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怪談の中の怪談、王道にして最恐、【呪い】に纏わる実話怪談がギッシリ詰まった禍々しき1冊「呪術怪談」リリース

怪談の中の怪談…それは「呪い」。

憎いと思った瞬間から呪いは発動する。
最恐にして最凶、禁忌の実話怪談!

「跡取りを六人あの世に連れいてく…」
ある家を絶やすための呪詛掛け軸。
不自然な絵の空きスペースに何が…
(「六仙図」より)

あらすじ・内容

この世でもっとも恐ろしい怪談、「呪い」に纏わる怖い話を集めた実話集
・六人の仙人を描いた掛け軸。だが、それは跡取り候補を六人あの世に連れて行く呪術絵…「六仙図」久田樹生
・白い裏面に白インクで印刷してくれと依頼された謎の図案。それには恐ろしい仕掛けが…「ステッカー」神沼三平太
・亡き娘の日記に残されたいじめの事実と復讐のための呪法。母の決断は…「引き継ぐ」つくね乱蔵
・山中で偶然縊死体を発見した男。警察から見せられたのは<私を見つけた者を呪います〉と書かれた遺書…「呪います」営業のK
・ある児童の机の中に入っていた手紙。その子を褒めちぎる内容だが、翌日から異変が…「悪筆と達筆」内藤駆

他、ズシンと36話収録!

試し読み1話

「験」久田樹生

 犯罪経験のある、とある人物が言う。
 ――空き巣など行うときは、グループで盗む。窃盗団と呼ばれているものだ、と。
 組むのは比較的信用のおける人間のみ。
 同郷の、ある種互助会的な繋がりである。
 或いは〈バック〉の命令で組む、など、パターンは様々である。
 何故グループを組むかと言えば、それぞれのメンバーに役割を与えることでスムーズに盗めるからに過ぎない。
 下見、計画、各種実行動。
 実行動は、必要な道具や乗り物の手配、見張り、陽動、解錠など多岐にわたる。
 できるだけ荒事は避けるのがセオリーだが、中には窃盗団ならぬ強盗団もいるのでそれぞれのやり方があると言える。
 重要なのはやはり〈足がつきにくい人間だけで構成すること〉だった。

 話者であるこの人物は、複数の窃盗グループに属していた。
 リーダーごとに仕事(盗み)のやり方が違っているのは前述の通りだ。
 ただ、当然おかしな人間は数名いた。
 空き巣に入ると、必ずその家にある下着を一枚だけ持ち去るもの。
 種類は問わず、ブリーフであることも、ブラジャーであることもあった。
 他のリーダーは、仕事の後トイレに入り、便座を上げていく。用を足す泥棒は多いと聞くが、便座を上げるためだけなのだ。
 これらは験担ぎらしい。
 仕事が上手くいったときのことを繰り返すのである。

 中でも変わったリーダーがいた。
 窃盗の他、荒事も得意とする人間だった。
 このリーダーは必ず〈盗みに入る直前に、薄手の革手袋をする〉。
 が、その際にあることが起こると盗みをやめる。
 それは、左手の小指が手袋に上手く収まらないこと。
 さあ仕事だぞと手袋を嵌めるとき、少しでもスムーズに行かないとリーダーはすぐにその場を離れる。例え、どれだけ盗み易そうな現場だとしても。
 これは験担ぎなのか訊ねれば、リーダーは半分だけ肯定する。
「ワシのこれ(手袋)は憑いとるけんの」
 仕事用の手袋は、以前、荒事の時に使ったものだから、と自慢げに嗤う。

〈これを嵌めて、男と女とガキ、その後にも何人か殺った。そいつらの滓が手袋に染みついている。呪いと言い換えてもいい。こういう曰く付きの品物は、逆に幸運を呼ぶ。盗みも上手くいく。しかし、この手袋をしていても何度か下手を打って大変な目に遭った。そのときに何があったか思い出すと、最初に左手の小指が手袋に入らなかった。そこでイライラしながら仕事をしたら、通報されたり、出かけていたはずの家の人間と鉢合わせしたりして、余計な手間になり、大抵が大失敗に終わってしまった〉

「じゃけぇ、小指が少しでも入らにゃ、止める」
 冗談めかした口調だったが、目が笑っていないので真実味があった。
 このリーダーの持つ手袋を、手に取らせてもらったことがある。
 確かに、この革手袋は染みだらけで数箇所に補修の跡が見られた。
 嵌めてみると、何故かしっくりと馴染む。
 まるで自分の皮膚のような感覚があった。
 革手袋を嵌めさせてもらった翌日、床に軽く両手を突くと、左手首が音もなく折れた。
 件のリーダー曰く「障った」らしい。
 手首が治るまで長い時間が掛かった。

 話者である人物は、今も疑問が残るという。
 このリーダーの左手には小指がなかった。
 ない物が手袋に入るわけがない。
 それなのに、左の小指が入らないからと幾度か仕事をやめる場面を目にしている。

 現在、この手袋のリーダーは荒事が原因で引っ張られ、服役中である。
 手袋の験担ぎは効果を成さなかった。
 噂では、他の余罪は今も追及されていないようだ。
 話してくれた人も、立場上タレこまないと決めている。

 件の手袋が今も存在しているかの情報はない。

著者コメント(久田樹生)

人を呪わば穴二つ。
抗う術すら皆無の闇。
因縁廻る血や家に囚われる人々。
恐れ戦く事象の羅列は、何を意味するのか。

――本書には様々な執筆者たちが集めてきた、現代に展開する実録呪術怪異譚がみっしり詰まっております。
是非一読あれ。
ただし、読者諸兄姉に累が及んでも当方は一切関知致しません。
お気をつけを。    

「験」は、とある人物が見聞きした験担ぎにまつわる実録怪異譚になります。験を担ぐ、という言葉がありますよね。縁起などを担ぐことです。
 例えば「外出はお茶を一杯飲んでから」なども験担ぎの一種でしょう。
 お茶を飲むことで出先で起こる災禍から逃れられるように、と。
 考えてみれば、験担ぎは一種の〈呪術ルーティーン〉と言える、かも知れません。
 そして、老若男女・職種を問わず〈験を担ぐ〉人は多いようです。
 是非、ご一読をお願い致します。
 そして、あなたが知る〈験担ぎと怪異〉があれば、是非お教えくださいませ。

🎬人気怪談師が収録話を朗読!

執筆者一覧

久田樹生
つくね乱蔵
営業のK
神沼三平太
内藤駆
山葉大士
高倉樹
鬼志仁
丸太町小川
鳥谷綾斗
緒音百
あんのくるみ
雨水秀水
卯ちり
おがぴー
音隣宗二
天堂朱雀
中野前後
芳春
ムーンハイツ

好評既刊

◎鬼に纏わる実話怪談集

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