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排撃の巨人(精神科医療編)

先日図書館で岩波書店から出ている都立松沢病院名誉院長斎藤正彦先生の著書「都立松沢病院の挑戦」を借りてきた。一回読了しているが、再度読んで確認し直したい。

いちおうこの本で、日本の精神科医療史がほぼ分かるのと同時に、現在の精神医療のあり方と、齋藤先生の予想による今後の精神科医療のあり方が提示されてこの本は締めくくられる。内容は読んでいただくとして、自分の書きたいのは齋藤先生の書いたあとがきを受けての部分だ。

まあ、酷すぎるんだよね、日本の精神科医療史も。自分の入院した30年前の公立病院も自分の印象ではいつ出られるかも知らされない地獄の黙示録的な様相に感じられたし。いや、日本の精神科医療はある意味のイデオロギーに侵されていると言っていい。患者を異端視した隔離収容政策にそれが現れていて、斎藤先生もその社会が患者を異端視して受け入れないという部分にフォーカスをして本は締めくくられている。本当に精神科医は医師と言えるのかね。

でもねー、と患者の僕は思うわけだよ。齋藤先生の本のデータだとかなり入院率は下がってきているわけだし、世間で生活や活動、もしくは仕事をしている患者も多いわけだよ、服薬や診察しながら。

そこで自分にレッテルを貼って、社会に理解してもらいたいという以前の家族会の親たちのような態度でいつまでもいていいのかと僕は思う。

やっぱり病気を持っているし、心の病は神経性の疾患でもあるから治りにくいのは当然だとしても、できる分のことはやろうぜというかやるべきだろうというのが僕の提案というか持論。

著者の精神科医の斎藤先生は社会が患者というか精神障害者を包括的に受け入れるべきだと仰るのだが、先生は世間はそんなに綺麗にできているわけではないということをご存じない部分があるようだ。

人間いろいろ世間もいろいろ、人格にも頭の良し悪しにもいろいろあって、そんなにきれいで清潔なマジョリティとしての世の中じゃないんだよな実際は。これは僕の実感。逆に患者の相当数が真面目に生きようとして世間にはじかれている印象を持つ。

どんな遺伝形質も行動遺伝学的にはベルカーブ上に並ぶから、世間のいろんな能力もベルカーブ上に並ぶように、当然患者の能力もベルカーブ上に並ぶといえる。となると性格の部分も含めて、患者をそんなに悪しざまに世間と比べて障害者呼ばわりする意味あるのかね?とは思う。当然、脳の仕組み自体が解明している途中だし、統合失調症もようやく様々な要素が絡み合った統合失調症群というか様相であることが分かり始めた段階だ。

提案したいのは、患者自身の、今これが考えられてこれが出来るという実感で、病気を回復させながら能力を伸ばすと同時に、まずはQOL(生活の質)を高めてから徐々に社会へという順番で進んでいくのはどうかねということなのだ。

こっちは不遜だから、病院職員についてもそんなに優れた人たちだとは思っていないし、世間の人間も彼らと五十歩百歩だし、何なら病院職員のほうが上か。まあ、世間もいろんな話を聞くよ。仕事を3日でやめたりさ。家族会のおばちゃんが自分の息子と勘違いして僕にドヤ顔して来た経験も有ったりするし。

そんなことより、病気を抱えながらでもいいから患者も出来る努力をしてさー(なるべく)、知力や能力を高めて自分にできる部分から社会参画していったらどうかね?と思うわけだよ。社会参画するのは本当に難しい状況だとは思うから、読書するなり旅をするなりして見聞を広め社会の相場を知っておくというのが身を守り、自分に対する偏見を取り除く端緒になると思ったりする。

最近読んだ資料によると、デンマーク国民の8割が生涯の間に精神疾患にかかるという統計調査が出ていて、たぶん日本もデンマークもそれほど社会環境は変わらないと思うから、実際は日本でも認知症も含めて8割の人が実際は精神疾患を患う時期があるという推論が成り立つ。この統計が実証されれば、かなり精神疾患の定義が変わってくると思うし、障害者という定義も変わり得るとすら思っている。

斎藤正彦先生の書いているように社会の理解を待っているうちに確実に人生は終わる。頭は付いているんだから、仕事として活かせなくても、なんとか自分を活かす道を模索するという方向性を提案しておきたい。文庫本一冊でも読んで知恵つけようよー。社会の人間は本なんて読んでないからさ。

それから、斎藤正彦先生とかの精神科医特有の誤謬なのだが、社会の人間も精神科医すらも心の病にかからないような頑迷な思い込みは止した方がいいということだ。患者は社会の中で心を病み、再び社会に帰っていく。普通の医療で当然と言える医療を精神科医療でも行ってもらいたいという提言でこの文を終えたい。下に斎藤正彦先生の岩波書店から出ている本を貼っておくので、興味があったら読んでくださいね。

社会を怖がっていても何にもならないから、患者の方から変わっていこうという提案でした。


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