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恐怖の合コン!というおはなし

どうも!こんばんにちおはすみなさい。これは全ての挨拶を一回で済ます魔法の言葉です。大型免許のテストに出るので国民は覚えておくと良いと思います。

今日は合コンの話。それも「恐怖」という冠のついた合コンのお話をします。
下の毛が生え揃い、そろそろ白髪葱も散見されるようになった僕、いや、皆さんであれば人生一度は合コンの経験はあると思います(無かったら僕を張っ倒しに来て下さい)。
僕は基本的に孤高なハンター気質なので合コンなんてチャラい会には積極的に参加することはありませんでした。嘘です。自分から飛び込むのが怖いので気が合いそうな人を下卑た笑顔でニヤニヤと探し続ける徘徊型変態プレーリードッグ気質です。割とすぐに穴に引っ込みます。

そんな僕ですが、ある日職場の先輩から
「どうしても!」
とお願いされて合コンに参加する事になりました。
ロボットコンテストではなく、正式な合同コンパです。
どうしてもって言うなら仕方ないでごんすなぁ、こういうのは本当は好きではないでごわすけどぉ、そんなに言うなら参加してやらなくもないって感じでごっつぁんですわ〜!と言いながら、一時間掛けて服や髪をセットし、下心を脇に挟み、鼻息荒く会場という名の土間土間(大衆居酒屋)に向かいました。

「待ってたよ〜、いや〜助かるわ」
「仕方なくっていうかー、別にっていうかー、興味ないっていうかー、で、お相手はどんな人達ですの?」
「ほら、レジの前にいるだろ?あの子達だよ」
「ほう、どれどれ、スカウター!オン!」

ボーーーーーーン!!

待ち構えていた彼女達を見るなり、僕のスカウターは爆発しました。
彼女達は僕の年齢を遥かに越えていたのです。

「はい、上、上ー、もうちょい上。新人どけよテメェ!死にてえのか!はい、平均、15上でーす!」
 
何の作業かは不明ですが、そんな現場作業員の声が聞こえて来そうでした。
さらに気まずい事に、どう見ても高校の時の国語の先生がその中にいらっしゃったのです。
あ、先生!と言い掛けたその時、先生は僕に向かって

「余計なこと言う、オマエ、死ぬ」

という微笑を浮かべたのです。

気が気じゃないまま4on4の合コンがスタートし、先輩が一生懸命盛り上げようと開始早々トークトークトーク!を炸裂させました。その勢いの風圧が凄過ぎて話の中身はあっという間に吹っ飛んで行きました。
要は合コンあるあるだと思いますが、最近のコンドームより薄い内容の話の連続だったんです。

とにかく僕は国語の先生が気になって気になって気が気じゃなかったのです。
しかし、年上の女性というのは僕らにとても寛容で、どんなつまらない話でも大袈裟に笑ったりしてくれました。
靴紐の長さが左右で違うんですよ。なんて話でもきっと笑ってもらえてた気がします。
あ、変な煙吸ってた訳じゃないです。

お酒も入り暑くなったのか、先生はジャケットを脱ぎ、Tシャツ一枚になりました。
黒シャツにピンクで「my happy comming!」的なプリントがされていて、僕はお酒を噴き出しそうになりました。

気が付くと僕は女性に両脇を挟まれていました。瞬間移動でしょうか。右に心やさしき泥モグラのような風貌の女性、左にノコギリが人間になったらこんな感じかしら、という女性に挟まれました。

空いた瞬間にお酒を注がれたり、僕の代わりにメニューを開いてもらったり、まめに灰皿や小皿を交換してもらったりと至れり尽くせりな状態になりました。まるで無認可の竜宮城に訪れた気分でした。
しかし、そこはやはり無認可の竜宮城。時が経つのが余りにも遅く、土間土間だけ光速で宇宙へ飛び立って時空が歪んでしまったのかと思いました。

