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今と未来の間には 怪物がいる
立ち止まってもいいよ、
でも
その「立ち止まり」は回避?
その「立ち止まり」は縮小?
その「立ち止まり」は後退?
それとも
「 THE END ? 」
立ち止まってもいい、
よじ登る前提なら
いつの時代も、
今と未来の間には、怪物がいるんだ。
<昼>
2020オリンピック、TOKYOの夏は暑い。
この蒸し暑さは、意識を後退させる。
わたしは
豊洲行き「ゆりかもめ」の中へ逃げ込んだ。
逃げ込んだやつに、目的地なんて無い。
ただ暑さを回避しただけだ。
頭の中では、
蒸されて膨張した脳みそが、
急に冷蔵庫の中に入れられて、
縮小しはじめている。
体内に溜まっていた熱は、
突然冷やされ、
逃げ場を求め体内をよじ登り、
頭から蒸気となって窓に貼り付き、
外に見える風景を曇らせる。
「ゆりかもめ」が青海駅に近づき、
窓に張り付いていた湿気が引いてゆくと、
突然前方に
「怪物」が現れた。
そのまま「やり過ごして」
豊洲まで行っても良かった。
無かったことにして、
今日を
THE END することもできた。
でも怪物は、
わたしを、
ふたたび猛暑の中にひきづりだした。
<夕方>
わたしは怪物の前にいた。
ビル4階分の垂直面、
岩の形をした手掛かりが、
ポツンポツンと点在してはいるけれど、
一体どうやって登るんだ?
手前に反りながらこちらを見下ろす、
視線
凸凹の肌の怪物の吐く、
息、匂い。
怪物の正体は、
今夜、選ばれた人類が登るべき、
スポーツクライミングの壁だった。
<夜>
スポーツクライミング決勝。
TV画面上部に表示されるデジタルな数字、
経過時間を刻んでゆく秒数、
アナウンサーの説明、
壁の前に立ち止まっていた女子選手が、
怪物に挑み始めた。
速い。
登れ・・・、
湿度も匂いも気にするな!
もっともらしい一般論で、
気持ちを縮小させるな!
自分の手で、
その凸凹の肌を掴め!
今と未来の間にはいつも怪物がいて、
こちらを見下ろして、
立ち止まらせようとするんだ。
立ち止まってもいい、よじ登る前提なら
後退するなよ人類、よじ登れ!
未来は怪物の先にある。
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