、光の加減とか目の錯覚で赤く見えただけかも、とか。
 そう考えると今度は確かめたくて仕方なくなりました。
 あれが気のせいだったと確信したかったんですよねぇ。それで悩みに悩み抜いて、最終的に振り返りましたよ。
 やっぱり彼女は思った通りの席に座っていましたよ。それでバチっと目が合いました。ず~っと、僕を見てたんですね。そうでないとあんなにバッチリ目が合わない。見てたというか、睨んでいた。
 慌てて顔を戻して目的地に着くまでずっとうつむいてました。もう絶対に目を合わせたくありません。だってやっぱり見間違いじゃなかったんですもの。真っ赤でずるずるの顔。
 それでまあ、結局あの子がなんだったのかはわからなかったんです。もしかしたら実在する普通の子かもしれません。でも怖くてあのバスにはもう乗れないですよ……。それからはそこへ打ち合わせに行く時は自腹きってタクシーで行ってます。怖くて乗れないとは会社に言えないですから。
 今でもバッとフラッシュバックするんですよ、あの睨みつける真っ赤なずるずる顔を。普通の子だったらそりゃあ怒って睨みもするだろうなぁ、と思う反面、乗客に僕と同じように驚いた様子の人は誰ひとりとしていなかったんです。僕ひとりだけがあの子のことを気になっているようでした。
 あの子の顔を見れない間、他の乗客の様子を窺ってたんです。誰も平然としていて普通でした。このバスによく乗る子だとしたらよく乗る人はいまさら驚かないのかもしれません。でも観光地から乗ってきて、そんな人ばっかりですかね。あれを見たら誰だってびっくりすると思うんですが……。

 あなたはどう思いますか?


ー了ー

🎬人気怪談師が収録話を朗読!

2/27 17時公開予定


著者紹介

最東対地 Taichi Saito

1980年5月9日生まれ。大阪府在住。2013年より執筆活動を開始し、同年にホラーブログ『最東対地の嗤う壷』を開設する。2016年、第23回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞した『夜葬』がヒット作となる。その後、異形が迫りくるスリラー系作品を数多く上梓。近著に『ふたりかくれんぼ』、他著に『怨霊診断』、『異世怪症候群』、『カイタン 怪談師りん』などがある。近年は怪談イベントで自ら怪談語りなどもする。

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