★我楽多だらけの製哲書(23)★~ラオスの国内状況と藤田東湖~
2年前の3月末、私はラオスに降り立った。それから一カ月も経たない4月中頃、私は「ラオスの洗礼」を受けた。そのときの感想を、当時勤めていたビエンチャン日本語補習授業校の学級通信で、次のように綴っていた。
★★★
「そうは言っても、仲間内だったり、知り合いだったり、またはイベント会場でのことだろう。」
私はラオスのお正月である『ピーマイ・ラオ』で、「水をかけられる」ということを非常に甘く捉えていました。聞いたり調べたりした情報だけで、私は分かったつもりになっていたのです。
お正月休みもビエンチャンの街の構造をできるだけ早く知ろうと、私は自転車で散策をしていました。そして、多くのお寺を回っている途中、見ず知らず人が私めがけてバケツの水を「ぶつけてくる(かけるというよりも適切な表現ではないでしょうか)」のです。また、道の脇で自転車を止めて休憩していると、ふいに背後から水を浴びせられることもありました。特に恐ろしかったのは、トラックの荷台に乗った人たちでした。トラックの横を走っていると、容赦なく「雨」を降らせてきたのです。見事に水浸しとなりました。
私がこのピーマイ・ラオで身をもって学んだことは、「A」ということです。
何事においても「安易に分かったつもりになることなく、経験をして知を深めていく」ことは大切ですね。古代ギリシアの哲学者ソクラテスは「知を愛し求め続ける」ことの大切さを説いており、つながっています。このことはもちろん日々の学習についても同様に当てはまります。学習の場合、「経験」とは「実際に行動に移してみること」になります。さらに細分化して考えると、国語の学習では、何となく文章を見るだけでなく、「しっかり音読してみること」、「くり返し漢字を書いてみること」が求められます。このような行動によって、様々な文章を正しく読めるようになり、さらには正しく文章で表現できるようになります。また算数の学習では、ある問題と同じパターンの問題ばかりを解くのではなく、「教科書で以前の内容に戻って確認し直してみること」が求められます。このような行動によって、基礎基本をしっかりとおさえた正しい理解が得られます。ぜひとも実際に行動に移してみる「前向きな学習」を目指してください。
さて、空欄Aに当てはまる語句として最も適当なものは次のア~ウのうちどれでしょう。
ア:焼け石に水
イ:百聞は一見に如かず
ウ:一寸の虫にも五分の魂
★★★
このような文面でラオス正月(ピーマイ・ラオ)での経験を生徒に紹介した。ラオスやタイでは、4月頃が旧正月となっており、また1年の中でも特に暑い時期で、「水かけ祭り」と呼ばれるように、この正月休みに水をかけ合って盛り上がるのである。
ラオスは1年間で離れてしまったため、この「水かけ祭り」は一度しか経験できなかったが、知らない人であっても、水風船を投げつけてきたり、自転車で走っている私にカウンター気味にバケツの水をぶつけてきたり、いきなり目の前に立ちはだかって自転車を止めた私に四方八方から水を浴びせてきたりと、これまで経験したことのない「水の洗礼」は、非常に大きなインパクトがあった。
日本に戻って来て1年以上の時間が経つわけだが、ラオス・シンガポール・ネパール・インドなどで受けた刺激が薄らぎ、安穏とした今の生活への違和感は、現在放送されている大河ドラマの主人公の思いと同じなのではないかと、勝手に自分の状態と重ね合わせている。
大河ドラマでは前半の方で主人公の渋沢栄一が、江戸で受けた刺激から自分はこのまま百姓として生きていてよいのかという葛藤を抱える。日増しに大きくなる諸外国の脅威、そして国内政治の混乱の中、多くの若者たちが、この国をどうしていくべきか、「自分事」として考えるようになる。このとき渋沢栄一をはじめ、多くの若者たちの心に響いたスローガンが「尊王攘夷」であり、その元にあるのは水戸藩で発展した「水戸学」である。江戸末期、水戸藩の藩校である弘道館の教育理念の中には、「尊王攘夷」の語が用いられ、内憂外患の世の中における人材育成が進められた。この教育理念を起草したとされているのが藤田東湖である。この藤田東湖などが作り上げた水戸学の影響を受け、大河ドラマでは、尊王攘夷の志士たちが活発な動きを見せている。渋沢栄一も他の志士たちと同様に影響を受け、安穏とした生活への違和感を抱いていた。
私の心の中にも、このままではいけないという思いがうごめいている。ただ、私が去年も今年もラオスに留まっていたとしても、2年前の4月のような刺激を受けつつ、志士たちのように活発な動きができるかというとそうはいかなかっただろう。
その要因は言うまでもなく「新型コロナウイルス感染症」である。ただ去年の4月と今年の4月を比べてみると、「新型コロナウイルス感染症」という同じ要因で「水かけ祭り」が禁止されているものの、その実情は全く異なっていたのである。
その実情の違いは、在ラオス日本国大使館のメールが如実に示していた。多分、私が何らかの手続きを怠けているせいだとは思うが、ラオスを離れた今でも大使館から私宛にメールが来るのである。ただ、そのおかげで引き続き、ラオスの様子が分かるので、そのままにしている。
去年の4月頃の大使館から届くメールは次のようなものであった。
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★新型コロナウイルス(首都ビエンチャン内の外出禁止の実施強化)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2020/04/09 (木) 18:06
