シリーズ「駅」/2007年発表より
ペンステーション。早朝。粉雪。
列車を待つ間、僕達は出来る限りの話をした。僕が辿る旅のルート。卒業後の進路。彼女は仕事を辞めて、ダンス留学に来ていた。
昨夜、僕達は出会った。深夜のドミトリー。彼女のチェックイン。自己紹介をし、翌朝、南へ発つ事を告げると、彼女は見送りを申し出た。驚きと嬉しさと、そして寂しくなるだろうと思った。
帰国後、葉書が届いた。Coke Date。談笑する男女の絵葉書だった。
あれから10年になる。僕はネクタイを外し、彼女も軌道を変えた。僕達は何度か会い、夢のある話をしたが、やがて緒が掴めなくなり、会う事も無くなった。
ひとつの旅が終わったんだと、僕は思った。