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詩372 短詩輯20

6 - 25 大都会は情報過多で目まぐるしい。目も耳も鼻も疲れるから頭も疲れる。というので、身体の所々が、次々と疲れてゆく訳だ ──── 便利さに満たされるばかりなのは相応の各種エネルギーを知らず識らずに換えているから、ということに気が付きたい

6 - 27 上質で高遠な芸術を目に給するに、都会へ出て人波に揉まれ、やすくない代金を払って味わうのが主流の鑑賞様式ならば、この実情は誠に認め難い ──── 変容の機会が、人類社会の平和構築のため、市井において掴まれなければなるまい。多能な諸氏を拝するに甘んじず、庶民のための芸術が心好く広まることを切に望まむ

6 - 28 火の車/福沢諭吉と/ゆき違い

6 - 29 人類が身をにして築き上げてきた創造物は、そのていを保たせるだけで、莫大な労力と費用と時間とを要する。新たな営為の形態を創造するべきときに今はあるのだから、我々には、もっと自然に身を任せ、物理への執着を手放すための知恵をあつめることが、殊に急がれる

6 - 30 時間の裕福たる次元は、如何なる様相であるか。定時出勤を果たすべく忙しない毎朝の一瞬の合間に私が見るは、紅茶を啜りながら眺めるクロード・モネ《モンジュロンの庭園の一郭》のような光景………既に現実としてココにあると思えば想うほど身に起こることになると信じる、それこそ第一

6 - 31 淡々とした平凡が良い。芸術にただ浸る毎日を送る恵みさえあれば………けれども、私はこれを以て、既に“何らか”を望んでいる

6 - 32 生けられたカーネーションの凛と彩る空間が八方へと拡大する。瞬くばかりのあいだ見詰めるのでさえ、鮮やかなブルーを我が意識のレースにまで染み入らせるのだから嘆称

6 - 33 上野の空の下、動物よりも檻から出てきた人間を観に来たばかりに思う。マスクを着けていない赤ん坊が抱っこされ、これの方がよほど可愛い。動物たちは“サービス”という感覚に遊ばれなどしないから、その点において実に幸福そうだ

6 - 34 頭と頭との隙間から見える動物は小さい ──── 一瞬いっしゅんチラとのぞく、その顔は、人間の永らく忘れる表情をしていた。キリンの肌は、絶えず、他種のウジャウジャとした目に見詰められている ──── ひび割れたような体のタイルは、汗を煮出して人間の額に味付けする

6 - 35 動物園を遥々訪れて、展示ガラスに反射した自分の顔を、まじまじ見詰める

6 - 36 俄かに怒りが込み上げるとき、あなたと私とで分かり合えない虚しさも沸々と

6 - 37 目の前に映された実像を感じるというインプットも立派な仕事で、作品という形で表すというアウトプットだけが仕事でない。芸術家という肩書きを好いて外せないのなら、双方が尊い仕事であることを心得ねばならない。新宿から大平野の先に沈む夕日を黙って見つつ、その美にふけって自身へ告諭

6 - 38 車内で蹌踉よろける幼児が屈託のない笑顔、何らの恥じらいもなく之を私たちに向けるとき、ここで持ち得るすべてを併せた私たちの関心が無条件に注がれる。そして恋人は、産に憧れた

6 - 39 記念デートした日の疲れは、自身の十分に生きたことを悟らせた ──── いつ死んでも善くなった。生き切った為に思い残しはない。この人生は一切の意義を果たした。「残りの人生、消化試合」という、ある人の言葉が心に残っている ──── 明日あしたは来なくて善い、楽しくない明日は来なくて善い!

6 - 40 好きな人も大切にできないぼくにも価値はあった。好きな人が拒んでこの関係を終わらせられないなら、或いは、ぼくの弱さに因って終えられないなら、この人生は今日を以て了されるだろう。楽しくない明日あしたは要らない。流れつづける時間は酷でしかない。この日を以て、やるべきことをすべて果たした、と心底思う

6 - 41 ぼくの恋人よ、ありがとう。出会ってくれてありがとう。このまま私は永遠の眠りに就く。二十八年間はこの上ないほど素晴らしく充実していた。この人生を選ぶことができて良かった。思い残しもなく生き切れて、実に、実に、良かった

6 - 42 人生の最期の最期で、これほど恋人に、今までの人生に比べたら信じられないくらい、愛される人生で、本当に良かった。唯一の心残りがあるとしたら、恋人=あなたの、私が死んで残され悲しむ顔が見られないこと。ぼくが死んで………そう、ぼくが死んで

6 - 43 生まれ変わるのでなく、新しく生まれる………そうして成し遂げられた神様の御旨みむねを、その目で見よ。新たな生誕地、ここ日本にほんは小田原で、順風を待ち望んだ時代は早、過去かこになって白梅の枝先まで愛が伝わる。焦りと悲しみは、なお私の代名詞ではあっても、頼るところはただブレずに一点

6 - 44  「どうしてどうして」の問掛けにも応えないあなたは、あるがままを受けてみよと試される

6 - 45 教会の中心に鎮座する御神体ながらも、私を内側から生き生きと働かせつづける………嗚呼ああ

6 - 46 苦悶の時を以て司るあなたこそ道理なき仕組しぐみであり働きである

6 - 47 誰も教えてくれぬ真実へ導くは、世界メシア教・教主様,イエス・キリスト,明主めいしゅさま,ああ、大神様

6 - 48 楽しき,辛き,すべて、恵みだと思えるか ──── 神の子として新しく生まれるために

6 - 49 独り寂しい想いが強いときほど、全身で働きつづけていることに気付けと待ち切れぬ神を、想います

6 - 50 神様のバカ野郎!と責め立てないではやっていられないと、夜の牛丼にブツブツ

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