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詩380 魔
美しく継がれる説話は凪で始まる
それでも
松かさは桜の魔術に爆ぜ
言葉尻がプツプツ
途切れてしまう
解れた内臓を孕む魔物に
急な用事を捌く余裕はない
──── 胸に刻まれた一節が
ひとたび
季節を越えると
耳に残らぬのに似て
「カワイイ」と持て囃されるアイコン等によって
簡略化された嗟嘆辞は加速する
社会の踝の内側:隠された声帯が不気味に震える場所
*** *** *** ***
星は有機的に
流れて
煌めいて
上下に浮き立つ恋心
「若いってイイね」と
宣う魔王は
冷やかしながらも
熟れたカップルに袖打ち合わす
断続的に舞う妖魔は義を渇望した ────
暮れてゆく
蒼い
丘の向こうで
人並みに険悪なムードを醸すカップル
その魔性はリトマス苔の嘘が蒸れて気触れるに等しく………
慣れたか慣らされたか
分からない
ドライヴをして
磁力の嵐で富士の裾野の荒ぶを見た
魔境の現世では
弱い者いじめが流行しているという
心を殺し
体を生かして
魔窟で〈生き甲斐〉を探る日々
闇のなかで
手を大きくして
腕を振り回しても
掴めるのは終に空のみに
なりにけり
*** *** *** ***
悪魔の条件とは
口の達者な奴等と
親しみ戯れようとする企みか試み
邪魔な肉を刻む急病人がまとう衣服には
ミオグロビン・アルファが滲んでゆく ────
暫く乾かぬ悲しみの形となって
鮮やかな桃の季節に
解れた唐草が焼き切られると
悠々自適な閻魔の色事
無意識の天魔が勝つはずはないと
不注意に漏らす人気取りは
社会の死角を拡げるばかりである
*** *** *** ***
さあ!
臥房で唸る者が夢魔に見舞われたかを
感じて悟る鋭さを養おうでないか
分別を無くすほど詩魔に操られた“弱い者”
彼らは一向に目立たない、強酸性の改革派
“弱い者”と“人気取り”とは常に相対する
が
両者
真っ赤なシミを
星の表に作らぬところに
大勢の顧みぬ共通点がある
*** *** *** ***
どうか………
伸びる魔手に縛られ悶える
我らを
救い給へ
ドライヴのハンドルを握るは
自分の手でなく
教官の手でなく
いっそ誰の手でもなく
「神」とされる手の働きに他ならない
人々の魂は睡魔に襲われ
天国での清らかな聖生活は
破壊された
礼節を尽くして「神」を信ずる者たちは
そのお方に背いた罪を忘れさせる内なる働きを
魔法と呼ぶ
一手に世を治める「神」と
一体である無数の魂
から
サラブレッドの放電する
カリスマ性を包含する
魔力が
一切の滞りなく
発出される
信仰に依って立つとき
恐れるべきものは
何もなく
信仰こそが
いつも
そこに
手の届くところで”生きている”────
まるでキラキラ輝くように
「問題は自身で手を伸ばすかどうか
ただ
それだけのことなのですね」
と
メシアの名に結び、謹んで奉ります ────
アーメン
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