おとなになるってどんなこと?(著:吉本ばなな) 読書感想文
おとなになるってどんなこと?(著:吉本ばなな、ちくまプリマー新書、2015)
この抜粋した箇所からは映画『シェルタリング・スカイ』の中でポール・ボウルズが言う台詞を連想しました。
「人は自分の死を予知できず、人生を尽きぬ泉だと思う、だがすべて物事は数回起こるか起こらないか。自分の人生を左右したと思えるほど、大切な子供の頃の思い出も、あと何回心に浮かべるか4〜5回思い出すのがせいぜいだ。あと何回、満月をながめるか、せいぜい20回。だが人は無限の機会があると思う。」
子ども時代の感覚、体験って日々生きて歳をとるごとにどんどん大切なものになっていく気がします。忘れないようにしないといけません。
あー。自分もそういう時期何度かありました。小中高と学生時代はいつもそうでした。結局20代もほとんどそんな毎日。30代になってからようやく辛抱の毎日はちょっとずつだけど減ってきているかなあ。
子どもの自分をないことにしない。認めて慰めて背負って生きていく。簡単そうで結構難しいことかもしれない。でも自分の中にもう一人の自分を抱えるというのは結局は自分の安定につながっていくことなんでしょう。
常に勉強して探究することが人生を生きることだとばななさんは言います。
退屈しのぎのものはたくさんあるし、わかりやすいものも。すぐわかっちゃあまり面白くないと思うんです。少なくとも長くは楽しめない。
よくわからないけれどなにかどこか引っかかるものがあって、自分は何がわからなかったのかと探究していけばいくほど面白くなっていくし、その方が長く楽しめる、人生をもっと楽しめると思います。
自分の感覚を大切にしてほしいと、ばななさんは言います。
「違うこと」をしないこと(著:吉本ばなな、KADOKAWA、2018)の読書感想文でも書きましたが、
違和感を信用する。
常識を疑う。
直感を大切にする。
自分に正直に生きる。
流れに対して自然でいる。
というのが重要なんだとつくづく思います。
それが「普通」に生きることにつながっていくのだと思います。
死者は自分の中に生き続ける。上の方から見られるのではなく。と、ばななさんは言います。
肉親はもちろん友人やそうでなくても一度でも会ったことがある人はこの世からいなくなっても自分の中に生き続けている感覚がありますね。いや会ったことがなくても何かを通じて(それが手紙だったり作品だったり本だったり送り手と受け手としての)交流・対話があればその送り手ものこされた人たちの中に生き続けるんでしょうね。
これは今とても痛切にわかってきていることでもあります。身の回りに農業の道を極めていっている方がいたりしてすごく頼りになります。僕も何かを極められる人になりたいです。
ばななさんはエッセイでも小説でも本来当たり前のことをわかりやすく言語化できるからすごいと思う。
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