1 3月29日付け首相令により,4月1日から19日までの間,食材や必需品の買い物,通院及び一部通勤を除く外出が禁止されています。
2 本日(9日)首都ビエンチャンのCOVID-19対策特別委員会が,同首都内の関係行政機関,警察及び軍に対し,上記首相令の実施を強化するため,以下の内容を含む通知を発出しました。
○ 上記首相令の関係規定に基づき,住民が住居又は居所を離れることを禁止する。ただし,必要品の購入に限り,1日1世帯につき1人又は2人の外出を許可する。
○ 村委員会及び村警察署が世帯ごとに書類を作成し,証明書を発行する(ただし,用務及び農作業での10人までの外出を除く。)。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例:4月13日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2020/04/13 (月) 15:30
○4月13日までにラオス国内で確認された新型コロナウイルス(COVID-19)感染者は,計19人になりました。
○引き続き感染予防に万全を期してください。
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そして今年の4月に届いたメールは次のようなものであった。
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★新型コロナウイルス(インターネットカフェ「189」を訪問された方は大使館までご連絡願います。)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/12 (月) 18:00
【ポイント】
○4月12日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、症例50のタイ国籍の男性が勤務していた首都ビエンチャンのChanthabouli郡Phonthoung村のインターネットカフェ「189」において、同男性と接触した可能性がある方は検査を受けるよう勧めています。
男性と接触した可能性のある方は、大使館領事班までご連絡願います。
★ピーマイ期間を含む4月末までの新型コロナウイルス感染症対策措置の強化
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/13 (火) 9:06
【ポイント】
〇4月12日、COVID-19対策特別委員会は、標記追加勧告を発出しました。確定症例番号50の濃厚接触者の検体を採取し陰性が確認できたものの、現時点で確認されている以上の濃厚接触者が存在する可能性があるため追跡調査をするとのことです。
○4月中の娯楽施設、カラオケ店及び居酒屋の一時休業、ソーシャルディスタンスを確保できない宴会等及びピーマイ期間中の不要な外出を控えるよう求めています。
★首都ビエンチャンの往来封鎖(ロックダウン)未実施
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/14 (水) 11:16
【ポイント】
〇4月13日、ラオス首相府は、標記に関する通知を発出し、感染者症例50の行動歴確認,COVID-19対策特別委員会によるリスク調査及び評価の結果,現在の状況は制御できる段階にあり,社会への影響に鑑みて,首都ビエンチャンの往来封鎖は未だ行わないとしています。
〇今後、更に関連の勧告等が発出される可能性がありますので,引き続きラオス当局の発表に十分ご注意ください。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月14日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/14 (水) 11:35
【ポイント】
○4月14日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、ラオス国籍者1名のCOVID-19の感染が確認された旨発表しました。これで感染者数は計53名になりました。
○以下2のとおり引き続き感染予防に万全を期してください。
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去年の4月中頃の感染者数は20人くらいで、今年の4月中頃になると53人になっているが、これは累積の数であり、去年の4月までの数を引いてみると、30名くらいになるため、感染者数が急激に増えているとは言えないだろう。また、どちらもピーマイ・ラオにおける人の密集を回避するため対策強化を行っているが、「ロックダウン」を名言はしていない。しかし、ここから状況は一変する。大使館のメールの配信ペースは今年の4月中頃から上がってくるのである。
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★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月17日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/17 (土) 14:10
【ポイント】
