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幻想夜話

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記事一覧

幻想座

「さあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。今宵もあなたをふしぎな世界へといざなう『幻想座…

takeoka
2年前
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宝石の悪魔 #4

     四.  あくる日の夜、オリヴィアはアジルデ王の部屋に呼び出された。なにか嫌な予…

takeoka
3年前
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宝石の悪魔 #3

     三 .  一ヵ月後、とあるニュースが世間をさわがせていた。  それは、グラント侯…

takeoka
3年前

宝石の悪魔 #2

    二 .  その後も、王は変わらず貪欲に宝石を求めた。世界各国から宝石商を集め、あら…

takeoka
3年前
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宝石の悪魔 #1

     一.  これは、はるか遠い辺境の地、シッカルトという国でのできごと。  この国を…

takeoka
3年前
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星屑の街

 その日は不思議なほど星たちがさわがしく瞬いていて、夜空は今にも落ちてきそうなぐらい近く…

takeoka
5年前
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暗い夜がさわぐころ

 今となっては、このような言い草はたんなる物笑いの種にしかならぬのだろうが、私とは旧知の仲で、親愛なる巡査長はたしかにそのときこう言ったのだった。 「失敗だった。張りめぐらせた網がもうすこしおおきかったならば、結果はちがったものになったかもしれないが‥‥‥」  私も至極同意である。  順序がでたらめになってしまったが、そもそもなぜこんなへんぴな町において、このような騒ぎを起こすはめになってしまったのか、まずはそこからはじめなければなるまい。  今宵は年に一度の「暗夜祭」という

思い出配達人

 これからいたしますのは、わたしが犯してしまったとある罪科のおはなしです。  もっとも、…

takeoka
5年前
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月の人 #2

 翌日、村の外から聞こえてくる騒がしい物音に目を覚ました。ベッドから起き上がると、ちょう…

takeoka
5年前
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月の人 #1

 秋の季節も終盤にさしかかり、まもなく冬の足音がきこえてこようかというある肌寒い夜更け時…

takeoka
5年前
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顔がない女 #3

 ふたたび意識を取り戻したとき、私は木立に囲まれた地面の上に倒れこんでいた。水の中に引き…

takeoka
5年前
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顔がない女 #2

 長い夜が明け、私と女は薄暗い林の中にいた。  朝、女は目が覚めるなり、なんの身支度も食…

takeoka
5年前
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顔がない女 #1

 冷たく冴えた月が皓々と地上を照らし出しているある晩のこと。  一人の女が家の門戸を叩い…

takeoka
5年前
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クリスマスのものがたり

 その年のクリスマスはとても寒い日がつづき、今日もみぞれまじりの粉雪がしんしんと降りそそぎ、街の中を凍てつく冷気で閉じこめていました。それでも、往来を行き交う人々の表情には、さみしさや憂いなどはいっさい見られず、みな晴れやかな顔をして暖かな衣服で身を包み、それぞれが大事な人の手を取って通り過ぎてゆく姿が数多く見られました。それら群衆のなかを縫うようにして、ひとりの少女が歩いてゆきます。彼女の名前はカミラといいました。  カミラの両手には、紙袋に入った荷物が持ちきれないほど抱え