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我が家に必要なスペース


建築工事費の高騰

昨今の建築工事費の高騰は凄まじいものがあります。この状況を見て、家を建てようと思っていたけれどもう少し待ってみよう。そう考えているご家庭もあるかもしれません。2年前にウッドショックが発生した時にも、建築業界では『今は建て時ではない』と言われていました。しかし、輸入木材の価格が落ち着いてきても、他の資材や運賃、燃料、工賃全ての価格が値上がり続けているのが現状です。今後も高止まりはしても下がるというのは見込めないと思います。

これからの予算の考え方

最初、40坪ほどの家を3500万円で建てたいと考えていた場合、建築費が急騰したからといって、予算に1000万円追加するのは難しいと感じるでしょう。その場合、新築計画を中古住宅に切り替えるなど、何らかの妥協が必要になるかもしれません。しかし、住宅は車のように簡単に交換できるものではなく、高額な資産です。できる限り妥協せず、新築の選択が賢明かもしれません。

住宅の必要面積

では、どこを妥協するのか?妥協というと語弊がありますが、考えている広さが本当に必要かどうかを検討することが大切です。住宅を設計する際、クライアントが要望する各部屋の広さや数については疑問を持っています。
リビングは12畳欲しい、子供部屋は6畳ずつ、寝室は8畳、お風呂は1.25坪(いきなり坪w)システムキッチンは2400(今度はmm)書斎はリモートワークの為に6畳、ファミリークローゼットも6畳…等々、優に40坪を越えそうな要望。

でも、それは一般的な建売住宅のキャッチコピーみたいなものであまり意味のない広さだと思います。
寝室は寝る時だけ使うのであれば8畳もいらないですし、寧ろある程度コンパクトな方が落ち着いて就寝できます。単純な数字上の広さだけではなく、空間の繋がり方や使い方でもずいぶん印象が変わります。

天井も何となく高い方が良いと感じてるのではないでしょうか。「普通の家は2.4mですがうちの規格は2.6mなので同じ面積でも広く感じますよー」という営業トークをよく耳にするせいかもしれません。実際は低くてもいい所は低く抑えた方が良い空間になります。掃除等のメンテナンスもしやすいですし、ランニングコストを低く抑えるのに役立ちます。

コンパクトな住宅の実例

例えば我が家の話ですが、住宅部分が25坪、アトリエで2坪、計27坪なので一般的な住宅より小さいと思います。リビングも6畳位です。でも吹抜で天井高が6mあるのと中庭へと視線が続いているので狭さは感じません。水回りの天井高は2.15mと低く、2階までの高さが2.5mしかないので階段の段数も少ないです。建物全体の容積が小さいので、北海道という寒冷地でも薪ストーブひとつで家中が暖まり、暖房機を使うのは春や秋の朝晩だけで済んでいます。

リビングのベンチから中庭へとつながる縁側

結論


本当の意味でのコンパクトな住宅、それは必要な部分をきちんと吟味したうえで無駄を削ぎ落した、家族にちょうどいい住宅。隅々までメンテナンスが出来て持て余さない住宅。ただ単に狭いのではなく、豊かに暮らせる手法はいくらでもあります。
こういう時代だからこそ基本設計に時間をかけるべきだと感じます。そして、それを徹底的に出来るのは設計事務所しかありません。一生に一度の大きな買い物である住宅、安かろう悪かろうにならない為に、基本設計を大切に、単なる”間取図”ではないのです。

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