○4月17日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、ラオス国籍者4名のCOVID-19の感染が確認された旨発表しました。これで感染者数は計58名になりました。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月20日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/20 (火) 16:10
【ポイント】
○4月20日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、ラオス国籍者2名のCOVID-19の感染が確認された旨発表しました。これで感染者数は計60名になりました。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月21日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/21 (水) 14:40
【ポイント】
○4月21日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、首都ビエンチャンで26名、チャンパサック県で2名、計28名(全員ラオス国籍者)のCOVID-19の感染が確認された旨発表しました。これで感染者数は計88名になりました。
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2021年4月20日の累積感染者数「60名」から、翌日21日の「88名」は、これまでにない増加数であった。これを受けて、ラオス政府の動きは早かった。ラオス政府はこの日のうちに「首都ビエンチャンのロックダウン」を発令したのである。
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★首都ビエンチャンの往来封鎖(ロックダウン)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/21 (水) 20:40
【ポイント】
〇4月21日、COVID-19感染者の増大を受け、標記に関する首相令が発出され、4月22日6時から5月5日24時までの間、外国人を含む出勤制限及び不要な外出の禁止、一部遊興施設等の閉鎖、首都ビエンチャンと他県の間の移動禁止が求められています。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月22日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/22 (木) 17:30
【ポイント】
○4月22日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、首都ビエンチャンで4名、サワンナケート県1名、ボケオ県1名の計6名(全員ラオス国籍者)のCOVID-19の感染が確認された旨発表しました。これで感染者数は計94名になりました。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月23日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/23 (金) 18:30
【ポイント】
○4月23日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、首都ビエンチャン60名、チャンパサック県2名、ボケオ県2名、ビエンチャン県1名の計65名のCOVID-19感染者が確認された旨発表しました。これで感染者数は計159名になりました。
○ラオス政府は首相府令第15号を遵守し、不要不急の外出を避けるなど対策強化に努めること、感染力が強い英国型の変異株の脅威を正しく理解し、警戒するよう呼びかけています。
〇現在、首都ビエンチャン及び以下の13県で外出制限が発令されており、ラオス航空によると国内便は5月5日まで運休予定とのことです。
ポンサリー県、ボケオ県、ウドムサイ県、フアパン県、シェンクワン県、サイニャブリー県、サイソンブン県、ビエンチャン県、ボリカムサイ県、サワンナケート県、チャンパサック県、セコン県、アッタプー県
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月24日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/24 (土) 17:05
【ポイント】
○4月24日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、首都ビエンチャン84名、チャンパサック県2名、ボケオ県2名の計88名のCOVID-19感染者が確認された旨発表しました。これで感染者数は計247名になりました。
○ラオス政府は、感染者が訪れた場所が多数に及ぶため、感染者の行動履歴を聴取し、濃厚接触者を追跡中。また、検査結果が陰性であっても濃厚接触者に対して14日間の隔離措置を実施しており、濃厚接触の可能性がある場合、速やかに検査を受けるよう呼びかけています。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月25日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/25 (日) 16:50
【ポイント】