そんな僕を察したのか、泥モグラさんが真顔で言いました。 

「私、明日は何も予定入れてないし。 ね!」

何と圧の強い「ね!」なのでしょうか。テーブルの上の物が全て飛んで行きそうな「ね!」でした。
どう言う意味かは想像したくないので僕は聞かないふりをして話題を変えました。

「そういえば皆さん、どんなお仕事されてるんですか?」
「私は介護、隣のミッキーは保母さんなのよ。でね、あの子はねぇ、なんと学校の先生やってるんだよー!」
「アア、ソソソソ、ソウデスカ!ソレハナントモ、リッパダナア!」

僕は白目になって鼻から煙を出しながら、意識を正常に保とうと必死に堪えました。
もうその後、どんな話をしたかとか全然覚えてません。
合コンが終わり、やっと帰れると男連中で囁きあっていると先生が先輩にしなだれ掛かって何かを呟いていました。

二次会で、待ってるーにょ!待ってるーにょ!待ってるーにょ!

という事でした。
僕らは解放を阻止され、カラオケ二次会を発動されたのです。
時間はもう21時過ぎ。田舎も田舎なので二次会なんて行こうものなら、それは「帰れなくなる」を意味していました。
彼女達はまだかまだかとエレベーターの前に立ちはだかり、微動だにしません。
カラオケ店は土間土間の上の階にありました。

僕は一足先に逃げようと思いエレベーターの前へ立つと、ノコギリちゃんが僕に微笑みました。余りにも迫力があり、裂傷を負いそうな笑みでした。

「ドコ へ イクノ カナ!?」
「は、はい。あの、水を買いに下のコンビニへ」
「ダイジョーブダイジョーブ! ワタシ ガ カワリニ カッテキテ アゲルカラ!!!キミ ハ ココニ イテネ!!!」

なんということでしょう!リフォーム中に匠が死にました!!

そんな絶望の声が天から降って来て、僕は意識を失い掛けました。
男連中でまごまごしていると、先生は完全にやる気満々な表情で僕の先輩の腕に教鞭を奮っている腕を絡め始めました。僕の作文用紙に

「職員室に来なさい」

と書いた、あの腕です。
エレベーターのドアが開きました。女性陣が先に乗り込みます。うふふ、と楽しげな声が漏れて来ています。
これはもうダメだ、ゲームセットだ。

そう思った矢先、突然先輩がエレベーターの「閉」を押し、キレました。

「うおー!」

次に先輩は「非常階段」と書かれた魔法の扉を押し開け、脱却ルートを見事に確保しました。
男共はその後に続きました。うぉー!攻めるのは今しかない!行くぞおおおおおおおお!(実際は逃げてる)と言う気持ちで、階段を早足で下りました。

外へと続く非常ドアのありがたい重みが、まだこの手の中に残っております。
あぁ……これが、外の世界……。ドブ臭い地方都市の匂いでさえ、新鮮に感じられました。
BGMに大橋トリオの楽曲が流れて来そうなほど、新鮮な空気でした。

僕らはビルの前で脱出成功の喜びを分かち合いました。
皆で先輩を褒め称えていると、ビルのエレベーターが開きました。

鬼の形相と化した女性連中が全員腕組をした状態で出て参りました。
ボスを倒したと思ったら、なんと第二形態になって登場したのです。

僕らは固まったまま動けなくなり、どうしようと考えながら駅へとダッシュしました。

背後からはとんでもない罵声が飛んで来て、頭にいっぱい刺さりました。それで僕はちょっと頭がおかしくなったのかもしれません。

こうして僕らの脱出(コマンド→逃げる)は成功した訳ですが、あんな事になってしまうなら最初から相手の情報を確認すべきだったなぁと反省しております。
相手の皆さんにも、恥を忍んで耐えていた先生にも申し訳無かったと思います。
結果的に恥の上塗りをさせてしまったのですから。

なので、やっぱ双方の合意がある状態で合コンってのはやった方がよろしいんじゃないかと、今はそう思ってます。
コロナが開けたら皆さんどうか、楽しい時間の合コンをどうかお過ごし下さいね。


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