○4月25日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、首都ビエンチャン64名、ボケオ県1名、ルアンナムター県4名、サワンナケート県2名、サラワン県5名の計76名のCOVID-19感染者が確認された旨発表しました。これで感染者数は計323名になりました。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月26日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/26 (月) 17:55
○4月26日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、チャンパサック県54名、首都ビエンチャン31名、サワンナケート県13名、ボケーオ県7名、ウドムサイ県2名、ポンサリー県2名、セコン県1名、ビエンチャン県1名、ルアンパバーン県1名、サイニャブリー県1名の計113名のCOVID-19感染者が確認された旨発表しました。これで感染者数は計436名になりました。
★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例 4月27日)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>2021/04/27 (火) 17:05
【ポイント】
○4月27日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、首都ビエンチャン59名、チャンパサック県8名、ビエンチャン県4名、サワンナケート県1名、ボケオ県1名、ルアンパバーン県1、シェンクワン県1名の計75名のCOVID-19感染者が確認された旨発表しました。これで感染者数は計511名になりました。
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このようにラオス政府は感染層対策の強化に加え、首都のロックダウンを発令したものの、4月17日の「58名」から、4月17日の10日間で一気に「511名」に感染者数が膨れ上がってしまったのである。(確かに累積の感染者数は増加しているが、新規陽性者数に注目してみると、そこまで急激かというと判断が分かれるところである)
去年の4月のラオスは国内での感染拡大を防ぐための措置を講じていたが、国境封鎖や航空機の運航停止などによって、むしろ外部からの流入を抑えることに重点が置かれていた。しかし今年の4月は、流入を抑えることと、国内での感染拡大を抑えることの両方に全力を注がねばならない状況となってしまい、それは「内憂外患」と表現できるだろう。
日本のここ1年半くらいの状況は2020年の4月10日の新規陽性者数が「640」で、2021年の4月10日のそれは「3742」であった。その後、波を繰り返しながら、8月20日には「25975」を記録した。現在は、かなり落ち着きを見せており、11月20日の新規陽性者数は「106」まで下がっている。
一方で、先ほど届いたラオスの状況は以下の通りである。
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★新型コロナウイルス(ラオス国内の確定症例11月21日及び127~132人目の死亡者の確認)
在ラオス日本国大使館 <lao@mailmz.emb-japan.go.jp>
2021/11/21 (日) 14:25
【ポイント】
〇11月21日、ラオスCOVID19対策特別委員会は、5,259名の検査を行い、首都ビエンチャン361名(市中感染359名、輸入症例2名)、ルアンパバーン県123名(市中感染)、ポンサリー県86名(市中感染)、チャンパサック県81名(市中感染)、ボケオ県52名(市中感染)、サイニャブリー県49名(市中感染)、サワンナケート県34名(市中感染29名、輸入症例5名)、ビエンチャン県31名(市中感染)、ウドムサイ県26名(市中感染)、サラワン県23名(市中感染)、ルアンナムター県19名(市中感染)、ボリカムサイ県11名(市中感染)、カムワン県8名(市中感染)、セコン県7名(市中感染)、フアパン県5名(市中感染2名、輸入症例3名)、アッタプー県3名(市中感染)、シェンクワン県2名(市中感染)の計921名の新規感染者が確認された旨発表しました。これで感染者数は計62,160名になりました。
〇ラオス国内において127~132人目の死亡者が確認されました(首都ビエンチャン3名、ビエンチャン県1名、ボリカムサイ県1名、ルアンパバーン県1名)
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今年の4月に比べると、新規陽性者数もかなり増えてしまっている。
このような状況において、かつての攘夷思想のごとく、在留外国人が排除されることがないことを願うばかりである。
#哲学 #藤田東湖 #青天を衝け #内憂外患 #水戸学
#ラオス #ピーマイ・ラオ
(以下の添付画像は2019年のピーマイ・ラオの時の様子である。寺院に行くと、僧侶がミサンガのような紐「バーシー(紐そのものというより、健康や幸運を祈る儀式全体の名称のようだが)」をつけてくれるので、自転車でたくさんの寺院を回り、徐々にバーシーが増えていった。)
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